五十八話
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死を覚悟したが、ぴたりと大嶽丸は動きを止めてその場に倒れた。
「危なかったな鈴。助けに来たぞ」
千鶴の式神は持っていた刀で大嶽丸の心臓を貫いていた。
「そんな……」
私は頭を抱えて膝から崩れ落ちてしまった。
倒れた大嶽丸は不敵に笑いだした。
それは笑いもするだろう。こうなっては、私は負けを認めるしかなくなってしまった。
「雨宮……千鶴……お前とは縁ができた」
そう言い残し、大嶽丸は息絶えて体は赤い炎になって消えていった。
想定すらしていなかったが最悪の事態だ。
「なんか不吉なこと言い残しやがったが……どういうことだ?」
千鶴にも大嶽丸の不死性について伝えるべきだったと後悔したが、もう手遅れだ。
私は千鶴の命を奪わないと、俊宗との再会が叶わなくなってしまったのだ。
それもこれも、私の楽観した甘さが引き起こしたものに違いない。
信太師匠が上空から結界に乗り降りてきていた。
「鈴鹿サン、見ていたよ。難しいだろう? 親しい顔をしたひとを殺すのは……。鈴鹿サンを守る結界は反応できたんだけど、雨宮サンの行動が想定外でね……大嶽丸を殺すことを許してしまった。大嶽丸は鈴鹿山で転生中といったところだね」
大嶽丸の転生が鈴鹿山で行われているというのは理解できる。鈴鹿山は大嶽丸にとっても縁の深い土地だからだ。
だけど、もう……。どうしたらいいのかわからない。
千鶴は偽物なんかではない。今を生きているただ一人の友人だ。
殺すことなど、到底できない。
「どういうことだ? 鈴……『殺すのことを許してしまった』ってあたしが大嶽丸を殺しちゃいけなかったみたいじゃないか……?」
「えぇ、そうです。千鶴には言っておくべきでした。大嶽丸は自分を殺した者と縁を結び、縁を結んだ者がいるかぎり死なない。だから、私が大嶽丸を殺すためには千鶴……あなたを殺さなくてはいけなくなってしまったの」
千鶴は正確に状況を理解して頭を抱えてしまった。
間違いなく大嶽丸は千鶴が助けに来ることまで読んでいたはずだ。
助けに来た千鶴に殺されることで、より勝利を盤石にすることを狙っていたのだろう。
「自分を殺した者と縁を結び生きながらえる疑似的な不死……。いや待てよ、それは鈴も同じことになるんじゃないのか? 鈴が大嶽丸を殺しても縁は結ばれるんじゃないか? 何か対策があったんじゃないのか?」
「そう対策がありました。私だけならこの世から一時的に姿を消す方法を用意してあったのです。でも、その対策は千鶴には使えません」
「どうしてだッ鈴! なんであたしには使えないんだ?」
千鶴は才能のある陰陽師だ。でも、肉体的な強度、生命力などは並の人よりわずかに上な程度。それでは私の対策は使えない。
信太師匠は千鶴をなだめると私のことを見た。
「鈴鹿サン。具体的な方法を聞いていなかった。どうやってキミはこの世から一時的に姿を消していたのかな?」




