五十六話
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私は神足通で爆破された寮部屋の前に転移した。
すでに何事か見に来た野次馬の陰陽師が散見されたが、その中から大竹が前に出た。
「私たちの因縁に他人を巻き込むなんて、あなたは最低ですね」
「そうか? 最善の戦術を選んだだけだが」
周囲の認識としては優等生の大竹と言葉を交わす、刀を振っていただけの劣等生の坂田という謎の敵対関係なのだろう。
ざわざわと騒ぎながらも周囲は私たちのことに興味があるようだ。
すると、がちゃがちゃと甲冑の音を立てながら式神の俊宗が到着した。
「何かと思えば、大竹の奴が……って、その姿は……鈴鹿なのか」
俊宗は私の十二単の姿に驚いた顔をしていて、頷いて目配せをするしかなかった。
そうだった。俊宗には黙って大竹との決着を決めてしまっていたのだった。それに自分の正体に気付いたことすらも伝えていなかった。
でも、そうするしかなかった。あの俊宗は偽物なのだから。
そして式神の俊宗がも刀を抜いた。
「ご自慢の鬼神でも呼び出したらどうですか?」
「神通力を手にして余程、気分が良いらしいな。その澄ました顔をすぐにでも曇らせてやりたいとずっと思っていたんだよッ」
大竹の鬼神が槍を持った姿で現れると、私は刀を抜き構えた。
はたしてどうやって、大竹を鈴鹿山に連れていくか……少し難しい状況だ。
「俊宗は様子を見てて、私が先に切り込む」
私が前に出ると鬼神は槍をこちらに向けて構えた。
構えた槍を踏みつけるように私は神足通で転移して間合いを詰めて鬼神の首に向かって横凪に刀を振るった。
鬼神は体を逸らして私の刀を避けながら筋肉の張りつめた強靭な足で蹴りを放った。
即座に神足通で鬼神の背後に転移するが、間髪入れずに槍が振るわれて数度の打ち合いのあと私は間合いの外へと神足通で離脱した。
「流石に棒振りをしていただけはあるか。見くびっていた。これならどうかな」
大竹は無数の小鬼を召喚した。その手にはそれぞれ短刀が握られていた。
「私に対して爆薬を使ったことを後悔するといいですよ」
炎上していた寮部屋の『火』の気を集めて、襲い来る小鬼たちを火炎で薙ぎ払った。
大竹は鬼神に守られ無傷であったが、小鬼たちは殲滅できていた。
「本当に鈴鹿御前様のお帰りってわけだ。いいだろう……こっちも本物で相手をしなくてはいけないらしい」




