五十四話
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「ありがとうございます。信太師匠には本当に世話になってばかりです。何をしたら恩に報いることができるかどうか……」
「ワタシとしてはキミが運命を乗り越えて本物の俊宗クンと二人で挨拶に来てくれたら、それでいいんだ。ワタシは悲劇が嫌いだからね」
私は収納結界に手をかざすと実家から大通連と小通連を神足通で転移させた。
「ん? 刀身だけしか転移してこなかったけど、いいのかい?」
「大竹は私が追放されたことを知っているなど、家の事情も把握していました。拵えごと転移させてしまっては決戦の準備をしていると知られてしまうはずです。それに大通連と小通連は持って戦うものではないのですよ」
信太師匠は「そうなんだ」と興味津々だ。
大通連と小通連は通力自在の刀。
姿を変えたり、浮遊して周囲の五行を溜め込んだり、五行で操作する刀だった。
信太師匠は腕を組んで「しかし」と呟き目を輝かせて大通連と小通連を観察し始めた。
「三明剣が揃ってるなんて、なかなか貴重な瞬間だね」
「信太師匠……私は全ての準備が整ったと思います。大嶽丸との因縁に決着をつけます」
「そうか。鈴鹿御前として自分の全てを自覚したキミなら勝てるさ。次に会う時は本物の俊宗クンを連れてきてくれたまえ」
私は信太師匠に一礼をして、結界乗り物に乗って寮部屋に戻っていった。
相変わらず千鶴の帰りは遅い。千鶴にも話さなくては。
私は明日、大嶽丸を殺すのだ。
寮部屋で私は顕明連を抜いて決戦前の点検をしていた。
大丈夫。刀身にゆがみはない。振っても刀身がぐらついたりしない。問題はない。
収納結界の中にある大通連、小通連も自在に動かすことできる。
武器は私の生前と変わらない物を揃えることができたが、問題は体の方だ。
いくら鈴鹿御前の生まれ変わりと自覚しようが、最近になって剣術の稽古を始めた女子の体力であることには変わりない。
生前に行っていた訓練で少しでも体力の向上を目指すべく、私は壁に寄りかかり目をつぶり集中した。
周囲の五行がより鮮明に感知できる。周囲に漂う五行を体内に取り込み、体内で循環させて自然の力を体に吸収させる。
疲労感が瞬く間に回復して、力がみなぎってくる。全盛期の私は戦いながらこれを行い、無尽蔵の体力で俊宗と妖怪退治をして回った。
感覚さえ取り戻せれば、少ない体力でも戦うことができる。
そんな訓練を繰り返していると千鶴が帰ってきた。




