五十三話
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辰星博士の屋敷で勉学に励む大竹を捉えるべく、ぎりぎりまで接近を試みた。
監視用の式神もいないのは意外だったが、弟子たる大竹が師匠の屋敷に監視用の式神を放っているなど失礼に当たるのか、と思い直し納得した。
流石に辰星博士……陰陽師の頂点に立つ者の屋敷の大きさは桁違いだ。庭園まであり、並みの武家よりは豪華な住まいであることは疑いようはない。
屋敷の裏手で私は目を瞑り意識を集中させた。
すると五行の集まり、つまりは人間が何人か動いているのがわかった。
中でも、大きな五行の反応が二つあった。
わかりやすくて助かる。二つに絞れたのなら、生前に見た大嶽丸の五行に近い方が大竹で間違いない。
私は宿命通で大竹の過去を遡りはじめた。
結論から言うと大嶽丸は現状で俊宗以外の人物と縁を結んでいなかった。
過去、状況に合わせて敵対した存在と縁を結んでは生き残ってきたが、現在も縁が結ばれ続けているのは俊宗だけだった。
俊宗の命の一部を利用した式神しか世に存在しないためか、現在の姿である少年の大竹として長い時を過ごしてきたようだった。
俊宗の本体をどうにか呼び出す研究を続けていたが、叶わずに現在に至るようだ。
必要な情報は手に入れたので、私は神足通で信太師匠の結界屋敷へと神足通で戻った。
戻るなり信太師匠は「どうだった?」と尋ねてきた。
「現状は俊宗の他には縁を持つ者はいないようです」
「それはよかったじゃないか。話が簡単で済む」
「他に縁を持つ者がいなくて助かりました。私がこの世から消える方法は万人に使えるものではなかったので……」
鈴鹿御殿に入ることができるのは、五行であったり妖力であったりなんらかの力を一定以上に持っている者でないといけない。
信太師匠は問題なく入れるだろうが、他となると思いつかない。
本物の俊宗は人間としては破格の五行が体に流れていて、顔色一つ変えずに鈴鹿御殿に迷い込んだ。それは特例中の特例だった。
「そうだ。さっき、鈴鹿御前として目覚めたキミに贈り物を思いついたんだ」
信太師匠は指を二度振ると二つの細長い結界が生成された。
「それは迷彩収納結界だ。ワタシとキミにだけ、中身が見える収納用の結界さ。大通連と小通連も手元に置いてあった方がいい。大嶽丸に知られては困るからね」
まるで心が読まれているかのような的確な贈り物にありがたさと怖さが同居している。




