五十二話
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「お、何か覚悟が決まった顔をしたね」
「えぇ、私は鈴鹿山で大嶽丸を殺し、本物の俊宗との再会を目指します」
「伝説ではキミと俊宗クンに大嶽丸は倒されたと記憶しているけど、現に大竹として身を潜めている。今度こそ確実に殺す方法を見つけたのかな?」
私は「難しいですが」と前置きをして、信太師匠に話そうと考えた。信太師匠の視点からの意見も欲しかったからだ。
「大嶽丸の性質は自分を殺した者と縁を結び、縁のある者がいる限り死なないという疑似的な不死性を有しています。私は大嶽丸を殺すのと同時に式神の俊宗を殺します」
「そして、今度は君がこの世から姿を消せばいいというわけか。少しの間、この国のどこにも君の反応がなかったけれど、それがこの世から姿を消す方法なのかな?」
私は「そうです」と答えると信太師匠は「うーん」と唸って考えこんでしまった。
どの程度、鈴鹿御殿に隠れていればいいのか不明だが、本物の俊宗が目を覚ますことができたのなら、それが合図になると思っていた。
しかし、信太師匠が首を傾げ思案をしていることに少しの不安を覚えてしまった。
「何か……無理があったでしょうか?」
「いや、理論上はそれで大嶽丸を倒すことができるだろう。でも、大嶽丸が俊宗クン以外に縁を持っていないかどうか宿命通で確認する必要があるね」
危なかった。その可能性を考慮していなかった。やはり信太師匠に相談してよかった。
「でもね。そんなことよりも大きな問題は、キミが式神とはいえ田村丸俊宗の姿をした彼を斬れるかどうかが心配だ」
私は思わず首を傾げてしまった。明らかに偽物という認識になっていたからだ。
「本物の俊宗は鈴鹿山で寝ていました。本物を見てきたからには斬れます」
信太師匠はいまいち信じきれていない様子だった。
「ワタシは何人も、そう言って斬れない人を見てきたのさ。親しい顔が敵にいる状況とは思っているよりも厄介で、その瞬間の判断を鈍らせるものなんだよ」
「まるで経験してきたような言い方ですね」
信太師匠は「あぁ」と俯いて肯定した。
いつも飄々とした信太師匠からは想像もつかないような疲れたような顔をしていた。
「ワタシは親しい顔をした敵を殺せずに、ずっと逃げているんだ。そのための迷彩結界、日ごとに屋敷の位置も変えているのも全部逃げるためさ」
「私は残念ながら逃げることができないのです。二十五歳で死ぬという運命は大嶽丸を殺さないかぎり私に付きまとうものでしょう」
私はできる。
だって、式神の俊宗は偽物なのだから。
「……そうか。ワタシとしては迷いなく斬れることを祈るばかりだ」
「はい。私は俊宗の偽物を斬ります。では、さっそく大嶽丸の縁を確認してきます」
信太師匠に一礼をすると私は神足通で転移した。




