四十九話
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俊宗はりんを信頼のおける坂田という陰陽師の家に預けて、自らの屋敷に帰ってきたところだった。
だが、私のに想定していなかった出来事がすぐに起きた。
月明りが照らす深夜、都にある俊宗の屋敷に大嶽丸が再び姿を現したのだ。
即座に俊宗は刀を抜き、大嶽丸の筋一本の動きも見逃さない鋭い眼光になった。
「何故、お前が生きている。私は確かにお前の首を落としたはずだ」
「田村丸俊宗……お前には俺を斬ったことで縁が生まれた。お前が生きている限り、俺は死なない」
「なるほど……鈴鹿が言っていた『不測の事態』とはこのことか。だが、大嶽丸……自らの不死の秘密を明かすのは愚かだったな」
大嶽丸の方は俊宗が刀を納めたのは意外だったようで顔をしかめた。
「私はこれからこの世から姿を消す。私がいなくなったら、お前は生きられない」
「あぁ。その通り。だからこうするのだ」
大嶽丸は札を取り出すと札は赤く燃えて、もうひとりの俊宗が召喚された。
「まさか、私の式神だと……」
俊宗は周囲を見回して、一瞬で思考を巡らせていたようだった。
「誰かに殺されることを心待ちにしていた。その時こそ俺の不死は完成するからだ」
「負け惜しみだな。真なる不死なら負けるべきではなかったぞ、大嶽丸。お前の相手をするのは私ではないようだ」
俊宗は大嶽丸を相手にせず馬に乗ると鈴鹿山に向かっていった。
大嶽丸は追うつもりはなかったようだ。
日は昇り始め、辺りの山道は明るくなり始めていた。
馬に乗りながら思案をしていた俊宗は何かを思いついたようだ。
「鈴鹿! 聞いているな!」
俊宗は空に向かって叫んでいた。私に届くと確信して。
「あの式神には私の命を僅かに持って行かれた。おそらく、私が鈴鹿御殿に入り千年の眠りにつけば、大嶽丸は大幅に弱体化する。奴を倒すには、殺した瞬間に縁を持つ者がこの世にいない状態が必要なはずだ」
鈴鹿山に着くと馬を降りて、森の中を俊宗は走り出した。
「大嶽丸が呼んだ私は偽物だ、遠慮なく斬ってしまえ。私の偽物が存在する限り大嶽丸は死なないはずだ。あの偽物は鈴鹿のことを良くも悪くも導くだろう。鈴鹿がもし、斬れなかったなら自分で決着をつける」
俊宗は鈴鹿御殿に息を切らして入ると用意されていた寝床へと向かっていった。
「大嶽丸のことは鈴鹿に任せるしかなくなってしまったが、君なら容易くできるだろう。おやすみ……鈴鹿。千年後、また逢おう」
それが俊宗の記憶の終わりだった。
視点が信太師匠の結界屋敷に戻ってきた。




