四十一話
毎日三話更新
「えぇ、そうです。よくぞ、お越しくださいました。田村丸俊宗さん……」
そう。ここまでは自分自身に宿命通を使ったことで見た光景だ。
そのあと世直しについて話して俊宗と意気投合したのだった。そうして、俊宗の鈴鹿山通いが始まった。
俊宗は鈴鹿山に通う理由として、『鈴鹿御前を見つけることに協力してくれた仙人の老人に勉学を学ばせていただく』と嘘をついていた。
俊宗の配下が『ぜひ私も会わせて欲しい』と言い出したが、鈴鹿御殿への道のりが厳しくて断念している様子もあった。
常人がたどり着けないのは当然なことであった。むしろ、疲労の様子を見せずに辿り着く俊宗の方がおかしいのだ。
「遅かったではないですか……」
「少々、距離があるのでな。許してくれ」
鈴鹿御前は「仕方ないですね」とむくれていた。
(俊宗が来るのが楽しみすぎて、張り切って果物などを準備していたのを私は思い出した。なんか……過去の自分を見るのって恥ずかしいかもしれない)
御殿の中を歩く鈴鹿御前の後ろを俊宗はついて歩いた。
鈴鹿御前は酒やリンゴ、蘇など用意して、準備万端の体制で俊宗を出迎えていた。
二人は用意されていた敷物に腰を下ろした。
「ありがたくいただかせてもらおう」
俊宗はリンゴにかじりつくと「うまいっ」と微笑んだ。
「お口に合ったのなら幸いです」
すました顔をしながら内心は会いにきてくれて嬉しくてしかたがないのは私のことだから、嫌でもわかってしまう。
(嬉しそうだなぁ、私……)
「義賊として年貢を民に還元するというのは少々、強引だったという自負はあるのです。俊宗だったら為政者の特権意識をどうやって変えようと考えているのですか?」
俊宗は「うーん」と唸り腕を組んで考えこんでしまった。
「正直言って私は政のことなど、さっぱりわからん! ただ自分の見える範囲にいる人たちくらいは自分の腕で守れるように腕を磨いてきた一人の人間でしかないんだ」
「ふふ……そんな無策でよく『世直しをしないか?』などと提案できましたね」
「私は難しいことを考えるのが苦手なんだ。道のりさえ定まってしまえば、私がなんとしてでも切り開くことはできる」
「まぁ、そんなあなただから信用できるというものです。一緒に考えましょう」
鈴鹿御前は盃に酒を注いで、俊宗に渡した。
「では、善き世の中を目指して」「善き世の中を目指して」
鈴鹿御前は俊宗の言葉を復唱して、二人は盃を交わした。




