三十九話
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いつも通りの朝がきた。私が起きる頃には、千鶴はもう部屋を出ている。
私は普段着の茶色い生地に白い麻の葉模様の着物を着て身支度を済ませた。
寮部屋を出ると俊宗が待っていて、信太師匠の結界乗り物が来ていた。
「式神さん。おはようございます。では行きましょうか」
「あぁ、行こうか」
私と俊宗は結界乗り物に乗ると信太師匠の結界屋敷に運ばれていった。
やはり前日とは違った場所に移動していたが結界乗り物のおかげで迷うことなくたどり着くことができた。
あの信太師匠をここまで慎重にさせるなんて、とんでもない敵がいるのだろうか?
もしいるのだったら私には、きっと手に負えない。私は大嶽丸を倒すことに集中したほうがいい。
「やぁ、おはよう二人とも。定例の面談で呼んではみたものの……何しようか?」
「そうですよね。私は宿命通を自主的に練習するべきなのですが、夜行寮に所属するなら江戸の防衛について覚えなくてはいけないのですよね」
「本当ならね。でも、坂田サンの場合は江戸の防衛よりも敵との決着を優先した方がいいとワタシは思っているよ。ワタシが坂田サンの分まで働いておけばいいだけさ」
信太師匠には頭が下がるばかりだ。信太師匠の見る目がなければ私は落ちこぼれ陰陽師として人生を終えていただろう。
適切に導いてもらい神通力まで覚えることができた。
「信太師匠には感謝してもしきれません。迷彩結界に囲まれた安全な訓練場所を提供してもらえるのも助かります。さっそくですが式神さん……」
俊宗は私の方を見て「どうした?」と尋ねてくる。
おそらく俊宗が見ている光景は大竹にも筒抜けだと思った方がいい。
結界屋敷の中といえども油断はできない。
「式神さんで宿命通を練習してみてもいいでしょうか? 昨日は私自身で試してみましたが、体内に五行のない身です。体内に五行のある式神さんで試してみたいのです」
嘘だ。体内に五行があろうがなかろうが、宿命通には関係ない。
「私で成功するなら慣れるきっかけになるかもしれない。私で試してみるといい」
いちいち俊宗の本心なのか、大竹に言わされていることなのか疑ってしまうこの状況が嫌だった。
私は笑顔を取り繕って宿命通の準備を始めた。
『土』に『木』で根を張り『水』で成長させる。一度成功しているし難なく俊宗の過去の光景が見えてきた。
私たちが生きた平安の京だ。




