三十八話
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「私と俊宗の宿敵、いずれ大嶽丸になる同じ名を持つ者、大竹がいました。生前、大嶽丸は俊宗が止めを差しました。縁としては十分だと思います」
「いずれ大嶽丸になる者って……そこで大竹の奴が絡んでくるのか。なら、田村丸俊宗を鈴が召喚したと思わせて側においておいた、というのが大竹の策っていうことか」
「他の世界の『わたし』は俊宗の『自分たちで乗り越えなくてはならない』という言葉を信じて死んでいきました。……悲しいですが俊宗が大竹の駒として利用されているという現状は認めざるを得ません」
私は悲しさのあまり体が重くなったような気さえしてきた。
すると千鶴は私の肩に手を置き「はぁ」とため息をついた。
「何、弱気になってんだよ。あたしには田村丸俊宗の抵抗を感じるね。鈴が気絶した時があっただろう? あの時は確実に鈴のことを殺せたはずだ。それでも鈴は生きてるんだ。本当に危ない時は全力で抵抗していると思うぞ。式神の田村丸俊宗には本人の意思と大竹に操られて行動している二つがあるんじゃないか?」
「大竹は俊宗を利用しつつも御しきれていない……」
「だけど、いつか抵抗の限界は来る。一番最悪の瞬間に裏切られることも覚悟しなくちゃならない。鈴……その時はどうするんだ?」
どうしたらいいんだろう。
千年後の再会を閻魔大王に認めさせたのは俊宗だ。なら私は……。
「どうするべきなのかは、きっと俊宗が教えてくれると思います。俊宗に宿命通を使って過去を辿り答えを探します」
大嶽丸は一度、俊宗に首を斬られ退治されたことは間違いない。
きっと生前に私が死んだあと、想定外の何かが起こって大竹という姿として復活している状況になっているのだと考えるしかない。
私の視点からの過去ではなく、俊宗の視点からの過去に何か答えがあるかもしれない。
「過去を辿る神通力か。それなら大竹の邪魔も入らないかもな。きっと答えがある」
「ありがとう、千鶴。進むべき道がはっきりしました」
次の目標が明確になった。俊宗のことは信じつつも警戒しなくてはならない。
せっかく自分の正体がわかって、俊宗が目の前にいるのに共に暮らせないのは、もどかしいことこの上ない。
でも私は俊宗が命がけで手に入れた好機を必ずモノにしなくてはならない。
私と千鶴は寮部屋に戻り、何事もなかったかのようにお互い眠りについた。
目を瞑ると人々に宿る五行が感じられた。
誰よりも弱弱しい俊宗の五行は、夜空の下の蛍のように小さな光だった。
常に大竹に抵抗して気力を使い果たしているから、そんなに弱弱しいの?
それとも、その小さな光が残された抵抗力を示しているの?
私……早く俊宗を解放してみせるから。




