三十七話
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「ほとんどの世界で、あたしたちは友達だったな。あたしも光栄だ。あの鈴鹿御前と友人だなんて。まぁでも鈴鹿御前だって知らなくても、あたしは鈴の面倒を見ちまうんだ。鈴はどの世界でも夢追い人だからな」
他の『わたし』も千鶴と友人になり、その面倒見の良さには世話になっていた。
「他にもいろいろと話しておきたいことがあって……。寮での会話は筒抜けになってしまうからここに呼ぶしかなかったのです」
「たしかにな。寮の近くは大竹の式神だらけだもんな。まぁ、あたしにできることなら力になるさ」
「……私と大竹は命を取り合う間柄です。千鶴を巻き込みたくはなかったけれど同じ部屋にいる以上危険が及ぶかもしれない。私が責任を持って守るつもりだけど、千鶴にも伝えておかなきゃと思ったのです」
千鶴は「そこまでだったとは……」と俯いて腕を組んで難しい顔をしていた。
「それと……。俊宗と模擬戦をしたのだけど、生前から比べてあまりにも弱くなりすぎているのが不自然なのです。三明剣を全て使ってようやく対等な斬り合いになるくらいの力量の差があるのです。俊宗の剣術や身体能力は人間が到達できる限界そのもの。あの俊宗は何かおかしいと私は思うのです」
俊宗は負けず嫌いで模擬戦であっても、負けるのは好まないはずだった。
信太師匠の結界屋敷で模擬戦をしたときに使ったのは木刀一本と神足通のみ。俊宗の剣術は、その程度で互角に渡り合えるようなものでは断じてない。
体内の五行に関してもそうだ。生前の俊宗はもっと大きく強い輝きだった。
「三明剣ってのは顕明連と大通連と小通連、その三本の総称だったか。田村丸俊宗も人の身で鈴鹿御前相手に互角に戦えるなんて化け物じみてんな。それが式神の田村丸は大幅に弱くなっている……そもそも人間の式神っていう前例が少なくて正直なところわかんねぇな。うちの師匠にも意見を聞きたいとこだな」
千鶴は少しの思案をする素振りを見せると「おそらく」と前置きをした。
「あたしらが見ている式神の田村丸俊宗は本物じゃねぇ。そもそも五行を持たない鈴は式神召喚できるはずがないんだ」
「それは以前も言っていましたね。私が召喚できないなら別の『誰か』が呼んだのでしょうか?」
千鶴は考えこんでいたが、何かに気付いたようで「それだ!」と大きな声を出した。
「他の誰かが、鈴が式神召喚をしたように演出した可能性がある。田村丸俊宗と縁のある奴は式神召喚の儀式をした場所で他に誰かいたか?」
その問いに私も思わず息をのんだ。
あの場には私以外に、もう一人だけ俊宗と縁を持つ者がいたのだ。




