三十話
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「それじゃあ、たまには師匠らしく天狗についての講義でもしてみようかな」
「お願いします」「私も興味があります」
私も気になってきていたところだった。式神さんも珍しく食いつきがいい。
「おほん。天狗というのは人間が断食、滝行、読経などの修行を経て体内の五行を吐き出して無の境地に至ってなるものなのさ。そうして神通力を使えるようになる。ほとんどが元は人間でワタシが呼んだ白峰も元人間の天狗に該当するね」
「生まれつきの天狗も少なからず、いるというわけですね」
「坂田サンのように生まれつき五行が流れていない人間は稀な存在で、むしろ生まれつきの天狗はそういった人だったみたいだね」
話を聞くかぎり私は天狗に近いという印象を持たざるを得ない。
私の家は陰陽師の家ではなかったのだろうか?
「式神さんは天狗とは関係があるのですか?」
「まったくないな。私も天狗ではないし」
ぼーっと式神さんの顔を覗いていたようだが、はっと気づいた。
「そうでした。式神さんの体には五行が流れていましたね。私の祖先が天狗だったりするのでしょうか? また謎が増えました」
「まぁ、そんな坂田サンの周りにある謎の数々も六神通の内の一つである宿命通を習得すれば自力で理解できるはずだよ。宿命通は自分や他人の過去や前世を知る力だからね」
「宿命通を式神さんに使えば、式神さんの正体もわかるのでしょうか?」
「いいや、私ではなく自分に使うんだ。最初に知るべきは自分のことだ。私のことはそのあとにした方がいい」
少し疑問だった。幼い頃からの記憶に特別なものがあるとは思えなかった。
しかし、宿命通は前世すら知ることができると信太師匠は説明した。
「私が知るべきは前世ということですか?」
式神さんの方を見ると頷いて肯定してくれているようだった。
私は勘違いしていたかもしれない。
大竹を倒せば、私の周りにある謎が明らかになると思い込んでいた。
でも、もし逆で私の抱える謎を解明しないと、大竹を倒す道が開かれないのではないかと思い始めていた。
それに大竹が敵という認識も半分正解と言われている理由がわかるかもしれない。
「神通力を覚えるためには基本的な体力も必須でしょう。式神さんっ! 稽古の続きをお願いします」
「わかった。では次は打ち合いをしてみようか」
それからというものの、嬉々として稽古を提案したことを後悔するほどの過酷な運動に思わず後悔してしまった。
木刀が何度も私の体に当たっては、あざができた。式神さん、容赦なさすぎでしょ。
信太師匠は私と式神さんが外に出ることができないので、代わりに握り飯を持ってきてくれた。本当に頼りになる。
「神通力を覚えたら何か生活が変わるんでしょうか……」
私は横になって天井を見ながら座っている式神さんに話しかけた。
「きっと、いい方向に変わるさ。私の大切な人は神通力を使って快適に暮らしていた」
正直なところ「やっぱり」とは思ってしまう。




