二十八話
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「きっと、鈴が本当に神通力を習得してしまえば、私なんか足手まといだ。それでもこの戦いは私のものでもあるんだ。それを頭の片隅に覚えてくれていたら幸いだ」
「もしかして式神さんは神通力を知っているのですか?」
式神さんはうつむくと「詳しくは知らないんだ」と呟いた。使っている人を見たことがある、それくらいのことかもしれない。
「神通力を使っている、ほかの『わたし』はいませんでした。他の『わたし』がやっていないことをやる必要があると思います。頑張りますよ」
「鈴は努力家だな。よしっ稽古の続きをやるか」
「はい!」
先ほどの奇襲を踏まえて抜刀の速度を上げるために、抜刀と納刀を何度も繰り返して体に動きを叩き込んだ。
式神さんの指導のおかげでそれなりの速度で刀を抜けるようになってきたが、私が先程のような奇襲に反応できるかは別問題だ。
正直言って、全く反応できていなかった。
気付いたら槍が落ちていた、そんな認識だった。信太師匠が反応できていなかったら死んでいただろう。
丁度良く「やってるね」と信太が見物にやってきた。
「流石に教える人が良いと上達が早いね」
「あの……信太師匠は先程の奇襲に何故反応できたのですか? 完全に私たちの死角から投擲でしたよね」
「それは私も気になっていたことです。どういう仕組みなんです?」
式神さんも、やはり気になるらしい。
信太師匠は四角い結界いくつも使って日本地図を造形し始めた。
しかし地図という平面的な造形から次第に隆起を始め、高低差すら把握できる、小さな日本列島の模型が完成した。
「休憩がてら話しておこうか。これは我々の立っている日本列島の形さ」
本州から、蝦夷、琉球まで全て網羅されていた。
「いや、そ、そうなんでしょうけれど……え、すご」
私はあまりの光景に言葉を失ってしまい、式神さんも唖然と口を開けていた。
すると信太師匠は指先に小さな立方体の結界を生成すると江戸に相当する場所に配置してみせた。配置した結界から同じ大きさの結界が無数に生成されて次第には日本列島全域に結界が敷き詰められた。
「こんな感じで日本列島の全土に碁盤のマス目のように無色透明で非接触型の探知結界を敷き詰めていてね。誰がどこの座標にいるか常に把握できるようにしているんだ」
やっていることの規模が大きすぎて、思わず式神さんと顔を見合わせてしまった。
「江戸に居ながら蝦夷や琉球にいる敵対者の居場所だってわかる。ましてや近辺のことなら余裕さ。大竹クンと鬼神には注視していたし、ワタシ相手に奇襲を取ろうなんて五百年早いってものさ! はっはっは」
あまりの壮大な術で式神さんですら困惑の色を隠せずにいた。式神さんが信太師匠のことを神様に近いと予想していたが、現実味を帯び始めてきた。
「そんな大がかりなものを常に展開しているのですか? 信太師匠……あなた何者なんですか?」
答えてもらえるか、わからなかったが私は聞かずにはいられなかった。




