二十七話
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私は信太師匠が生成した結界乗り物に乗ろうとした。その時だった、ヒュンと風を切る音がした。
次の瞬間、耳をつんざくような金属音が響き、落ちたのは槍だった。
立方体の結界が私たちを囲んでいて、この結界に守られたのだろうか。
式神さんは私をかばうように前に立ち刀を抜いていた。式神さん睨む視線の先には大竹の鬼神が立っていたが、霊体化して姿を消した。
「槍の投擲なんて、敵サンも随分な焦り様だ。おっかないおっかない。ほとぼりが冷めるまで隠れてなよ二人とも」
信太師匠は私たちが結界乗り物に乗ったのを確認すると、かなりの速度を出して上昇して迷彩結界で回りを囲むとゆっくりと移動を始めた。
移動中は気まずい沈黙が場を支配していた。
私は少し式神さんに強く言い過ぎたかもしれないと後悔していた。
「そういえば……結界の強度はどれほどありますか?」
式神さんは思い出したかのように信太師匠に尋ねた。
たしかに私も結界の強度は気になる。
「槍の投擲程度じゃあ、結界一枚で十分さ。仮に敵が本気を出した攻撃でも我が家はびくともしない。そこは断言しておこう」
そうこう話しているうちに信太師匠の家に着き、中へと入ると安堵からか思わず大きなため息が出てしまった。
「部屋を増設しておこうか。あとは友人が来るまで自由に暇つぶしをしてたらいいさ」
信太師匠は指を振り言葉通り二人分の部屋を増設すると、自室の方へ歩いていった。
新しく生成された寮部屋と同じ構造をしていて信太師匠の配慮が感じられた。
結界術……便利すぎる。同じく感心していた様子の式神さんと目が合った。
私には式神さんと話をしなくては、という思いがあった。
「あの……さっきは守ってくれてありがとうございました。それに、言い過ぎたような気がしていて……ごめんなさい」
「いや、私は反応できていなかった。鈴を守ったのは信太師匠だ。信太師匠がいなければ私はあの瞬間に鈴を失っていた……。私の力量不足で、隠れることになってしまって鈴には本当に迷惑をかけるな……。すまない」
式神さんは呆然と視線を落としていた。
「いいではないですか。私、生きてますし。私……必ず神通力を習得してみせます。どんなものかもわからないですけど、大竹があそこまで必死になるのですから、きっと大きな力のはずです。その時はともに肩を並べて戦えること願います」
式神さんは「そうだな……」と力なく呟いた。奇襲に反応できなかったことをとてつもなく不甲斐なく感じているように思えた。
「やはり、私自身が力をつけなくてはですね」
他の『わたし』は式神さんの実力だけで鬼神に一歩及ばず死んでいった。そこに私が、神通力を使えるようになり戦力として加わったならば、もしかしたら運命を覆すことができるかもしれない。




