二十四話
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式神召喚の行われた広場で私は、式神さんにみっちり腹の虫がなり始めるまで素振りを繰り返した。
時折、見物にきた寮生が嘲笑しにきたような気がするが、眼中に入らなかった。だってこっちは命がかかっているのだから。
昼になり、私は食堂で握り飯を食べていると式神さんが何も食べていないことに気が付いた。
「式神さんは食べなくていいのですか?」
「あぁ、食べる必要がないんだ。だから、私が食べるくらいなら今を生きる者の腹に収まる方がいいと思ってな」
式神さんの合理的で慈悲深い判断に感服するばかりだ。
しかし、言葉とは裏腹に本当は食べたいと式神さんは思っているのではないかと疑ってしまった。
「式神さんは生きていないんですか?」
「生きているとも、死んでいるとも言えるような……複雑だな」
「そんな曖昧な状況なら食べるべきです。会話をしているのですから、少なくとも私は死んでいる人とは扱わないので、どうぞ」
私が式神さんに握り飯を差し出すと、式神さんは「わかったよ」と、ため息まじりに受け取ってくれた。
「どの世界の『わたし』にも式神さんは優しく接してくれて、守ろうとしてくれていましたね。たくさんの『わたし』を代表して礼をしたいです。ありがとうございます」
「でも、守り切れなかった……そうだろう?」
「えぇ、そう……ですね」
たしかに、そうではある。
式神さんを呼ぶことができた『わたし』は必ず大竹と戦うことになる。私も、その例に漏れず大竹と戦うことになるだろう。
現に神通力を学ぼうとする私をすでに妨害しにきている。きっと、戦いはすでに始まっている。
「……二十五歳の壁を越えるなら式神さんと一緒にいる私だと思っていますよ。今度こそ生き残ります。神通力を覚えた『わたし』は今までいませんでした」
「そうか……いや、そうだな!」
目に見えて明るい顔になった式神さんは握り飯のおかわりに走り出していた。
式神さんは戻ってくると何やら考え事をしているようだった。
「少しだけ、町を見て回りたいのだがいいだろうか?」
「いいですけど……急にどうしたんですか?」
「深い意味はないが、当世の暮らしを見たくなってな。当世では民が、食に困ることが少なくなったのだろう?」
式神さんの視線の先には握り飯を渡す中年男性の職員の姿があった。
「式神さんが生きていた時代はそうではなかったということですね」
「食事に困らなかったのは特権階級にいる人間だけだったな」
「……わかりました。夜行寮の近くを歩いてみましょうか」
「ありがとう。助かる」
そうして私と式神さんは夜行寮の門へと歩いていった。




