十八話
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歩きながら、私は信太師匠の言っていたことを思い出して食い気味に式神さんに質問をしてしまった。
「もしかして、信太師匠が別れ際に言っていた剣術の稽古でしょうかっ?」
「あぁ、そうなんだが……なんか楽しそうだな」
「それはもう楽しみにもなるものです。この刀はもらったばかりなのに、不思議と愛着が湧くというか……手に馴染むというか……とにかく、使いこなせるようになりたかったのです。私は陰陽術が使えなさそうなので武器はこの顕明連ただ一つです!」
私は信太師匠の言葉もあって、きっぱりと陰陽術を覚えるということを放棄している気さえしていた。
「そうか。なら稽古も楽しんでもらえると、ありがたい」
式神さんが足を止めたのは、式神召喚の儀式が行われた広場だった。
今は人が閑散としていて、刀を振っても危なくはないだろう。
実はこんな展開を心待ちにしていた自分がいた。
あまりにも陰陽術が下手なので今どきの雑魚妖怪ならば、我が身一つで武装すれば妖怪退治くらいはできるのではないかと期待していたのだ。
「では、手本を見せよう。刀を抜いて正面に構えてごらん」
式神さんの軸のぶれていない美しい構えに一瞬見惚れてしまったが、私も見よう見まねで顕明連を抜いて構えてみた。
「上からまっすぐ振り下ろすことを唐竹と言う。一、二、三と三回振ってごらん」
私は言われた通りに顕明連を三回振ってみると、急に目眩がして立っていられなくなるほど頭が痛くなってきた。
まぶたが重く感じて目を開けていられなくなって、視界は暗闇に飲まれていった。
ふと気付くと頭痛が収まっていて目を開けてみると幼少の頃から見てきた夢の中の豪華な御殿に立っていた。
服装は十二単にならず、普段着の茶色い生地に白い麻の葉模様の着物だ。
周りの様子を見た時に、いくつか違う夢の風景に気付いた。
黒い束帯を着た男性の姿がなかった。それに池に流れ込む滝が止まっていたのだ。
気になって池を覗き込むと錦鯉が一匹もいない。
すると一滴の水滴が池に落ちて波紋を広げた。
波紋が広がるのと同時に池には幼い『わたし』が写り、背後から見るような光景は動き出した。私の映り込みではないことは間違いなかった。
その『わたし』は十五歳の儀式で顕明連を選ばずに追放されなかった。その後、坂田家で穏やかに過ごしていた。だが、二十五歳になり病で死んでしまった。
もうひとり『わたし』の一生を、私は池を覗くことで追体験した。
(今のは……?)




