十五話
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「あなたはこの刀、顕明連に縁のある人なのですか?」
「少なからずはあるが、持っていたことはない」
「顕明連! 顕明連ときたかぁー。陰陽師が帯刀なんて珍しいと思ったんだよ。その刀を持つに至った経緯を教えてもらってもいいかな?」
信太師匠は顕明連という銘に心当たりがある様子だ。顕明連のことについてわかれば他にもわかることがあるかもしれない。
「坂田家には十五歳になる娘に儀式を受ける習わしがありました。三本の刀から一本の刀を選ぶという儀式で顕明連を選ぶと追放になります。私は顕明連を選んで追放になってしまったという訳です。信太師匠は何かわかることがありますか?」
「あぁ、三明剣まで揃っていたのか。式神クン、キミの正体は……」
口を開きかけた信太師匠に式神さんは割り込むように「まだ言わないで欲しい」と焦りながら懇願した。
「訳ありのようだね。……わかった。ワタシの口から式神クンの正体を明かすことはしないと約束するよ。まぁでも正体がわかってよかった」
「あの……私も式神さんの正体を知りたいのですけど……」
「鈴の力だけで私の正体に気付かないと意味がないんだ。だから、私からも信太師匠からも言ってはいけないんだ」
正直、がっかりだ。でも、式神さんの正体は信太師匠が理解した途端に警戒を解く程度には信頼できる人間らしい。
手がかりはやはり坂田家の儀式や顕明連。
信太師匠の『三明剣』という口ぶりから、三本揃っていることにすら意味のあるように感じられる。私が選ばなかった二振りにも何か役割があるのだろうか。
「そういえば、そろそろ式神クンを引っ込めても大丈夫だよ。疲れるでしょう?」
私は「え?」と思わず聞き返してしまった。
「普通の陰陽師はこれくらい実体化を維持すると疲れてくるのでしょうか?」
疲労感など全く感じていなかった。私が変なのだろうか、それとも式神さんが普通とは違うのだろうか。私では判断がつかない。
「新人はそろそろ疲れてくるはずなんだけど……坂田サンは何もかも規格外で面白いね。仮説はいくつかあるけど……よし、次に会う時には解明する道具を用意しておくよ。今日はこれくらいにしておこうか」
信太師匠は「よっこらしょ」と立ち上がったので、私と式神さんも立ち上がると外に帰宅用の結界乗り物が生成された。
「では坂田サン。宿題を授けよう。式神クンを霊体化させずにどこまで維持できたか明日の呼び出しで報告するように。疲れ始める時間が知りたいから限界まで挑戦とかしなくていいからね。あとで寮の空き室を確保しておくから、式神クンはそこで過ごしてね」
「わかりました。もし、全く疲れを感じなかった場合はずっと実体化させてみますが、それでいいですか?」
「もちろん。ちなみに明日以降はワタシが直接出向く形ではなく結界乗り物を向かわせることにするからよろしく。あぁ、言い忘れていた。式神クンは坂田サンに顕明連を使った剣術の稽古をつけておいてくれるかな」
私と式神さんは信太師匠に一礼をすると入口の方にある結界乗り物の方へ向かった。
結界乗り物は私と式神さんが乗ると寮の方へと自動的に動き始めた。
「あの、式神さん。私……知りたいんです。少し時間がかかってしまうかもしれませんが必ずあなたのことを見つけます」
「すまないな。口で説明してしまうと大切な人の意思を踏みにじってしまうのでな」
『大切な人』と言う式神さんは姿を思い出しているのか俯いている。
私の祖先と縁のある人というのが今の私が想像できる式神さんの正体。
式神さんから何か情報を引き出そうとするのも憚られるので他のことで気になることを尋ねることにした。




