人類で唯一の独身になりかけた時の話
「今から人類全員を超熱々で腹が立つぐらいの新婚夫婦にします」
ある日の朝、いつものようにテレビを見ていたらいきなり出てきた白い服を着た少年?がそんなことを言い切りやがった。何を馬鹿なことを、こちとら万年彼女無し彼女いない歴=女友達いない歴=年齢だぞ?一体何人の女性に片思いしてはイケメンの彼氏に夢を粉砕されたと思っているんだ。バカも休み休みいってくれよな、全く…
いやいや、ちょっと待て、こいつは一体誰だ?というかなんでテレビにこんなやつが写ってんだよ、さっきまで見てた番組はどこいったんだ?と、俺が混乱していると
「安心するといい、いや安心はできないと思うが私はこの世界の管理者だ。まぁ君たちが呼ぶところの神、と思ってもらって構わない。この放送は全世界で同時に放送されているから君たちだけが聞いている、なんてことはないから幻覚でもないことを保証しよう。さて、ここからが本題だ。先ほども言った通り今から君たち人類全員はもれなく超熱々の新婚夫婦となる。明日には人類の中から『独身』なんて言葉は存在しなくなっているだろうね。なぜ君たちが強制的に結婚しなければならないかは…まぁほとんどの人はわかっているだろう。君たちも知っての通り21世紀には100億人を超える勢いで上昇していた人口はも今は10億人をわずかに超えるほどだ。これほどまでの人口減少は人類史上、いや僕がみてきた世界の中でも類を見ないほどだ。そこで、僕たち管理者たちは君たちを強制的に夫婦にして人口減少を食い止めよう!ってね。心配しなくても夫婦になる人たちは馬が合うように調整するし、その後のケアもさせてもらうよ。ま、君たちに拒否権はないから黙って受け入れてもらえると助かるよ。」
………爆弾発言とはまさにこのことだろう。つまりこいつは世界が滅びそうだから俺たちの人権を無視して強制的に全人類を夫婦にすると?最高じゃないか。これでようやく彼女いない歴=年齢の地獄から解放される!いや、実際は彼女の過程すっ飛ばして夫婦になるから違うけども!あぁ神様仏様管理者様、なんて呼べばいいかわからないけどありがとうございます!
「それじゃあ始めるとしよう。ここに数字があるだろ?これが0になれば君たちはもれなく理想の妻、もしくは夫と結婚生活が送れる。それじゃあいくよ」
「10!」
あぁいよいよだ!
「9!」
これで両親からも圧をかけられなくて済むんだ!
「8!」
あぁ、俺の理想の彼女はどんなだろうな…
「7!」
きっと俺よりも賢いんだろうな
「6!」
そして誰よりも美しいと思う美貌を持つのだろう
「5!」
そろそろ考えることもなくなってきたな
「4!」
意外と長いなぁダンスでもしとくか
「3!」
意外とダンスって難しいな…
「2!」
イテ、足踏んだ
「1!」
こんにちは!俺の最高の奥さん!
「0!」
あれ?何も起こらない?おかしいな、あいつのいったことが本当なら俺の目の前には理想の人がいるはずなんだが…はっ!もしや『バカには見えない人間』ってやつか!…………いやそんなことないだろ。なんだよ『バカには見えない人間』って。
「あれ?1人だけまだ独身のまま?おかしいな…ちゃんと全人類÷2の数だけ夫婦ができるように設定したのに…」
えーっと今の世界の人口は確か……あったあった。
世界の人口まとめwiki
【世界の人口】
現在世界の人口は:12億4443人です
「あっ!なるほどぉ〜人口が奇数だったのね〜そりゃあ1人余るわけだわ!いや〜まさかそんなことを見落としてたとはね〜いや〜面白い!こんなに笑ったのは久しぶりだよ。アッハッハッハッハッ」
プッチーン
「んなことぐらい最初に確かめとけやーーーーー!」
ゴスン!
俺はブチギレた勢いそのままにテレビに映るクソ野郎の顔面を思い切り殴った。うん、痛いわ。少なくとも素手でやるべきじゃなかった。ちくしょう。上手い話なんてなかったのか…
「あー落ち込んでるそこの君、君だよ。さっきのバカの上司だ。今は君だけにこの通信を繋げている。その…なんというか…こちらのミスでこんな目に合わせてしまって申し訳ない。そこでだ。君1人だけを独身にしておくわけにもいかないし、君いっそのことあのバカと結婚しないか?ちょうどあいつも独身で彼女欲しそうにしてたし。あ、君は男だったか。まぁあいつどっちもついてるしいけるたちだからいいか。さて、君はどうしたい?」
俺は…………
私は今、世界を管理している管理者の一員として、そして同じ管理者である彼の妻として暮らしている。最初は戸惑ったけど今ではすっかり慣れてしまった。あぁ、それにしても彼は最高のパートナーだ。彼の上司を信じてよかった。まさか、世界で1人だけ独身として取り残されてしまったと思ったらこんなことになるとはね。人生、捨てたもんじゃないね♪
まぁ、もう人じゃないけど