初めての試練
グラゴは決意を固め、ギルドの裏庭へと向かった。石畳の道を歩くたびに、これまで感じたことのない高揚感が胸を満たしていく。これまで独りで剣を振るい続けてきたが、初めて公の場で自分の力を証明する機会が巡ってきたのだ。
裏庭に入ると、すでに数名の冒険者たちが集まっていた。昨日ギルド内で彼を嘲笑っていた連中もその中にいる。彼らは興味深げな表情で、グラゴの試験を見届けようとしていた。「ゴブリンが戦士の試験を受けるなんて、面白い見物だな」と小声で囁く者もいれば、「すぐに逃げ出すんじゃないか?」とニヤニヤ笑う者もいた。しかし、グラゴはそれらの言葉には耳を貸さず、ただ目の前にいる指導官に集中した。
指導官は、どっしりとした体格に鋭い目を持つ壮年の男だった。彼はグラゴを見据え、ゆっくりと口を開いた。
「俺の名はガルヴァン。かつてはシルバークラスの冒険者として名を馳せていたが、今はこのギルドで新人の指導をしている。お前のようなゴブリンが戦士を志すのは珍しいが、その意志が本物かどうか、俺が見極めさせてもらう。」
その言葉を聞いたグラゴは、相手の強さを肌で感じるとともに、自分より遥かに高い境地があることを実感した。そのとき、隣にいたリアナが小声で説明を始めた。
「冒険者には、実力や実績によってランクが付けられるの。最初はアイアンから始まり、その次がブロンズ、そしてシルバーへと上がっていくのよ。その上にはゴールドやプラチナ、そして伝説級のオリハルコンがあるわ。でも、オリハルコンランクの冒険者は世界に数えるほどしかいない存在。この街ではシルバーランクが最高クラスなの。」
グラゴはそれを聞き、冒険者の世界には自分がまだ知らない強者が大勢いることを知り、胸が高鳴った。自分はまだまだ未熟だ。しかし、この道を進めば、さらに強くなれる。その思いが、彼の中でさらに燃え上がる。
裏庭では、ガルヴァンがすでに準備を終え、構えをとっていた。彼の腰には片手剣が下がっており、無駄な動きのない立ち姿は長年の経験を物語っていた。
「ルールは簡単だ。俺に一撃でも当てられたら、お前の実力を認めよう。だが、俺は手加減しない。戦士になる覚悟があるなら、本気で来い!」
その宣言に、周囲の冒険者たちがざわめいた。「ガルヴァンに一撃を当てるなんて、並の新人には無理だろう」「いや、そもそもゴブリンにできるのか?」そんな声が飛び交う中、グラゴは深く息を吸い、ゆっくりと剣を構えた。
その姿を見たガルヴァンの目がわずかに鋭くなる。「ほう…ただのゴブリンとは違うか?」
グラゴは剣を両手でしっかりと握りしめ、地面を踏みしめた。長年、森の中で独り修行を積み重ね、何度も何度も剣を振り続けた日々。そして人や獣との戦いの経験。すべてはこの瞬間のためにあるのだ。
「行くぞ!」
グラゴは力強く地面を蹴り、ガルヴァンに向かって突進した。