出会い
夜明け前の森は、まだひんやりとした空気に包まれていた。グラゴは焚き火の名残に土をかけ、灰を散らしながら慎重に後片付けをしていた。新たに手に入れた剣は、手元にしっくりと馴染み、鞘に収めてもなおその存在感を放っていた。昨日の戦いを思い出しながら、彼は剣を軽く抜いて光にかざす。狼の血を浴びたはずの刃は、まるで新品のように輝いていた。
「いい剣だな」とつぶやき、グラゴは満足げに笑った。この剣が、彼のこれからの冒険に欠かせない相棒になることを確信していた。
朝日が差し込み始め、森全体が淡い金色の光に包まれる。準備を整えたグラゴは旅を再開しようとしたそのとき、不意にどこからか女性の声が聞こえた。
「助けて! 誰か!」
その声は、明らかに切迫した様子だった。グラゴはすぐに反応し、声のする方向へ走り出した。剣の柄をしっかりと握りしめ、慎重に音を立てないように森の木々の間を進む。
ほどなくして、開けた場所に出た。そこには、後ろで髪をまとめた軽鎧に身を包んだ若い女性が数人の男に囲まれていた。男たちは粗雑な武装をしており、明らかに盗賊の類だった。彼らは女を冷笑しながら取り囲み、その中の一人がナイフをちらつかせている。
「さっさと金を出せ。抵抗しなけりゃ命だけは助けてやる」
「そんなもの、持ってないって言ってるでしょ!」
女性の声には恐れと怒りが入り混じっていたが、毅然とした態度を崩していない。その様子に、盗賊の一人が苛立ったように彼女の肩を掴もうとした。
グラゴは一瞬のうちに状況を見極めた。「今だ」と心に決め、彼は茂みから飛び出した。
「おい、そこの連中! その手を離せ!」
突然の介入に驚いた盗賊たちが振り向く。彼らの目に映ったのは、鋭い目つきで剣を構えたグラゴの姿だった。普通ならゴブリンを見て嘲笑するところだが、彼の異様な迫力に男たちは警戒を見せた。
「なんだ、ゴブリンかよ…でも、なんかただのゴブリンじゃねえな」
盗賊のリーダーらしき男がグラゴを観察しながらつぶやく。
「俺に手を出すなら、命の保証はできないぞ」グラゴは静かに、だが断固とした口調で言った。
一瞬の静寂が場を包む。そして、リーダーが笑みを浮かべて言った。「面白いじゃねえか! おい、そいつもやっちまえ!」
盗賊たちが一斉にグラゴに襲いかかった。彼は冷静に剣を構え、素早い動きで応戦する。最初の一人をあっという間に薙ぎ倒し、その動きの流れで次の男の攻撃を受け流して反撃を加える。彼の剣技は、昨日の狼との戦いでさらに磨かれたようだった。
最後の一人が地面に倒れ込むと、グラゴは剣を鞘に収めた。振り返ると、女性が驚いた表情で彼を見つめていた。
「助かったわ。ありがとう…」彼女は感謝の意を示しながら、ふっと力を抜いた。
「怪我はないか?」とグラゴが尋ねると、彼女は首を横に振った。
「平気よ。でも、あなた…ゴブリンよね?どうしてこんなことを?」
その質問に、グラゴは少し間を置いて答えた。
「俺はグラゴ。ただのゴブリンじゃない。この剣で強さを証明するために旅をしている。」
彼女はその言葉を聞き、感心したように微笑んだ。
「そう。私はリアナ。冒険者よ。あなたがいなかったらどうなってたか…本当にありがとう」
彼女は小さく礼をしてから、改めてグラゴをじっと見つめた。
「ところで、あなたひとり?どこへ行くつもりなの?」
「特に決めていない。」とグラゴが答える。
「この先に私が住んでいる町があるの。お礼もしたいし。そこに行かない?」とリアナが笑顔で話しかけて来た。
グラゴは少し考えた後特に行く宛も決めていなかった為、その提案に乗る事にしたのであった。