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BLACK RING  作者: 墨川螢
第3章 サックガーデン占拠事件
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第3章 サックガーデン占拠事件



 ぶらりと繁華街に出掛け、センスを感じる服を買い、美味しい食事に舌鼓を打つ。そんな楽しい休日のひとときを、私に恵愛と敬愛を与えてくれる彼と、先日ともに過ごさせていただいた。しかし彼は帰り際、立ち寄ったブティックやレストランを口遊むように列挙して――私をブランド志向と軽笑した。

 確かに私は、服飾にしろ食事にしろ、一度財布の紐が緩んでしまったが最後、高価か低価かはうっちゃって、その物欲のままに買い漁ってしまう嫌いがある。しかしながら、ブティックやレストランの入り口に掲げられたロゴに宇宙文字を見たことはないし、その輝きをライトアップの中に見出したこともなく、故に私は、兜の緒まで緩めているつもりはないのである。……と、そんな自己プロデュースを、今こうして真摯に()てるのは、やはりあの黒き指輪が、彼女の手に落ちたからに他ならない。結局あの時の私は、ブランド志向だった。あのブランドの真なる価値を――見定めることができなかった。そしてやはり、プレミアという分厚い壁に、後々首の骨を痛める羽目に陥った。

 そんな彼女が引き起こしたからこそ、あの事件もまた――ジャスティスリッパー事件もまた、見返されて価値が湧く、さながらゴッホの絵画の如き事件であった。あの時の世間は、都会をも巻き込んだペイントボマー事件よりも、似非都会に限定されていたジャスティスリッパー事件についてこそ、大いに騒ぐべきだった。そしてあの時の相沢仁もまた――通り魔事件がジャスティスリッパー事件に熟す前に、渋かろうが固かろうが、捥いでしまうべきだったのだ。

 あのブランドもあの絵画も――

 見る目があろうがなかろうが――

 確かに価値はあったのだ――

 もし見る目があったのなら――そんなことが思えてならない。

 妄言多謝。歴史に『IF』を用いるだけで、賢者ぶっていても仕方がない。歴史は過去であるが、固く存在する事実である。そのダイヤをもってして、これから掘り出すダイヤをより輝かしく磨き上げることこそ重要だろう。今の私は、そう考える。将来の私は――どう考える。


 では、ブラックリング事件最後の事件――『サックガーデン占拠事件』を語らせていただこう。


 人の夢、儚いなどと、言わせるな――。



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