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昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴る。新宿で起きた二件の爆発騒動は、何者かによる爆発事件と警察が認めるところとなったが、ここ加護江市は、いたって平和で平凡だった。今日もまたこれといったイベントもなく、半日が経過したことを、喜びもせず憂いもせず、相沢仁は、机の上に弁当の包みを広げていた。向かい合わせた机の向こうには、悪友こと岡島秀一がおり、コンビニのビニール袋から、缶コーヒーとサンドイッチを取り出した。それで足りるのか。どう見てもBMI値が22に届いていない、善く言えばモデル体型、悪く言えばモヤシ、そんなシルエットを前にして、煩いはしないが、そんな風に仁は思う。こちらの視線に気付いた秀一が、プルタブを引きながら小首を傾げた。
「何だ? この缶コーヒーが欲しいのか? でも仁ちゃん、ブラック飲めたかよ?」
仁は首を振る。
「じゃあ何だ? このサンドイッチが欲しいのか? でもでも仁ちゃん、トマト食えたかよ?」
仁は再び首を振る。飽食文化の排泄物のような扱いを受けるのはごめんなので、さっさと弁当箱の蓋を開け、箸箱から箸を取り出した。
しかし―その箸は、進まないどころか開きもしない。
「食欲がねぇのか? そんな真心こもった愛妻弁当を前にして、贅沢な野郎だなぁ」
「愛妻? 誰のことだ。いや、答えなくていい。ただ拳を食らえこの野郎」
「ケケケ、期待通りのリアクションありがとさん。でもよ、仁ちゃんの妻じゃなくて親父さん、相変わらず料理が上手いのな。夕食のおでんでさえコンビニで買っちゃうような、そこらのお忙しいマダムにも、少しは見習ってほしい腕前だぜ」
秀一に追随する形で、仁もまた、弁当箱の中身を覗き込む。五目ご飯を主食に、豆腐ハンバーグに焼サバ、南瓜の煮つけにほうれん草の胡麻和え等々、春の野山を連想させるような、彩も栄養も華やかな弁当だった。父は調理師ではなく外科医である。彼が捌くのはサバではなくクランケである。わざわざこんな手の込んだ代物を拵えなくても、それこそそこらのマダムみたいに、コンビニ弁当で済ませるようにと、息子に五百円玉でもわたせばいい。その息子である仁は、そう思う。ゴーヤでも食べているかのような顔で、だし巻き玉子を咀嚼する。マダムだろうがムッシュだろうが――たった一人でも、そんな人間がいるのなら、全くもって問題ない。舌鼓は、桴ではなく蜂が鳴らすものだと思っている、そんな第二反抗期真っ只中の少年は、パンクしたマニフェストを込めるようにして、半分以上も残っている弁当箱に蓋をした。
「小食なこって。そんなに恋の病は重いのかぁ?」
「そんなに俺の悩みは少ないと?」
「そうだなぁ。ただの一つの、やっぱり小せぇ悩みだぜぇ」
「ああ、そうかいそうかい、悪かったな」




