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早送り    

作者: ありんこじゃよ。

「すいません。ただいま1時間待ちになっております。おまちなりますか?」

「はい、それでお願いします。」


そういって、大学で同じゼミになった佐藤は返事した。

内心、ため息が出たが、しかたがない。

今日は、今大阪で一番人気のラーメン屋に来たのだからな。

小さい頃は、こうやってご飯で待つなんてことは絶対に考えられなかった。

なぜなら、こういった待ち時間が大嫌いだからだ。


しかし、こうやって待つことになんの苦痛を感じなくなったのは、小学5年生の遠足の時だった。

その日は、おれは次の日の遠足が楽しみでなかなか眠れなかった。

早く明日が来ないかそればかりを考えていた。

だから、こう思ってしまった。

(動画や映画みたいに時間が早送り出来たらな)

そう考えて、目を閉じて、目を開けると目を疑うようなことが起こった。

カーテンからは光が漏れ、リビングからは母親がお弁当を作っている音が聞こえたのだ。

ふと目線を時計に移すと、指針は7時を指していた。

目をつぶってほんの一瞬で朝になっていたのだ。信じられなくて、つい頬をつねってみたが、痛くて涙が出てくる。


「いってー...夢じゃないのか。」


この日の出来事が俺の人生を激変させた。

この現象は頻繁に起きた。

好きなゲームの発売日、長期休暇までの時間、その他いろいろ楽しみにしていたことがある日を待ち望んでいるときに目をつむり、早く過ぎろと考えると、次の瞬間にはその日になっているのだ。

勿論、その間にあった出来事は、もれなく記憶している。ただ時間を飛ばしていうより、気づく間もないぐらい早送りをしているのではないかと考えた。ビデオで例えるなら、スキップではなく、早送りだ。

そのため、俺はこの能力のことを「スキップ」ではなく、「早送り」と呼ぶことにした。


この能力を得てから、俺の人生は全く退屈することがなくなった。

退屈だ、暇だと思えばすぐにこの能力を使った。

受験勉強を「早送り」し、授業も「早送り」した。


そうして過ごすうちに、すぐに中学、高校、大学まで進んだ。


そして、今に至る。


そんな俺が、素直に1時間待つわけはなく、佐藤と店員との会話を聞いて、すぐに目をつむり1時間立つことを考える。

そして、目を開けると店員が俺たちを呼びに来た。


「2名でお待ちの佐藤様いらっしゃいますかー?」

「はーい、ここにいまーす。」


それから、時間はさらに加速した。

あっという間に4年になり。

就職活動をし、論文を書き、卒業。

就職、交際、結婚、妻の出産、両親の葬式、退職。

そして、俺はガンで入院した。

医者に余命は3か月だと言われた。


さすがの俺も、死ぬまでの時間は「早送り」できなかった。


それからの日々は、すごく充実したものとなった。

妻や子供、孫といった家族が見舞いにきたり、

何十年ぶりの友達とも再開した。彼らと語らう時間はとても素晴らしい時間だった。

また、彼らと話す以外の時間も小説や新聞などの趣味や、はたまた自分が死んだ後はどうなるのかなどの哲学的なことも考えたりした。

時間は昔感じたほど長く感じなかった。むしろ足りないぐらいに短い。日に日に過ぎる時間の流れを感じながら、「時間よ止まれ」と念じたが止まらなかった。


こうして、過ごしてるうちに3か月はあっという間に過ぎ去った。


多分、私は今日死ぬのだろう。その予感があった。

そう思うと、涙が止まらなかった。なぜ、自分は「早送り」してしまったのだろう。

もっと長く、かみしめて過ごせばよかったと考え、後悔ばかりだ。


ほかのみんなの人生が映画であれば、私の人生は映画のダイジェストでしかないのだろうと考えるとさらに涙がでてしまう。



愚かな私から、過去の私に言葉を伝えれるなら、焦らずゆっくり生きてゆけということあだろう。


意識がどんどんなくなっていく。


周りで皆いろいろ言っているがそれも聞こえなくなり。


そして、、、




 終わりますか?

▶ リプレイしますか?

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