4.変化
学校へ行き、授業を受ける。
授業は一般教養と呼ばれる国数理社や美術、音楽などの分野まで多岐にわたるものと、個別教養と呼ばれる生徒の能力値に合わせて受けるものがある。
一般教養は生きていく上で最低限必要な知識を教えられる。
個別教養では生徒の能力値をランク付けし、AからEまでのグループに分かれて行う。
Aが最も優れていて、Eが最も劣っている。
能力値が高いものと低いものとで同じ内容を教えるのは合理的ではないとはいえ、これで生徒の優劣がはっきり区別されるのだから嫌な制度だ。
もちろん俺はランクEにいる。
正直なところランクEの授業ですらついていくのは厳しい。
それほど能力値オール1は劣っている。
まあランクEのグループメンバーはあまりやる気がないやつが多いし、先生もそんなに熱を入れて教えることもない。
いわゆる落ちこぼれだ。
「何考えてんだ?」
ぼーっとしていた俺に対してそう声をかけてくるのは、小学校からの長い付き合いである御堂翔だ。
「いや、本当に個別はしんどいなと思って」
「それは同感。でもまあ蒼人は特にそうだろうな」
そう言って苦笑する翔。
昔ながらの付き合いだから俺のことはよく分かっている。
「ほら、お前ら、サボってないでちゃんとやれよー」
先生が気のない声をかけてきたので、俺と翔はそれぞれ展開武具を手に素振りする。
展開武具とは特殊な武器で、闘技場という見えない特殊なエネルギー派が膜状に張られた場所でしか使用できない武器だ。
俺の展開武具は剣、翔の展開武具は槍だ。
これは普段は待機状態と言ってリストバンドとして持ち運びでき、闘技場に入るといつでも武器として展開できる。
そして闘技場は学校や決められた場所にしかないので、普段は使用できないようになっている。
これによって展開武具による事件はないので、安全安心ということで誰でも購入できる。
この世界の人々はほとんどの人が会社や自営業で働いているが、より優れたものはスポーツ選手のように自分の能力値と武具とを駆使して試合をし、生計を立てている人もいる。
それがプロだ。
この世界では一番名誉で誰もが憧れる。
まあ俺みたいなやつは一番縁遠いが、憧れるくらいはいいだろう。
「また考えごとか?」
「ん、ああ」
「今日はやけに多いな」
「毎日毎日つまんないからかもな」
「それも同感」
何てやる気のない会話をしているとそれは起こった。