3.経験値
これまで数えきれないほど見てきた自分の能力値。
順に上から確認する。
そこにはやはり全ての能力値がオール1と表示されている。
しかし最後にいつもと違う表示があった。
ーーーーー能力値ーーーーー
・力:1
・体力:1
・敏捷:1
・運:1
個人能力「経験値」を獲得出来ます。
獲得しますか?
「はい」
「いいえ」
残り時間:30秒
ーーーーーーーーーーーーー
突然のことに驚いていると、残り時間が刻一刻と減っていく。
「え、あ、え!?」
残り時間が10秒を切った頃に慌てて「はい」を押す。
すると「経験値を獲得しました」の文字とともに、自分の能力値に変化が起きた。
ーーーーー能力値ーーーーー
・力:1
・体力:1
・敏捷:1
・運:1
・経験値:レベル1
ーーーーーーーーーーーーー
「……思わず獲得してしまったけど、これってあれだよな?」
個人能力とは、誰にでも与えられている能力値とは別で、それはある一定の条件と個人の能力、そして運もあるがそれらが上手く噛み合った時に獲得できるもの。
そう授業では習ったが、実際に見たことは当然なかったし、周りに持っている人もいない。
「個人能力って、持っている人はかなりレアって話だったし、そんなもんが何で俺に……?」
しかも経験値って何だ?
経験値が反映されたものが能力値じゃないのか?
「これがあるとやっと能力値が上がるとか?」
それなら個人能力を得てやっと常人レベルってことだ。
普通の人は生きているだけでもある程度能力値は上がるのだから。
それが個人能力を使ってやっと普通の人と同じとは、やはり落ちこぼれということだろう。
「はぁ……こんなの、誰かに言えやしない」
どうせバカにされるだけだ。
そう思うと、せっかく現れた個人能力も全く喜ぶ気になれない。
それどころか、自分の無能さをより際立たせただけだ。
「……でもまぁ、これで俺もやっと普通の人並みには生きていけるわけだ」
そう前向きに捉えると、先ほどまでとは打って変わってかなり未来が明るくなる。
能力値だけでなく個人能力も劣っているが、それでも今までよりは確実に良い。
「よし、明日からも頑張ろう」
そう思うと睡魔が襲ってきて、意識を攫っていこうとする。
俺はそれに逆らわず、そのまま眠りの世界へと落ちていくのだった。