大戦の予兆 第2.5章 新天地へ(おまけ)石垣+aの災難
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
グアム・アンダーセン空軍基地の駐機場。
「さて、今日は思い切り、飛ぶぞぉぉぉ!!」
少年のように、はしゃぐのは嘉村義彦3等空佐だった。
「上からの許可はもらった。演習空域は、好きなように飛んでいいそうだ。高度も速度も自由だ」
高居直哉3等空佐が、自衛隊手帳を開きながら、つぶやいている。
「やったぁぁぁ!!!」
「あのぉ~・・・」
「すみません・・・」
嘉村と高居の後ろで、飛行服と飛行装備一式を装着した、石垣と伊花の2人が引き気味に声をかける。
「やっぱ、模擬戦は、外せないな!」
「当然だ!」
「「・・・・・・」」
どうやら、聞こえていないようだ。
「あの、すみません!」
石垣が先ほどよりも声を高くして、2人に声をかけた。
「なあ、直哉!模擬戦には、制限ある?ない?ある?」
「安心しろ、きちんと許可は取っているし、整備長にも許可を取った。模擬戦には、一切の制限も規制も無い。本格的な実戦が経験出来るぞ!」
「やったぁぁぁ!あの整備長は、おっかねぇからな!」
「あの!!すみません!!」
伊花が、意を決して、大きな声で2人に声をかけた。
「「?」」
嘉村と高居が、振り返る。
「どうした?」
高居が、聞いた。
「何故、我々も飛行服に、着替えさせられたのですか?」
石垣が、尋ねる。
「それは・・・な」
「それは・・・だな」
嘉村と高居が、顔を見合わせる。
「「俺たちが、お前たちを乗せると、言ったからだ!!!」」
2人の声が、重なる。
「そ、それだけ・・・ですか・・・?」
「そうだ。俺たちの階級は、お前たちよりも上だが、公務の上では石垣1尉は、俺たちの上に位置する。そのために空について、どういうものか、知って貰おうと思ってな」
高居が説明する。
「そういう理由ですか・・・」
「俺は、そうだ・・・だが、こいつは違うと思うぞ」
「「えっ!?」」
高居の言葉に、石垣と伊花が固まる。
「だぁ~!?何で、F-15シリーズでは無く!F-35Bに機種転換するんだよ!!F-35シリーズは、マッハ2以上の加速が出来ない!あの音速を越える快感を得られないだろう!!ぐわぁぁぁぁ~!!!」
「ついに、爆発した・・・」
嘉村の爆発に、高居がつぶやく。
「確かに!F-35シリーズは、ステルス性、機体性能は、F-15J改を上回るけど!けど!F-35は、F-15に匹敵する力強さが無ぁぁぁぁい!!!」
嘉村の爆発に、高居が消火活動を行う。
「F-35Bも操縦してみればF-15J改やFXにも匹敵する操縦性能だ。いい事も見つけられる。それに・・・だから、今日はF-15DJ改に搭乗出来るだろう。空も自由に飛行出来る。こんないい話は無い」
「ま、まあ、そうだけど・・・」
「「・・・・・・」」
石垣と伊花の2人は、引き気味で、その光景を、眺めているだけだった。
「ワン!」
「ワン!ワン!」
石垣と伊花の側に、ボーダーコリーの伝助と、小型犬のジャッキーが駆け寄って来る。
ジャッキーは、放浪していた時に伊花と出会い、以来、伊花の相棒のような存在となっている犬である。
茶色のふさふさの毛並みと、ふさふさの尻尾、少し短足なのがチャームポイントである。
犬種は不明で、スピッツのような顔と毛並み、ウォルシュコーギーのような体型をしている。
伊花は、ジャッキーを抱き上げた。
「怖いよぉ~ジャッキー・・・でも、誰も代わってくれないから、俺、頑張るからな!ちゃんと待っていてくれよ~」
「頑張って!」と、激励しているのか、ジャッキーは伊花の顔を、ペロペロと舐めている。
それだけで、伊花がホワ~ンとなっている。
「・・・・・・」
伊花とジャッキーの様子を見ていた石垣が、伝助を見る。
しかし、伝助は、プイッ!と顔を背ける。
ガーン!
石垣は、がっくりとなる。
「ワン!」
伝助が、一声吠える。
それは石垣では無く、嘉村と高居にであった。
「おい!でっかい犬じゃねぇか!?そいつを近付けるな!」
嘉村が、駐機しているF-22A[ラプター]の影に隠れる。
「俺は、大きな犬は苦手なんだ!」
いきなり、伝助が嘉村の側まで猛ダッシュで詰め寄る。
「いやぁぁぁぁぁ~!!!」
嘉村は、全力で逃走を開始する。
「ワン!ワン!」
「何で、追いかけてくるんだよぉぉぉぉ~!!!」
伝助は、必死で逃げる嘉村の後ろに、ピッタリとくっ付く感じで、跳ねるように走っている。
追い付かない、ギリギリの距離を保って、追いかけるのを楽しんでいるようだ。
「・・・絶対、遊んでいるな・・・」
「・・・多分、苦手と言われたのに、カチンときたのではないかと・・・」
「呑気に話していないで、助けろぉぉぉぉ~!!!」
嘉村と伝助の鬼ごっこが、しばらく続く・・・
「ヤッホー!!最高だぜ!!」
「ひぃぃぃ!!」
F-15DJ改の前席に座る嘉村が、叫び声を上げる。
その後部座席で、断末魔の悲鳴を上げるのは、石垣であった。
「おい、おい。あまり張り切るなよ。お客さんを乗せている状況なんだからな」
「わぁぁぁぁ!!」
ウィングマンとして配置についている高居が、少年のように、はしゃぐ嘉村を窘める。
その後部座席では、伊花が同じ様に悲鳴を上げている。
「このぐらいは平気、平気!何たって、俺たちの上官になる奴なんだぜ。しっかりと俺たちの戦い方を把握して貰わないと・・・いざという時に、俺たちの力を発揮できないだろう!」
「まあ・・・確かにな。しかし、あまりにも激しくやって、伸びてしまったら、それこそ本末転倒だろう?」
「それも、そうだな・・・チクショウ!この色ボケ1尉め!何で、こんな奴に、あんな美人や可愛い子が、くっついているんだよ!」
「それが本音・・・か?」
嘉村の、だだ漏れの心の声に、高居が呆れたように突っ込む。
「だって、そうだろう!俺は30年間、女性とは無縁だったんだぞ!なのに、こんな情けない奴に、アメリカ人の美女や、中国人の美女、日本人の美女、日本人の可愛い子、こんな羨ましい話があるか!うわぁぁぁ!!!」
嘉村機が、さらに増速する。
「まあ・・・俺たちにも、花が付いて来たがな・・・」
高居は、遅れる事も無く嘉村機に速度を合わせる。
「それと、これとは別だぁぁぁ!お前は、羨ましく無いのか!?」
「まあ、羨ましいと言えば、羨ましいが・・・」
「・・・が、何だ?」
「ハーレムは、面倒な気がする」
「ハーレムだぞ!ハーレム!俺のすべてを受け入れてくれる女性が何人もいたら、最高に素晴らしい!!」
「お前が好きな異世界転移ものや、異世界転生ものの小説で、よくあるだろう。ハーレムになると、主人公は女性たちの、ご機嫌とりをするのに苦労する。そんな苦労を経験するなんて、俺は御免だね」
「あぁぁぁ!!?よし、ここで模擬戦だ!どちらの主張が正しいか!勝負だ!!」
「主張という主張は、してないような気がするが・・・」
「うるさい!模擬戦だ!!模擬戦!!」
「わかった、わかった」
『ファルコン1、イーグル1。お取込み中のところ、すまないが、仕事を頼まなければならない』
急に、管制塔からの通信が入る。
「何だ!?」
『国籍不明機が1機、接近中だ。貴官たちが一番近い。現場に急行し、確認してくれ』
「ファルコン1。ラジャ」
「イーグル1。ラジャ」
嘉村機が、右に旋回する。
高居機が、それに続く。
アンダーセン空軍基地司令部から誘導を受けて、目的の空域に接近した。
「こちらファルコン1。国籍不明機をレーダーで捕捉した!これより、目視による確認を行う」
嘉村が、操縦桿を押した。
嘉村機であるF-15DJ改の機首が下がり、ぐんぐんと高度を下げていく。
「こちらファルコン1。目標視認した!」
「こちらイーグル1。こちらも目標を視認した!」
嘉村と高居の視界に入った国籍不明機は、MQ-9[リーパー]だった。
「MQ-9[リーパー]?」
「いや違う。あれはCH-4だ!」
嘉村のつぶやきを、高居が否定する。
嘉村がよく見ると、MQ-9に特徴的なY字尾翼が無い事に気付いた。
「イーグル1より、司令部。目標は、CH-4と確認した。この空域に、サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟航空宇宙軍が行動する飛行予定はあるか?」
『CH-4?サヴァイヴァーニィ同盟軍だと・・・?』
管制官たちが慌ただしくなるのが、フライトヘルメットに内蔵されている通信機から伝わった。
その時、CH-4が大きく旋回し、空域を離脱しようとした。
「何だ?」
嘉村が、つぶやく。
そのままCH-4は、空域を離脱して行った。
CH-4の領空侵犯の理由は、判らないが・・・
何か、きな臭いものを感じる。
嘉村は、後ろが静かなのに気が付いて、振り返る。
あまりの急展開に、石垣は目を回して気絶していた・・・
大戦の予兆 第2.5章をお読みいただきありがとうございます。
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次回の投稿は2月13日を予定しています。