大戦の予兆 第2章 新天地へ 石垣の場合 後編 新石垣チーム
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
最近のニュースで、いろいろな事件が報道されていますが、容疑者たちの動機を聞いていると、どうして?と問いたくなります。執筆中にニュースを流し見ていますので、いろいろな事件や事故の話を聞きます。嫌な事件や事故が少しでも減る事を願っています。
まさかの、桐生まで配属されて来るとは・・・
確かに桐生が、防衛局特別勤務者として配属された、一般の民間人では無く、実は警察官だったという事は、とある事情で知る事になったのだが。
桐生が、本来の職務に戻る事になったとしても、驚く事では無いはずだが・・・正直、驚き以外の何物でも無いが・・・
それよりも・・・これで、石垣周辺の女性比率が、さらに爆上がりになった。
(兄さん!俺は、ハーレム疑惑を払拭したいのに!これじゃあ、全然意味ないんだけど!!)
これでもかというばかりに、女性の数が増えていく。
「あれ?どうしたの、石垣君?」
そんな石垣の気持ちを、知ってか知らずか・・・口を開けて呆然としている石垣を、桐生は下から不思議そうに、上目遣いで見上げてくる。
「・・・・・・」
その仕草は、見ようによっては、メチャメチャ可愛いのだが(因みに、桐生は石垣の兄より年上)・・・一瞬、ドキリとなって石垣は、慌てて首を振った。
「間違っても、桐生さんが可愛いからって口説こうと思っちゃ駄目だよ。桐生さんは、俺より年上だからね」
いや、知っています・・・
石垣の様子を見て、何か勘違いしたのか、及川が忠告をしてくる。
そして、自分の方が年下だと、強調する事も忘れていない。
「いやねぇ。そんな訳無いですよ、及川さん。久し振りだったから、ビックリしただけだよね。石垣君」
「は・・・はい・・・まあ・・・」
しどろもどろに、石垣は答えるしかなかった。
「それよりも桐生さん、陽炎団警察派遣隊のメンバーを、紹介してもらえる?」
桐生に、意識を全部持って行かれたせいで、気付かなかったが、室内には数人の男女がいる。
「はい、もちろん」
石垣チームの面々を部屋に招き入れると、桐生は警察関係者の面々と、対面させた。
「まずは・・・」
最初に桐生が紹介しようとしたのは、石垣が旧知の警察官だった。
「国家治安維持局治安部から派遣されて来た、森樹巡査部長と荻宮佳織巡査部長」
「・・・新谷巡査部長?」
まだ、日米開戦が始まっていなかった時期に、石垣は陽炎団に出向した事があったが、その際に、陽炎団から説明役(監視?)として付けられたのが、新谷こと森だった。
石垣の防衛大学時代の同期だったそうだが、石垣に心当りは無く、後に名簿を調べても、該当する人物を、見つけられなかった。
それに付いては、さらに後になって、新谷というのが偽名であると、わかったのだが・・・
「・・・?あっ、そうか・・・森君の本名を、知らなかったんだね」
「・・・・・・」
森と荻宮は、無言で石垣たちに、軽く頭を下げる。
「またまた、美人さんの登場だね。良かったね、石垣君」
荻宮を見て、小松が軽口を叩く。
「どういう意味だよ!?」
「そのまんまの、意味!」
「なんで、そうなるんだよ!?」
「あっ、無理、無理。森君と荻宮さんは、恋人同士だから。間違っても略奪をしようなんて思わないでよ。石垣君も、アイちゃんも!」
言い争いを始めそうな石垣と小松に、桐生が釘を刺す。
「「どうして、そうなるの!!?」」
2人同時に、同じ言葉を叫ぶ。
「えっ?・・・だってぇ~・・・石垣君は、女の子大好きだしぃ・・・アイちゃんは、自分好みの男の子には、彼女がいようが平気で、ちょっかい出すじゃない?」
「酷いです!私が好きなのは、石垣君だけなのに!!」
「桐生さん!俺は、好きになった女性以外、目もくれません!!そんな節操無しじゃ、ありません!!」
「本当かなぁ~?」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ2人に、桐生は少し意地悪な表情を浮かべている。
「警視正。ここは、幼稚園ではありません。悪ノリは程々に願います」
冷静というか、冷淡というか・・・
極めて事務的な口調で、森は突っ込みを入れる。
「ん~と、気を取り直して・・・」
遊んでいる真最中に、親に呼ばれて不満になる子供のような表情を浮かべたものの、桐生は、すぐに真顔に戻った。
「それと、こちらのモアイ像みたいな、厳つい顔をしているのが、2人の直属の上司の警部で、サッシー!」
「宮島だ!!!」
笹川こと、宮島勝義警部が怒鳴る。
「モアイって何だ!?それに、勝手に付けた愛称で呼ぶな!!」
「モアイって、チリ領のイースター島にある人面を模した石造彫刻だよ。知らなかった?それに・・・いつものように、ネス湖のネッシーみたいに言うなって、言わないの?」
「もう、絶対に言わない!!」
双方とも、生真面目に応対しているが、傍から見れば、コントか漫才にしか見えないのだが・・・
「は・・・ははは・・・」
ある意味、まったく変わっていない桐生に、石垣は乾いた笑いを浮かべるしかない。
及川から聞かされた、トンデモナイ経歴の持ち主であっても・・・それが桐生では、威圧感も何も無く、緊張感もあったものでは無い。
まあ、気は楽ではあるが・・・
「さぁ~て、次、行ってみよう~!」
何だか、変なノリで桐生の紹介が続いていく。
桐生は、生活安全課から派遣されて来た、警部補と巡査、SATを含む警備課から派遣されて来た巡査部長と、彼らの経歴を含めて、次々と紹介していく。
「・・・あれ?」
そのうちの1人である、生活安全課の巡査の名に、石垣は、聞き覚えがあった。
糸瀬誠一郎巡査・・・石垣は、記憶の糸を辿る。
「あっ、糸瀬君のあだ名は、『ドボン巡査』ね」
「・・・思い出した・・・」
桐生に言われて、記憶の糸が繋がる。
今から3年前・・・1941年(昭和16年)春。
満州帰りの帰還兵が起こした、自殺未遂事件。
入水自殺をしようとする自殺志願者を、思い止まらせるために、糸瀬は川に飛び込むという、身体を張った説得を試み、見事成功するのだが・・・それより前。
自殺志願者の通報を受けた際、糸瀬は陽炎団本部への緊急連絡を行ったのだが、その際、慌てていたため、統合省保安局への直通回線にて、通報してしまったのだった。
当時、大日本帝国内では、国内で暴動や反社会的なテロ活動が頻発していた時期でもあったため、事態を重く見た保安局は、関係各所へ非常事態を知らせる通信を送ってしまう。
そのため、緊急対応部隊である、破軍集団陸上自衛隊第1師団第1普通科連隊には、実弾が配られ、陽炎団各機動隊には、出動待機命令が下され、海上保安本部には、東京湾内での遭難者捜索救助命令により、巡視船が緊急出港。
小笠原諸島近海で演習を行っていた菊水総隊第1護衛隊群に、演習の即時中止と遭難者捜索命令が下るという、とんでもない事態が引き起こされた。
後に、真相が判った結果・・・統合省保安局長官である白河勤長官と、陽炎団団長である本庄慈警視監が、謝罪会見で頭を下げるという事に至った以外は、特に何も無かった。
この裏には、大日本帝国、日本共和区の象徴であり国家元首でもある、さる、やんごとなき身分の方の取り成しがあったとか、なかったとか・・・で、ある。
それは、さておき・・・
「それは、もう忘れて下さい~!!」
当の糸瀬は、情けない声で懇願していた。
「でも、君は有名人になっちゃった訳だし・・・その結果が、フィリピン独立にも一役買った訳でもあるし。誇ってもいいと思うよ。私個人としては、お兄様の謝罪会見なんて、絶対見られないイベントを見られて、ラッキーって思っているし・・・」
それは、絶対、褒め言葉では無い、褒め言葉である。
取り敢えず、一通りの紹介と挨拶が終わった。
「・・・後、最後にウチの責任者の、統合任務隊副司令官の・・・」
そう言いながら、桐生は執務机の方を振り返った。
「ニャー」
執務机の上には、一匹の茶トラ猫が、デーンと鎮座している。
「・・・猫?」
「わぁ~カワイイ!!!」
早速、カワイイもの好きの、側瀬が反応しているが・・・
「・・・副司令官が・・・?猫・・・?」
ある意味、堂々とした風格はあるが・・・あり得ない。
「テッちゃん!警視長は、どこへ行ったの?」
「ニャー」
「知らないって、いや、困るんだけど・・・」
「ニャー」
「どっかに隠れているんじゃないのって、子供じゃないんだから・・・」
そもそも、「ニャー」という鳴き声だけで、桐生と会話が成立している事が、あり得ないが・・・
執務机の引き出しを開けたり、ゴミ箱の蓋を開けたりと、桐生の探している場所も、あり得ない。
「・・・色々と、おかしいという事を、誰か指摘してやれ・・・」
ため息を付いて、宮島が及川を見る。
「それは、言い出しっぺの仕事では?」
及川は、桐生の奇行に付いて、一切、言及しないつもりのようだ。
2人は、示し合わせたように、石垣に視線を向ける。
「・・・俺?」
自分を指差してから、石垣は周囲を見回すが、全員が、石垣と視線を合わせる事を避けて、そっぽを向いている。
「・・・・・・」
仕方が無い。
「・・・あの・・・桐生さん・・・?」
執務机の一番下の引き出しを覗き込んでいる桐生に、声をかける。
「あっ!デイジーちゃん見っけ!こんな所に隠れていたんだ!」
ピョン!と、何かが引き出しの中から、桐生の側に近付いた石垣の顔面に飛びつく。
その、物体は・・・
「ぎゃあぁぁぁぁ!!!蜘蛛ぉぉぉぉぉ!!?」
石垣の口から、この世のものとは思えない絶叫が響く。
「森巡査部長!!取って、取って!!」
一番近い場所にいる森に、助けを求める。
「・・・わかった。じっとしていて」
石垣の顔面に張り付いているタランチュラに向かって、森は、自分の左脇のホルスターからグロック19を抜いて、構える。
「それ!洒落に、ならないでしょうが!!?」
「・・・荻宮さんに、毒牙を向ける害虫は、駆除するに限る!」
森に、害虫認定されてしまった石垣は、今度は、糸瀬に救いを求める。
「糸瀬巡査!!何とかして!!」
「わかりました」
糸瀬は、特殊警棒を構えている。
「いや、それでどうするつもり!!?」
「僕の恥ずかしい過去を、知られてしまった以上、この一撃で、きれいさっぱり忘れてもらいます!」
危険な光を瞳に宿している、糸瀬。
「ヒィィィィ!!!」
冗談とは思えない2人の雰囲気に、石垣は恐怖を覚えた。
「はいはい。スト~ップ!!2人共、そ~いうアブナイものは、ポケットナイナイしましょうね。でないと・・・マジで首、刎ねるよ!」
桐生が、森と糸瀬に優しく声を掛けて、窘める。
ただし、最後の一言は1オクターブ程、音程が下がっている。
「・・・・・・」
「ヒッ・・・」
森と糸瀬は、桐生の言葉に素直に従った。
「部下に、パワハラは感心しねーぞ。お前のそれは、パワハラを遥かに超えているが・・・まあ、成層圏に到達するぐらいには・・・」
「そんな事ないもん!優しく注意しただけだもん!」
宮島の言葉に、すかさずブリッコ言葉で反論をする桐生であったが、桐生の本性を知る者からすれば、あの最後の一言は、途轍もなく恐ろしいものであるという事がわかる(一部は除く)。
デイジーちゃんに、顔面に張り付かれたまま放置されていた石垣だったが、桐生がデイジーちゃんを手招きした事で、解放された。
デイジーちゃんは、桐生の手から腕を伝い、肩の所で丸くなる。
「な・・・何なんですか・・・その蜘蛛は・・・?」
蜘蛛の恐怖から解放された石垣は、弱々しい声で苦言を呈す。
「私のペット!」
「・・・・・・」
「色々と訓練をしてみたんだけど、デイジーちゃんには向いていないらしくて・・・だから、今は私の可愛いペット。でも・・・石垣君って、先天的に女性を惹き付ける能力があるのかな?デイジーちゃんに、気に入られたみたいだよ?デイジーちゃんは、レディだから・・・」
「うえっ!?」
とんでもない事を、言われた気がする。
石垣は、子供の頃から蜘蛛の類が嫌いである。
いくら雌(女性)であるとはいえ、蜘蛛に好かれるのは御免被りたい。
しかし・・・
「・・・納得」
「・・・だろうな」
「そーだね」
「なるほど・・・つまりは、生まれついての女ったらし・・・という訳なのね」
「ワン!」
メリッサ、任、側瀬、小松、伝助。
石垣チームの面々が、ウンウンと頷いている。
「違う!違う!!違う~!!!断じて、違いますっ!!!!」
全力で否定するものの、居合わせる男性陣から、ジトーという冷たい視線を注がれている。
「何を騒いでいる!静かにしたまえ!」
一喝する声が響き、50代と思われる警察官が、入室して来た。
空気が一瞬で変わり、桐生以下、居並ぶ警察官が一斉に敬礼をする。
「こちらが、及川さんと同格の日本統合任務隊副司令官の、国見郁也警視長」
さっきまでの雰囲気とガラリと変わり、厳格な警察官の顔で桐生は、自分の直属の上司である国見を紹介する。
(・・・やっぱり、何だかんだで、桐生さんは、警察官なんだな・・・)
大日本帝国統合軍省統合作戦本部指揮母艦[信濃]で、酒保店長として若い水兵や下士官に、母親の様に慕われ、剣道教官として新兵の鍛錬を指導していた頃とは、別人の様である。
石垣も、剣道の指導ではビシバシと扱かれたが、石垣が悩み事相談を持ち掛けても、嫌な顔1つせずに話を聞いてくれ、アドバイスをしてくれたりした。
桐生も、兄の様に公を優先するとなると、今までのように気安く話す事が、出来なくなるかもしれない。
そう思うと、少し寂しい気分になる。
「警視長、こちらが・・・」
桐生が、石垣たちを紹介しようとした。
「知っている。統合任務隊司令官の弟君と、新世界連合軍総参謀長のご息女、連合支援軍総司令官の元副官、統合幕僚本部監察監のご息女だろう。いちいち紹介は不要だ」
無表情のまま、国見は答えた。
「それに、後1人は君の子飼いの元部下。それ以上、説明は必要かね?」
「不要ですね」
確かに、今さら・・・という表情を、桐生も浮かべている。
しかし・・・石垣にとっては、ここでも兄の影が付いて回るというのは、いつもの事ではあっても、気分は複雑になる。
「最初に言っておくが、私は君たちを特別扱いするつもりは無い。肝に命じておくように。以上だ」
「「「はい!!」」」
と、答えたものの・・・石垣は、内心で厳格で面倒臭そうな人だな・・・と、思った。
いちいち言う必要が無い、石垣や、メリッサたちの兄や父親、父親のような人の事を持ち出して牽制してくるのは、どんな意図があるのだろうか。
石垣の視界の片隅で、桐生がヤレヤレといった感じで、肩を竦めていた。
警察派遣隊への挨拶が終わり、及川に連れられて部屋の外に出る。
「はぁ~・・・何だか最後に、もの凄く緊張を強いられたような・・・」
深呼吸をしながら、石垣は、つぶやいた。
「え~と・・・後、何か・・・大事な事を伝えるのを、忘れているような・・・」
及川が、しきりに首を捻って考え込んでいる。
「何だったかなぁ~・・・」
「忘れるって事は、たいした事ではないんじゃ無いですか?」
側瀬が、口を挟んで来る。
「・・・・・・」
暫く、腕を組んで考え込んでいた及川が、ハタと手を打った。
「そうそう、石垣君。君のチームに新しく配属される事になった人がいる」
「また、女ですか?」
すかさず、小松が突っ込む。
「自衛官でも、警察官でも無い、民間人なんだけれどね。射撃の腕を買われて、防衛局特別勤務者待遇で、スカウトされた人だ。石垣君も、知っているはずだよ」
「えっ?誰ですか?」
「日本共和区猟友会に所属していた、片倉美鈴さんだよ。近日中にグアムに来るよ」
「えっ!?スズちゃんが来るんですか?メェメェ、スズちゃんだって。2年前に北海道で会った!うわぁ~久し振りだねぇ~!!」
側瀬が、はしゃぐ。
片倉美鈴とは、一昨年のソ連軍による北海道侵攻の際、その戦闘の結果により生息地を追われた多くの羆が、人間を襲うという獣害事件が発生し、調査に派遣された石垣たちと同行する事になった、日本共和区猟友会に所属していた女性である。
確かに、彼女の射撃の腕が相当なレベルである事は、石垣自身も知っている。
だが・・・
(・・・また、増えるの・・・?)
石垣としては、知り合いとはいえ、男の数以上に女性が増えていく現象に、慄然とするしかない。
「ちょっと、石垣君!!?私というものがありながら、また、女を引っ掛けたの!!?この、浮気者!!!」
小松が、石垣の胸倉を掴んで、揺さぶりながら喚く。
「違う!!誤解だ!!の前に、お前は関係ないだろぉぉぉぉ!!」
石垣の絶叫が、響く。
その頃・・・
「ニャー」
「哲~・・・可愛いな~・・・今日は、オジサンと何して遊ぶ?」
執務机の上で座っている茶トラ猫の前で、猫じゃらしを振っている国見がいる。
「あの~・・・哲は、普通のペットじゃなくて、訓練された諜報員ですよ・・・」
その、余りにもシュールな光景に、桐生は突っ込みを入れる。
「いいじゃん。あの連中が来たという事は、洒落にならない事態が発生するという事だし。今のうちに憩いの時間を楽しんでおきたいんだよ」
「石垣君は、トラブルメーカーでは、ありませんよ。まあ、女性絡みでのトラブルならあるかもしれませんが・・・」
「彼には、女性が引き寄せられる、磁石みたいなところは、確かにあるね。これは、俺の勘だが、今まで彼は誰かの影の存在で、目立ったところが見られないが、これから彼が主となって赴く任務では、トラブルの方から歩み寄って来そうなのでね」
「まあ・・・それは、否定しませんが・・・そのために、私がいる訳ですし。石垣司令官との約束である、『石垣君を守る』というのは、未だに有効ですので」
「だからさ、君はどんな手段を使っても、必ず約束は守る。俺は、その後始末に奔走する事になるだろうからね。だから今は、ホッコリとした憩いの時間を楽しみたいのさ」
猫じゃらしに戯れる哲を見ながら、国見は蕩けるような笑顔を浮かべている。
そこには、石垣たちの前で見せた厳格な姿とは程遠い、猫好きオジサンの姿がある。
「・・・君が、危ない事に首を突っ込むと、慈が怒るんだよね・・・」
「「「・・・・・・」」」
自分たちの上司の温度差のある姿に、それを眺めている警察官たちは唖然としている。
「桐生と関わりのある人間は、だいたい変人が多いからな・・・」
宮島が、ボソッとつぶやく。
国見郁也。
警察庁の監察官として長らく『警察の中の警察』として、警察官の綱紀粛正を行ってきた人物である。
その実、陽炎団団長の本庄の母方の従弟であり、桐生の兄的存在の1人。
ぶっちゃけ、桐生親衛隊(桐生に甘々の、シスコン集団)の1人であるという事を知っているのは、宮島だけである。
大戦の予兆 第2章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
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