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大戦の予兆 第1章 新天地へ 石垣の場合 前編 到着

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 IF外伝1ですが、色々と構想を練っています。近日中に執筆活動に入ると思います。

 投稿時期に付いては、また、後書きか活動報告で、お知らせします。

 1944年(昭和19年)2月。


 グアム・アンダーセン航空基地。


 その滑走路に、菊水総隊航空自衛隊輸送機C―130Hが、着陸した。


 C―130Hのタラップを降り、地上に足を着けたのは、石垣(いしがき)達也(たつや)1等海尉、メリッサ・ケッツァーヘル中尉、(レン・)(チェン)(ラン)上尉(大尉)、(そく)()美雪(みゆき)2等海尉、小松(こまつ)(あい)()2等陸尉ら石垣チームの面々と、ボーダーコリーの伝助(でんすけ)・・・である。





 色々と、突っ込みどころ満載のメンバーなのだが・・・


「・・・何で、お前がいるんだ?」


 一番の突っ込みどころである小松に、当然のように石垣が突っ込む。


「もっちろ~ん!私が、石垣君の恋人だからよ!」


「・・・・・・」


 これまで小松は、所属している国家治安維持局防衛部からの派遣という形で、石垣チームに同行する事はあったが、今回から正式に、石垣チームに配属となった(石垣の意思は、完全に無視されている)。


 そこでの、恋人宣言である。


 そこまで堂々と言い切ってしまうあたり、呆れを通り越して、尊敬の念さえ抱いてしまう。


 が・・・


「だから!違う!!断じて、違う!!絶対の絶対に、違う!!!」


 本来なら、事実と違うのであれば、「何、寝言を言っているの?」とでも言って、軽くスルーでもしていればいいだけなのに、すさまじい勢いで、ムキになって全否定の言葉を叫んでしまうあたり、石垣は、真面目が過ぎると言うか、精神的に未熟な部分があるのかもしれない。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 C―130Hの機内でも、延々と無限ループをしていたやり取りに、最初から無視を決め込んでいたメリッサと任はともかく、最初の内は、興味津々で事の経緯を眺めていた側瀬も、飽きて無視・・・といった態度に、変わっていた。





「・・・あの・・・」


 この、永遠に続きそうな不毛なやり取りに、待ったをかけたのは、別の声だった。


「「「!!?」」」


 一斉に振り返った石垣たちの視線に、ビクッとなったような顔をして、慌てて挙手の敬礼をしたのは、あどけなさの残る若い陸上自衛官だった。


「石垣チーム直属護衛小隊兼先遣小隊小隊長の()(はな)睦生(むつお)3等陸尉です。日本統合任務部隊司令官の命により、お迎えに上がりました」


「あぁ・・・それは、どうも・・・」


 答礼をしたものの、むやみやたらに長い名称に、石垣は首を捻る。


「ええと・・・自分の指揮下の小隊って事で・・・合っている?」


 実のところ、石垣に下された辞令に付いては、不可解な部分が多かった。


 新世界連合軍総司令部に新設された、統合任務部隊への配属を命ず・・・というものだが、具体的な説明は、現地で・・・というものだ。


 それこそ、2年前に石垣に対して行われた、大日本帝国海軍厚木航空基地でのドッキリ演習の再来で、グアムに着いた途端に、「ドッキリでした~!!」とばかりに、プラカードを持った人が現れるのではと、疑っていたのだが・・・どうやら、そうでは無いらしい。


 因みに、その時のドッキリ演習のプラカード役は、大日本帝国陸軍の(つじ)政信(まさのぶ)中佐だったそうだが、諸事情や色々な不測の事態が重なった結果、側瀬とメリッサに辻が殴り飛ばされ、不発に終わっている・・・


 それは、さておき・・・


「・・・多分、そうではないかと・・・」


 伊花の答は、頼りないものだった。


「・・・申し訳ありません。自分も、つい昨日転属して来たばかりで・・・詳しい説明は後ほどという事で・・・取り敢えず、石垣1尉を出迎えて司令部へ、お連れするようにと、指示されただけなのです」


「・・・・・・」


 本当に困ったような表情を浮かべている辺り、伊花も詳しい事情を知らされていないようだった。


 これでは、実はドッキリだった・・・という可能性も、強ち捨てきれないのだが。


「とにかく、とどのつまり・・・ようするに伊花3尉は、石垣チームに配属されたって事で、OK?」


 微妙に困っている男2人に、側瀬が簡潔に無理やり纏めた。


「はあ・・・まあ、そうだと思います・・・」


 何とも言えない表情で、伊花は答える。





 ・・・俺のチームに、男?男だよね?男装の麗人って訳じゃ無いよね?





 側瀬と伊花のやり取りを聞きながら、そう思った時、石垣の口元が自然と綻ぶ。


「やった!!やっと、男が来た!!良かった~!!!これで、救われたぁ~!!!」


 思わず、大声で喜んだ理由。


 いくら、能力的に優秀な人材とはいえ、何故か女性ばかり(しかも、美人揃い)が配属されている石垣チーム。


 ちょっとした、羨望や嫉妬の成分が入っているとはいえ、男性自衛官たちから、ハーレムと噂されているという事は、石垣の耳に届いている。


 そんな、甘~い天国のような事は、断じて無いのだが・・・綺麗な花々を侍らしている石垣(正確には、尻に敷かれている)を目前にすれば、その言葉に説得力は皆無であるという事実は否めない。


 だから伊花の配属は、石垣にとってハーレム疑惑を払拭出来るという、嬉しい事なのだ。


 だが・・・


 全身で、その喜びを表し、握手を求めて右手を差し出す石垣だったが、何故か、石垣の右手を見詰めて、怯えた表情を浮かべている、伊花。


「どうしたの?」


 自分に対して、恐怖のようなものを覚えているらしい伊花の様子に、石垣は頭に?マークを浮かべている。


「ふふ~ん。なる程ねぇ~・・・」


 その理由を察した小松は、狐を思わせる細面の顔に、ニンマリと邪悪な笑みを浮かべた。


「石垣君。伊花3尉は、さっきの貴方の言葉を聞いて、貴方は女性だけが恋愛の対象ではないと思ったみたいよ。確かに、彼・・・貴方好みのイケメンだしねぇ~・・・」


「?・・・?・・・?」


「これからの夜が楽しみねぇ~・・・寝不足にならないように、気を付けなくちゃ~・・・ねぇ・・・石垣く~ん」


 邪悪な声で、囁く小松だが・・・


「・・・・・・」


「?・・・?・・・?」


 完全に恐怖に囚われて、ブルブルと震えている伊花に、まったく意味が判っていない石垣は首を捻るばかりだ。


「ブフッ!」


「ププッ!」


 メリッサと側瀬は、堪らず噴き出し、慌てて口を押えた。


「いい加減にしろ!」


 ポカッ!パコッ!


 任が、石垣と小松の頭に拳骨を落とす。


「痛っ!」


「アイタ!」


 石垣と小松は、頭を押さえて蹲る。


「すまないな。どうも、この2人には緊張感というものが、足りないところがある。まあ・・・この先、付き合いが長くなると思うが、馴れてくれ」


 拳を握ったまま、任は伊花に告げる。


「は・・・はい。わかりました」


 取り敢えず、カオスになりかけた場の雰囲気は、任によって強制的に解消された。


 ただし、小松の言った事に対する訂正を・・・任は、一切していない。





 伊花の小隊が用意した高機動車に分乗して、統合任務部隊の司令部へ向かう。


 当然、石垣は伊花と同乗したのだが・・・


 後部座席に並んで座っても、伊花は石垣と可能な限り距離を取り、小さくなって縮こまっている。


「ところで伊花3尉・・・何で、そんなに端っこに寄っているの?」


「い・・・いえ、端っこが好きなので、お気になさらず・・・」


「?」


 伊花から色々と話を聞きたいのだが、何だか真面に話が出来る雰囲気でも無く・・・何故、そんな事になっているのか、まったく理解が出来ていない石垣は、消化不良な気分のまま、司令部に向かうしかなかった。





 日本統合任務部隊司令部は、新世界連合軍司令部の中にある。


 到着した石垣たちは、早速、司令部に案内された。


「私が、日本統合任務部隊司令官の石垣達彦(いしがきたつひこ)陸将補だ。石垣達也1等海尉以下、石垣チームの着任を歓迎する」


「えっ!?に・・・い・・・いや、石垣陸将補!?」


 司令室に案内されて、司令官に面会した石垣は、兄との予想外の再会に、驚き目を丸くした。


「石垣君。あんまり驚いて目を見開くと、目玉が落っこちるよ」


 すかさず小松が、冗談混じりでからかってくるが、それに反応する余裕もない。


「イシガキチーム。ただ今、着任しました」


 唖然として、突っ立っているだけの石垣に代わって、メリッサが代表して挙手の敬礼をしながら、着任の報告をする。


 任、側瀬、小松も同時に挙手の敬礼をし、少し遅れて自分を取り戻した石垣も、敬礼する。


 それに対し、石垣陸将補も答礼する。


「日本統合任務隊は、陸海空自衛隊で編成された派遣隊だ。その任務は多岐にわたる。諸君の精励に期待する」


 兄の言葉も態度も、簡潔を極めたものだった。


 その冷徹な態度は、兄らしいと言えば兄らしいが、弟としては少し寂しい。


「やぁやぁ、着任の挨拶は終わったかい?」


 司令室のドアをノックもせずに開けて、40代半ばに見える男が入って来た。


「・・・及川さん?」


「あっ、覚えていてくれたんだ。嬉しいねぇ。兄弟の感動の再会は、無事すんだようだね。そうそう因みに俺、ここの副司令官だから。困った事があったら、何でも聞いてくれ。相談に乗るよ。ついでに法務官も兼任しているから、何か問題があったら、それも相談を受けるよ」


 石垣の肩に腕を回し、人当たりのいい口調で語りかけて来るのは、及川颯士(おいかわそうし)1等陸佐である。


 兄の友人でもある男だが、防衛大学出身では無く、国立大学の法学部、大学院を経て自衛隊に入官するという経歴の持ち主で、兄とは大学院生時代に出会ったそうだ。


 兄よりも、かなり年上に見えるが、実際は1歳しか違わない。


 本人も、その老けて見える見た目を、相当気にしているらしい。


「いやぁ~、石垣君も随分と成長したねぇ。聞いたよ、一昨年前のハワイ会戦の時に、連合国アメリカ海軍の士官を前にして、堂々と自分の意見を主張したよね。あの報告を聞いた時の、お兄さんの喜んだ顏を見せてあげたかったよ!」


「え?」


 思わず石垣は兄の顔を見たが、兄は相変わらずの無表情だった。


「及川・・・」


 僅かに窘めるような言葉を、口にする。


「あれれれ~、お兄さん照れている~?」


 からかう及川にも、兄は表情1つ変えなかったが・・・


「・・・いや・・・あれは・・・その・・・」


 石垣の方が、アワアワしている。


 あの時、菊水総隊司令部の連絡要員として派遣されて来ていた氷室が、冗談混じりで兄に録音データを送るとか言っていたが、本気で送ったのだろうか?


 いったい、どれだけあの時の事が広まっているかと考えると、赤面ものである。


「・・・グダグダと、思い出話に花を咲かせている時間は無い。近いうちに、ハワイで計画されているリムパック演習に参加する陣容が、発表されるだろう。石垣チームも、それに組み込まれる予定になっている。着任早々で悪いが、ゆっくりしている暇は無い」


 兄は、自分の執務机の上に置いてある資料の入った茶封筒を、石垣に手渡した。


「先遣小隊の小隊長には会ったな。それ以外にも、貴官の指揮下に組み込まれる者もいる。それぞれ専門分野のエキスパートだ。必ず、頭に入れておくように」


「はい・・・」


 返事をして、資料を受け取ったものの、兄の説明は簡潔過ぎて要領を得ない。


 そもそも、自分に与えられた任務が、判らない。


 司令室を退室したものの、石垣は首を捻らざるを得なかった。





 ぞろぞろと通路を歩く石垣たちを、及川が追いかけてきた。


「ちょっと、俺に付いて来てもらえる?紹介したい人がいるから」


「はい。でも、紹介したい人って?」


「それは、会ってのお楽しみ!」


 及川は、どこか勿体ぶった口調で、笑っている。


「・・・あの、及川さん。そもそもの話、統合任務部隊って、新世界連合軍の中では、どういった立ち位置なのですか?」


「うん。いい質問だね」


 どこか、生徒から質問を受ける教師のような口調で、及川は答える。


「まあ、タスクフォースのような感じ・・・と言えば、わかりやすいかな。例えば、ある地域で紛争が起こった場合、迅速に対処して問題の解決に当たる・・・ぶっちゃけ、便利屋集団とでも思っておいてよ。もちろん本来なら、こういった部隊は、問題が起こった時に緊急招集されるのが常なんだけれど、そちらのケッツアーヘル中尉の、お父上の発案で新世界連合に参加する各軍で常設部隊として設立されたんだよ。我々は、言ってみれば日本国自衛隊代表の統合任務隊ってやつで、他の国の統合任務隊との共同作戦もありえるから、後で他の統合任務隊との顔会わせのために、挨拶にでも行っといで」


「はあ・・・わかりました」


 大雑把な説明ではあったが、だいたい理解は出来た。


「・・・・・・」


 自分の前を歩く、石垣と及川の話を耳に挟んで、一瞬だったがメリッサが、複雑そうな表情を浮かべたのだが、背を向けている石垣は、気が付いていない。


「及川さんが紹介したい人って、どんな人なんですか?」


「俺の大学、大学院時代の同期でね。去年、警視正に昇進した人物なんだ」


「へぇ~・・・でも、何故警察関係者が、統合任務隊に?」


「君の兄さんも、言っていただろう?専門分野のエキスパートが揃っているって。陽炎団の団長直々の推薦付きだよ。任務の中には、警察権の行使が含まれる場合がある。いくら俺が法務官といっても、自衛隊の警察権には限界があるからね。そこで、警察の専門家が必要になってくるわけだ」


「ふむふむ」


 陽炎団団長という事は、あの本庄慈(ほんじょうしげみ)警視監だ。


 彼が推薦する程の優秀な人物とは、どんな人だろう。


 石垣は、少しワクワクする。


 及川と同期という事は、40代前半と思われる。


「因みに、その人は俺より年上でね」


「えっ?て、事は・・・浪人して大学へ?それとも、留年?」


「いや、大学の一回生の時に、司法試験に合格して、大学を休学してアメリカの有名大学の法学部に留学して、向こうの司法試験に合格してから復学した時に、一緒になったんだよ。だから、同期と言えば同期になるけれど・・・少し、違うかな・・・まあ、それで大学院を出てから、警察のキャリア組として入官した人だ」


「・・・何か、すごい人なんですね・・・」


 そうこう話しているうちに、目的の部屋に着いたらしい。


 プレートの掛かっていないドアを、及川がノックする。


「は~い」


 ドアの向こうから聞こえたのは、女性の声だった。


「ゲッ!?」


 小松が、小さな声を出したが、誰の耳にも届いていない。


「桐生警視正。新しく配属されて来た、メンバーを紹介するよ」


「きっ!!?桐生さん!!?」


 開けられたドアの向こうには・・・


「いらっしゃい、石垣君。久し振りね、元気そうで何より」


 婦人警察官の制服に身を包んだ、統合省防衛局特別勤務者だった、桐生(きりゅう)明美(あけみ)が満面の笑みを浮かべて出迎えてくれた。

 大戦の予兆 第1章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は2月6日を予定しています。

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