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大戦の予兆 第0.5章 最新鋭戦艦[駿河]の就役

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 基準排水量6万4000屯。


 満載排水量8万500屯。


 全長280メートル。


 全幅39メートル。


 速力27ノット。


 巡航速度16ノット。


 武装。


 50口径46糎砲3連装3基。


 60口径15.5糎砲3連装4基。


 40口径12.7糎高角砲連装12基。


 SeaRAMとCIWSを、それぞれ4基ずつ搭載している。


 その他にも対空、対艦噴進弾及び無誘導噴進弾が、搭載されている。





 大日本帝国海軍総隊呉鎮守府の会議室で、帝国海軍中佐から説明を受けるのは、統合省防衛局統合幕僚本部に所属する、氷室匡人1等海佐である。


(・・・今時、戦艦って・・・)


 氷室は心中で、つぶやいた。


(空母の時代が来たというのに・・・戦艦の重要性が無くなるかと思ったら、サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟海軍西海攻略艦隊旗艦の存在が、大きく影響しているのかな・・・)


 氷室は会議机に置かれているコーヒーカップに、手を伸ばした。


「おや?」


 コーヒーカップの中が、空っぽだった。


「も、申し訳ございません」


 給仕役の水兵が、慌てて氷室のカップに、温かいコーヒーを淹れる。


 湯気立ちあがらせながらコーヒーカップを持つと、一口だけ啜った。


(まったく、山本元帥は、何をしているのか?天皇陛下直属の海軍顧問になったんだから、戦艦の大量生産に、待ったをかけられなかったのか?)


「何か、ご不明な点でもありますかな。氷室大佐?」


 海軍中佐が、質問する。


 氷室は、すぐに自分の思っている疑問を、口にする。


「海戦は、航空機主体の防御と攻撃になっているにもかかわらず、何故、戦艦が出て来るのですか?先の大戦でも戦艦は、噴進弾艦や噴進戦闘攻撃機に対して、完全に無力であると証明されたはずですが・・・?」


「その考えは、早急過ぎますな。我々に、未来の知識を提供したにもかかわらず、その程度の認識しか無いのですか・・・?」


 海軍中佐は、やや挑戦的な口調で、反論してくる。


「確かに、アメリカ太平洋艦隊やイギリス東洋艦隊、大西洋艦隊が、新世界連合軍連合海軍や征服同盟軍同盟海軍の噴進弾攻撃や、噴進機による噴進弾攻撃等で、多くの艦艇が撃沈されました。しかし、戦艦は噴進弾の攻撃に対して、簡単には沈まないという結果を出しています」


 彼の言う通りである。


 対艦ミサイルは、1発であれば、駆逐艦やフリゲートであれば轟沈、軽巡洋艦であれば大破、重巡洋艦なら中破、戦艦であれば小破であった。


 重巡洋艦や戦艦に対しては対艦ミサイル1発だけでは効果的な打撃を与える事は出来ないという事を実戦で証明した。


「それに対して、未来の噴進弾搭載艦は、戦艦級の艦砲を1発でも受けると一撃で轟沈します。これは、アメリカ太平洋艦隊、イギリス東洋艦隊、大西洋艦隊、ドイツ艦隊等が多くの艦艇を失いながらも、実戦で集めたデータを元に作成された評価です。これは決して動きません!」


 海軍中佐は、強い口調で叫んだ。


(やれやれ・・・要するに、航空機開発技術では我々の足元にも及ばないから、唯一、我々が開発技術を失った戦艦や重巡洋艦の建造技術で対抗しようという訳か・・・人間って、あまり変わらないなぁ~・・・)


 氷室は、呆れ半分の感情が、心の奥底から湧き上がって来るのを感じた。


 氷室たちの元の時代では、戦艦の建造技術は、完全に失われている。


 それは、建造しなくなったためである。


 修理や修繕ぐらいなら出来るが、一から建造する事は、不可能である。





[駿河]型戦艦一番艦[駿河]。


 これが[大和]型戦艦改の、戦艦の名前である。


 氷室は、呉軍港に停泊している戦艦[駿河]に、乗艦するのであった。


「どうですか?戦艦[駿河]の感想は?」


 海軍中佐が、尋ねる。


「設計図や写真等も拝見しましたが、一言で言うと戦艦[大和]や[武蔵]を、大型化しただけのような感じですね」


「それは、違います!」


 氷室の感想に、海軍中佐が叫んだ。


「・・・・・・」


 何だか、やけに突っかかってくるな・・・氷室は内心、辟易していた。


「ハワイ沖海戦で撃沈された、戦艦[大和]や、天皇陛下御召艦になった戦艦[武蔵]と違い。戦艦[駿河]は、貴方がたが提供した技術の最先端を、ふんだんに使っています。戦闘指揮所も貴方がたから見れば、旧式かもしれませんが、我々にとっては、最先端の電探等の電子機器が搭載されています!」


「そ、そうなんですか・・・」


 そんな話をされても、[駿河]型戦艦は軍機の塊という事だけあって、まったくと言っていい程、これという情報が提供されていない。


 どれだけの電探性能があるのか、それは完全に軍機である。


「おほん!失礼しました・・・」


 海軍中佐は、落ち着きを取り戻したようだ。


 どうやら氷室の一言で、一気に熱を帯びたのだろう。


「おっと、そろそろ昼食の時間ですね」


 海軍中佐が、懐中時計を確認する。


「それでは氷室大佐。第一士官室に、案内いたします」


 海軍中佐に案内されて、氷室は第一士官室に通された。


 第一士官室には、戦艦[駿河]の士官たちが、集まっていた。


「待っていたよ。氷室君」


「はぁ・・・」


「いや~・・・君と話が出来るのを、楽しみにしていたよ。戦艦[駿河]に乗艦した感想は、どうかね?」


「そうですね。私は、[大和]型戦艦や[長門]型戦艦、[金剛]型戦艦に乗艦した経験がありますが、戦艦[駿河]は、素晴らしい戦艦ですね」


「そうか、そうか」


 戦艦[駿河]の艦長が、嬉しそうに頷いた。


「貴官が乗艦した、戦艦は、どれも泥船だからね。戦艦[駿河]は、大日本帝国海軍の象徴的な戦艦に、なるだろう」


「象徴的戦艦は、帝国海軍から近衛軍に配置替えされた、陛下御召艦の戦艦[武蔵]ではないのですか?」


「あれはお飾り戦艦だよ。陛下の御召艦になった事により、戦う事は、もはや無いだろう。戦艦として生まれたにも関わらず、戦艦としてでは無く、陛下のお住まいになってしまったのだ。不運な事だ・・・」


「・・・・・・」


 随分と、お喋りな人だな・・・艦長の為人に、ちょっと引き気味になる氷室だが、最新鋭艦の初代艦長に任命された事で、浮かれているのかもしれないと思い直した。


「艦長」


 副長が、声をかける。


「おお~そうだった。早く食べないと、カレーが冷めてしまうなぁ~氷室大佐、こちらに座ってくれ」


 氷室は、勧められた席に着く。


「毎週の楽しみである。土曜カレーだ」


 帝国海軍では、土曜カレーになっている。


「カツカレーですか・・・」


「そうだ。戦艦[駿河]が、近い将来にも発生すると言われている、サヴァイヴァーニィ同盟軍との戦争に備えて、必ず勝つという事を願って、カツカレーにするように、主計課に頼んだのだよ」


「そ、そうですか・・・」


「さぁ、食べよう」


「「「いただきます」」」


「いただきます」


 氷室は、そうつぶやいた後、スプーンを持った。


 カツとご飯、カレーを絡ませて、氷室は口に運ぶ。


「欧州風にした、カレーですか?」


「そうだよ。この前、新世界連合軍連合海軍に研修にいった時、欧州風カレーを食べさせてくれた。とても、美味かった。ウチの主計課に無理を言って、私の食べた欧州風カレーにしてくれと、頼んだのだよ」


「そうですか・・・」





 そういえば・・・かつての帝国海軍元帥、東郷(とうごう)平八郎(へいはちろう)大将も、イギリスに留学した際に食べたビーフシチューの味が忘れられず、主計課に同じものを作らせようとしたところ、出来たのが肉じゃがだった・・・そんな話を、氷室は思い出した。

 大戦の予兆 第0.5章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は1月30日を予定しています。

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