大戦の予兆 終章 1 発火点 1 サヴァイヴァーニィ同盟軍
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
ニュースで、やっていましたが、[スラヴゥ]級ミサイル巡洋艦[モスクワ]が撃沈(?)されましたね・・・詳細に付いては双方の主張が食い違っていますが、アメリカの発表では、ウクライナの地対艦ミサイルが命中したと確認したみたいですが・・・今後どのようになるか、注目しています。
新ソビエト社会主義共和国連邦首都モスクワの、サヴァイヴァーニィ統合同盟総帥官邸(サヴァイヴァーニィ同盟軍最高司令部)に、1人の青年が姿を現した。
彼の名は、ヴァジム・アダム・バビチェフ大尉である。
長身に筋肉質な体格であるバビチェフは、サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟陸軍総局直轄特殊任務部隊に所属する特殊部隊兵だ。
スペツナズである。
「バビチェフ大尉」
正門に立っている衛兵に対して、名乗る。
「名前は?」
「ヴァジム」
衛兵は、書類から彼の名を探す。
「ヴァジム・アダム・バビチェフだな」
「そうだ」
バビチェフは、頷いた。
「入っていいぞ」
「失礼する」
サヴァイヴァーニィ統合同盟総帥官邸は、サヴァイヴァーニィ同盟警備総局総帥官邸警備連隊が、警備している。
サヴァイヴァーニィ同盟軍最高司令部の庁舎も隣に存在するが、サヴァイヴァーニィ同盟軍将校と言え、簡単に入る事は出来ない(サヴァイヴァーニィ同盟軍最高司令部の警備は、直轄部隊の警備連隊が警備を行っているが、共同警備は行っていない)。
官邸内に入ると、まず金属探知機による検査が行われる。
「探知機に反応する金属の類は、ここに置いてくれ。銃はこっちに」
バビチェフは、ホルスターからMP-443を抜き、マガジンを外し、薬室内に入っている弾丸を取り出した。
MP-443を指定された場所に置き、その後、箱の中に外した金属類を入れる。
スイス製の高級腕時計、ドックダッグ、財布である。
「後は、制服に付いている金属類だ」
「わかった。そのまま、通ってくれ」
バビチェフは、金属探知機内に入った。
ビー!ビー!
制服に付いている金属類に反応し、探知機が作動する。
「そこに立て」
衛兵も指定の手順通りに、携帯式の金属探知機を、バビチェフの身体に近付ける。
首元から足の先まで携帯式金属探知機を滑らせると、衛兵はバビチェフから離れる。
「異常なし、着けていいぞ」
箱の中の金属類を着ける許可が、下りた。
「銃に関しては、ここを出るまで返却出来ない。いいな」
「ああ」
バビチェフは、箱に入れた金属類を、着けた。
「あんたが、バビチェフ大尉か?」
衛兵の1人が、声をかけてきた。
「そうだ。ありふれた名前だが、俺がバビチェフだ」
「スペツナズの中でも、最強の特殊部隊兵だと聞いた。数多くの秘密作戦に従事し、破壊工作、要人暗殺等を行った」
「有名になってから、そういう話をよく聞かれるようになったが、答は簡単だ。極秘だ」
「そうだよな。まあ、忘れてくれ。だが、あんたのような超一流の特殊部隊兵が、ここに来るという事は、何か余程の事が起こるのだな?」
「その事については、俺も聞かされていない。総帥か副総帥の気分転換にという事で、単なる雑談というだけのような場合もある」
「さて、それは、どうかな・・・?ここだけの話だけどよ。近々、ウクライナへの派兵があるらしいぞ」
「その程度の噂なら、俺の部隊でもある。だが、ニューワールド連合軍や、日本国自衛隊が秘密裏に、ウクライナに逃亡した旧ソ連暫定政府軍と自称する反乱軍に、支援を行っているらしい。うかつに、反乱軍と戦端を開けば、第3次世界大戦の勃発にも、つながりかねない」
「お偉方の話は、どうか知らないけど、同盟陸海空軍の参謀連中の話では、ウクライナ派兵は、あるらしいぞ」
「こほん!」
女性衛兵が、咳払いをする。
「おっと、話は。ここまでだ」
衛兵は、そう言ってバビチェフの側を、そそくさと離れて行った。
秘書に、バビチェフが到着した事を伝えると、待機室に通された。
「紅茶を、用意いたしました」
スタッフの女性が、紅茶が入ったティーカップを置く。
バビチェフは、紅茶に好みのジャムを淹れた。
スプーンでかき混ぜながら、自分が、ここに呼ばれた事を考えた。
彼は、ロシア連邦軍時代にも、数多くの作戦に従事した。
サヴァイヴァーニィ統合同盟総帥兼サヴァイヴァーニィ同盟軍最高司令官のロマン・ニコラス・ゲルギエフが、反ロシアの旗印の元に将兵の募兵を行った時、バビチェフも自らの意志で、彼の旗の下に駆け付けた。
ロシア政府軍と全面戦争に突入した時、彼は、彼の部隊と共に、非合法作戦及び合法作戦に従事した。
ロシア軍高級士官の暗殺や、政府要人の暗殺だけでは無く、発電所の襲撃及び爆破や後方に展開している補給部隊や物資集積所の破壊等を行った。
サヴァイヴァーニィ同盟軍の将校として、この時代に来た時も、ドイツ第3帝国国防軍東部軍、イギリス軍ヨーロッパ派遣軍、アメリカ・ヨーロッパ統合軍に対して、物資集積所の破壊、高級士官の暗殺等の100以上の任務に従事していた。
そのため、サヴァイヴァーニィ統合同盟総帥官邸に呼ばれたのは、一度や二度では無い。
「バビチェフ大尉。総帥がお呼びです」
秘書に呼ばれて、バビチェフはソファーから立ち上がった。
秘書の後を付いて歩きながら、総帥室のドアの前に立った。
秘書が2回、ドアをノックした。
「入れ」
総帥の声が、聞こえた。
「失礼します」
秘書は、ドアを開けた。
「失礼します」
バビチェフは、姿勢を正した。
「ああ、よく来てくれた。バビチェフ大尉」
サヴァイヴァーニィ統合同盟総帥兼サヴァイヴァーニィ同盟軍最高司令官のロマン・ニコラス・ゲルギエフが、執務椅子から立ち上がった。
ゲルギエフは、バビチェフの手を握った。
「貴官の武勲は、かねがね耳にしている。大活躍だな」
「光栄です。総帥」
「かけてくれたまえ。何か飲むかね?」
「いえ、先ほど紅茶を頂きました」
「紅茶だけか?ウォッカもあるし、ウィスキーもある。どれがいいかね?」
「いえ、自分は・・・」
「公務中には飲めないか・・・安心したまえ、これは公務では無い。私的な雑談だ。だから、酒を飲んでも問題は無い」
ゲルギエフが、棚からウォッカとウィスキーのボトルを取り出した。
「君の上官にも許可をとっている。これでも安心出来ないかね?」
「では、いただきます」
「ウォッカ、ウィスキー、どちらがいい?」
「それでは、ウィスキーを」
「氷は?」
「入れて下さい」
ゲルギエフは、ウィスキーのグラスを2つ取り出して、そのグラスに氷を入れた。
ウィスキーを、グラスに淹れる。
「では、乾杯」
「ザ・ズダローヴィエ」
グラスとグラスが、重なる音がした。
バビチェフは、グラス半分に淹れられたウィスキーを飲み干した。
「もう1杯どうかね?」
「いただきます」
バビチェフは、グラスを差し出す。
ゲルギエフは、グラスの中にウィスキーを注ぐ。
「明日、副総帥が、ウクライナ領付近に、視察に向かう」
「副総帥の護衛ですか?」
「それもあるが、それだけでは無い。ウクライナ領付近で行われる演習には、ニューワールド連合軍アメリカ軍の士官や、日本国自衛隊の自衛官も視察に来る。彼らと意見交換を行ってもらいたい」
「わかりました」
特に、血生臭い任務ではなさそうだ。
そういった、意見交換会のようなものは、双方の陣営が演習を行うたびに、各地で行われている事である。
単に、自分に順番が回ってきた・・・この時、バビチェフは、特に難しく考えていなかったのだった。
大戦の予兆 序章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。