大戦の予兆 序章 1 老元帥と若者
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです、初めての方は、初めまして、高井高雄です。
IF 自衛隊派兵~もう1つのWWⅡ~の第2部となります。
第2次世界大戦後、違う歴史を歩む事になる日本と世界です。
主人公である石垣達也1等海尉も、新天地で活躍する事になります。
楽しんでいただければ幸いです。
1966年(昭和41年)8月某日。
「ここ・・・かな・・・?」
日本皇国首都東京都某所にある喫茶店の前で青年が、つぶやく。
「ここよ。間違いないわ」
同じく、同行している女性が答える。
2人の顔立ちは、よく似ているため、姉弟のように思える。
「入るわよ」
女性が喫茶店のドアを、開ける。
ドアベルの、カランという音が響く。
「いらっしゃいませ!2名様ですか?」
「はい、予約した者ですが・・・」
「お名前は、よろしいですか?」
喫茶店の女性スタッフが、予約表を持って来る。
「石垣です」
青年が、名前を告げる。
「はい、ありました。こちらになります」
女性スタッフが、席に案内する。
案内された席には、すでに誰かが座っている。
「やあ、久し振りだね」
席に腰掛けている先客は、70代後半くらいの老人だった。
「はい、お久し振りです。おじ様」
「前に会ったのは、君たちが中学生くらいの頃だったね。それがもう大学生か・・・月日が経つのは早いものだ・・・」
懐かしそうに、老人は声を掛ける。
「そうですね」
青年は緊張した面持ちで、答える。
「さあ、立っていないで、座りたまえ」
老人が、若者2人を手招きする。
「失礼します」
「失礼します」
2人は、席に着いた。
「ご両親は、元気にしているかね?」
「はい、元気にしています」
青年が、答えた。
「君たちのご両親は、第2次世界大戦の時、新世界連合軍や菊水総隊との連絡要員として、私の元に派遣されていた。第3次世界大戦の時は、私は元帥に叙され、陛下の海軍顧問団の団員として、陛下に助言を申し上げる立場だった。当時の2人の武勲については、海軍顧問団の中にも届いていた」
「ありがとうございます」
女性が、頭を下げる。
「父と母が聞けば、喜ぶと思います」
「さて、話が長くなる前に注文をしよう。ここのチョコレートケーキは、絶品でね。コーヒーも、実に美味い」
老人は、にこやかな表情で勧める。
「それでは、それを注文します」
青年が、告げる。
「では・・・」
老人が、女性スタッフに注文した。
「ケーキとコーヒーが来るまで、ご両親との思い出話をしよう・・・お父上は、あの当時20代半ばで、戦争についての知識は、歴史本とシミュレーターで得た知識でしかなかった。確かに、彼の言葉は熟考され、洗練されていたが、経験から得た知識ではなく、どこか空虚さがあった。傍で聞いていて、彼は何も知らない世間知らずの人間なのだなと思った。そんな時に、お母上が現れた。お母上は、まだ20代前半だったが、度重なる紛争を経験し、己の信念を持っていた。お母上は、お父上に対して、その世間知らずの信念を、きっぱりと否定した。そのおかげもあって、彼は成長する事が出来た。まあ、ゆっくりと1歩1歩と前に進むという、ゆっくりとした成長スピードだったが・・・これまでの知識と、経験で得た新たな知識を元に、強固な信念を持つようになった・・・」
老人の言葉に、青年は出された水を、一口飲んだ。
「その話でしたら、父から何度も聞きました。父と母の初めての出会いは、どこであった?と聞くと、必ずその話をしてくれました。正直に言って、初めて聞いた時は、格好悪いなぁ~と思いましたが、よくよく考えてみたら、とても素敵な出会いだったかな・・・と、今は思ったりしています」
「お母上は、お父上を前の恋人と、重ねていたようでね。この話も聞いたかね?」
「はい。その話でしたら、母方の祖父から聞きました。父は、信念に関しては、亡くなった恋人と比べ物にならないが、性格は、完全に瓜二つであった・・・と。そして、何より母を幸せにしてくれたと・・・」
「そのようだね」
「お待たせしました!チョコレートケーキセットです」
女性スタッフが、トレイに乗せたチョコレートケーキとコーヒーを、3人の前に置く。
若者たちとの、楽しい一時を過ごした後、老人は席に着いたまま、のんびりと1人の時間を楽しんでいた。
喫茶店のテレビでは、今日のニュースが流れている。
『・・・一昨年、新広島産業奨励館が建設された事により、長い歴史を閉じて、閉館となった旧広島産業奨励館ですが、地元住民の強い要望により、広島歴史記念会館として、生まれ変わりました。今日の開館記念式典には、広島県知事を始めとして、大勢の地元住民や観光客が来館し、新たな歴史を刻む事になる、歴史記念会館の開館を、祝っています・・・』
アナウンサーの声に合わせて、美しいフォルムの建築物が映っている。
「・・・本来なら、ブーゲンビル島で、戦死するはずだった私も、もう1つの歴史では原爆ドームと呼ばれる広島産業奨励館も、彼らに救われた・・・」
老人は、新たに注文したコーヒーを一口飲んで、つぶやいた・・・
大戦の予兆 序章1をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。