転生
おっす、オラ……コホン。
俺の名前は逃田過男。
とりあえずやるべきことから逃げ、嫌なことからも逃げ、嫌いなやつらからも逃げ、もろもろ全てからひたすらに逃げ続けて、世間一般で言うところのヒキニートとなった。
その日もクーラーをお供に絶賛引きこもり中だったが、母さんが昼を準備してくれなかったので、リビングテーブルの上に置いてあった1000円を握りしめて近くのコンビニまで出かけた。
そしたら……。
キィィィィィィ! ドカン!
俺はちゃんと信号も守って横断歩道を渡っていたのに、信号を無視して突っ込んで来たトラックに引かれて死んだ。
だけど、目覚めたら交通事故からのお約束の異世界転生!
「キタァァァァァァァ!」
と思っていたときが俺にも10秒ほどありました。
だって、異世界転生って言えば、普通はいろいろあるよね? 神様や女神様が出てきてスキルとか魔法とかくれたり、貴族や王族に生まれたりとかさ。
異世界の神? もしくは女神? きっとシャイなんだね、それはわかるよ。うんうん、俺もニートだし、会わないのはいいする。
だけどさ、俺の転生先ってゴブリンなの?
はい、はい、わかってます、わかってますって。
これは珍しいスキルか、チートな魔法をもらっていて天の声さんのサポートありの例のパターンだよね? もしくは実はゴブリンが世界最強で俺tueeeするやつか、偶然ものすごい力を得ました系ですよね?
って思ったけどさ、それも無しなの?
あはは、詰んでる。
親は繁殖力が半端ないだけのゴブリンだし、俺は8つ子で先に独り立ちした兄妹が他にも29人いるらしい。って、どんだけ頑張ったのさ、父さん、母さん。
さらには生後30日が経つと、父さんが俺の肩を叩いた。
「ゴブスケ、お前も今日から大人だ」
「えっと、大人?」
「そうだ、少しでも早くパートナーを見つけて、いっぱい繁殖するんだぞ」
「いやいや、俺はまだ産まれたばかりだよね?」
俺が聞くと父さんは「なに言ってんだ?」と笑う。
「そんなもん、体が出来たらさっさと自立して繁殖するのが生き物の常識だろ?」
「マジか?!」
「マジだ!!」
そして、俺はいきなり魔物が蠢く森に着の身着のままで放り出された。
おいおい、無理ゲーすぎないか?
身につけてるのは腰布だけで、武器もねぇ、家もねぇ、おまけに魔法もスキルもねぇ、オラこんな森、嫌だぁ。
「それと、魔物もそうだが、我らと敵対しているオークとコボルトに注意するんだぞ」
「うん? オーク? コボルト?」
「そうだ」
父さんは「うんうん」うなずいているが、そこはどんな見た目とか、どんな特徴があるとか、どんな技を繰り出してくるとか、あるんじゃないのかなぁ、いろいろと……。
そんなことを思っているうちに父さんは巣穴である穴ぐらに戻っていった。
おいおい、父さん? 俺もみなまでは言わないけどさ、あんたは母さんとちょめちょめしたいだけだよね?
ってか、今世はどうなるってるのかな?
こうして俺は今世も逃げに逃げてます。
主に物理的に……。
よろしくお願いします。