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6

以下の物語と連動しております。


「GLORIA」

http://ncode.syosetu.com/n8100h/


「愛しき者へ…」

http://ncode.syosetu.com/n0724i/


「早春散歩」

http://ncode.syosetu.com/n2768i/


6、

 すごくやわらかくて肌触りがいいから、擦り合わせるように自分の身体を抱いてみた。

 瞼をゆっくり開けてみるとモスグリーンに薔薇の織り柄のシーツが見えた。

 ああ、シルクだったから手触りが良かったんだな~…って、ぼんやりした頭で考えてみる。

 は?何で俺ここに寝てるんだ?

 え~と…俯けになった身体を少し起こして気がついた。

 …え?裸?

 下着すらつけてない真っ裸…

 そりゃ寝るときは結構な頻度で裸になって寝るクセはついているが、今日は脱いだ記憶はないぞ。

 それに、ここどこ?

 …え~と、嶌谷さんの従弟の…宗二朗さんって人に昼飯をご馳走してもらって…

 それから…

「やっとお目覚めかい?凛一くん」

 声のする方へ振り向いてみた。

 瀟洒な椅子に優雅に腰掛けた宗二朗さんが、携帯を俺に向けている。


「何してんの?」

「凛一くんのヌードを撮ってる」

「…なんで?」

「そりゃ凛一くんの裸が魅力的だからだろ?」

「なんで?」

「…おまえの裸を見て喜ぶだろうと思ってな…誠一郎が」

「…逆効果だろ?」

「…」

「それが狙い?」

「…まあな。思ったとおり、君の裸の写メを送った途端、携帯が鳴りっぱなしだ。こちらは無視しているがね」

「屈折してるね、宗二朗さん。40にもなろうって人が大人気ないよ。大体さ、俺の裸を嶌谷さんに見せたって、嶌谷さんはどうもしないと思うけどな」

「そうとも言えないところがね、あいつのバカさ加減…よし!これでいい。早速寝起きの君の動画を送ってやった」

「アホ…」

 ヒゲづらの強持てのツラなのに子犬みたいな顔をする。なんかかわいい人だなあ~

 俺は片膝を立てて、顎を乗せながら、宗二朗さんの様子に苦笑した。

 薬で眠らせて裸にするなんて褒められたことじゃないけど、それが嶌谷さんへのあてつけのつもりというなら、気持ちはわかる。


「それより…凛一くんは平然としているんだな。剥き身にされてるのに、強姦されたと心配しなくてもいいのかい?」

「はは、問題なしだね。まあ身体はいじられたとしても入れられたかそうじゃないかぐらいは、すぐにわかるよ。俺も初心ウブな方じゃないんでね」

「ふ~ん。思ったより柔じゃないんだな。そんな顔をしているから、精神こころも硝子細工かと思ったんだがね」

「まさか、ハイテク樹脂加工のハンマーでも割れない硝子だよ。それより、宗二朗さんも人が悪いなあ~嶌谷さんにカマかけるんだったら、睡眠薬なんか飲ませなくても俺、協力したのに」

「まあね、あれだったら巧いこと頂こうかとは思ったけどね…」

「思ったけど…なんで手を出さなかったの?抱きたいと思うほど魅力的じゃなかった?」

「…あ、誠からだ。あいつひっきりなしに携帯にかけてきやがる。相当に凛一くんが心配らしい」

 俺の問いを無視した宗二朗さんはどことなく浮かれ気味に携帯を耳に当て、嶌谷さんと通話を始めた。


「よお、誠、元気か…凛一ならここに居るよ。…うっせえなあ~何もしてねえよ!…わかった。今凛一に代わるから」

 携帯と話しながら宗二朗さんは、ベッドの俺に近づいて携帯を差し出した。

「ほら、やっこさん、怒髪天って奴。怒り狂ってる」

「自業自得」

 俺は苦笑して、受け取った。

「嶌谷さん?」

『凛一、無事か?』

「うん、大丈夫だよ」

『本当に?宗二の奴、これみよがしにおまえの裸の写真なんか送りつけやがって…』

「嶌谷さんをからかったんだよ。妬いてるんだね。嶌谷さんが俺を可愛がるからさ。でも宗二朗さんってなんか憎めないよ。もしかしたら俺に似てるのかもしれない…そう思わない?嶌谷さん」

『…凛』

「あんまり怒らないでよ。俺、宗二朗さんとちゃんと仲良くなるからさ、心配しないで」

『凛一…あのな…』

「なに?」

『あいつがおまえの裸の写メなんか送ってくるから心配で…慧一くんに連絡しちまった…余計な事してすまん』

「ちょ…それ…拙いよ、嶌谷さん」

 さすがの俺も顔色が変わった。一番駄目なパターンじゃん。

 慧一にこんなこと知られたら…怒るだけじゃなく、傷つけることになる。

『直ぐに連絡してやれ。慧一くんも気が気じゃないだろうから』

「わかった」


 俺は携帯を宗二朗さんに返した。

「ね、俺の携帯どこ?」

「リビングだよ」

「わかった」

 夕食は一緒に食おうって言ってたのに…連絡もないとすると…

 考えなくても慧一のうろたえた顔が見える。

 慧を不安にさせたくない。


「おい、凛一!裸でうろつくな!なんか着ろよ」

「あんたが裸にしたんじゃないか!元通りにちゃんと着せてもらいたいね」

 俺は、脱いだ服を手にする宗二朗さんを無視してリビングへ向かった。

 テーブルに置かれた携帯の電源を入れた。

 …数え切れない程のメールと着信数。

「マジでやばいよ!」

 声を荒げて慌てて慧一に掛けた。コールを待たないで繋がった。


『凛かっ!』

「慧…ゴメン。連絡できなくて…ちょっと、色々あってさ」

『今、どこに居るんだ』

「Rカールトンホテルのクラブハウス。あんね、嶌谷さんの従弟の…」

『それは嶌谷さんから聞いた。そいつと一緒なのか?』

「うん。でも心配することなんかないからさ…怒らないでよ。連絡しないのは悪かったから」

『もう十分かそこらでそっちに着くから、ロビーに居なさい。わかったな、凛』

「え?着くって…」

『おまえの言い訳は後で聞く』

 俺の返事も待たないで通話は切れた。


 あの様子じゃ、宗二朗さんに睡眠薬を飲まされて裸にされたなんて…とても言えないよ。

 言ったら宗二朗さん、慧から殺されるかも…






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