10
以下の物語と連動しております。
「GLORIA」
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「愛しき者へ…」
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「早春散歩」
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10、
ミナの誕生日プレゼントに買ってきたシカゴ美術館のアートブックに、ミナは酷く感銘を受け、行って見たいと連呼した。俺はどれもこれも素晴らしい美術品ばかりだと煽り、いつか一緒に行こうと約束した。
俺の誕生日には、ミナは直筆の絵を俺にくれた。
俺がクリスマスにプレゼントした色鉛筆で温室に咲く草木を瑞々しく描いた絵は素晴らしく、額に入れた途端相当な画家が描いた様だと、俺は褒めた。
「額がいいからだよ」と、謙遜するが、ミナには絵画のセンスがある。
ただの写実画でもなく印象画風でもない。ボタニカルアートに近い感じはするが、ミナの描く草花には、どことなく抽象的でもあり叙情的な感覚も混じっている。独特なミナだけの画風が備わっている。
俺はミナに画学を進めるが、ミナは困惑したように眉を顰めるだけだ。
「両親が…許さないよ」
温室の花にジョウロで水をやりながら、ミナは俺に背を向けた。
「おまえの人生を親が決めるのか?」
俺は温室の窓を開けて、風を通す。
五月の眩しい緑の輝きに、思わず目を閉じた。
「…あの人たちが必ずも正しいとは思っていない。だけど、父さんも母さんもおれに期待している。この学校を選んだのも、寮生活をさせてくれているのも、いい大学に入るからと約束して無理を言ったからなんだ。リンの家庭みたいにうちはお金に余裕があるわけじゃないしね。国立大学を選択するしかないんだ。そういう状況で、美術大学を受験するなんて…とても無理だ」
「だけど…」
「おれは…おれのことであの人たちを心配させたり、失望させたくないって、思っているよ。くだらない親孝行かも知れないけど、おれにできる恩返しってそれくらいかな…って」
「…三年間の自由と引き換えに、後の人生は親の為にってこと?」
「…そういうわけじゃないけど…リンには、わからないよ」
「…」
ミナの言っていることは俺にはわからない。
親の期待に応えるってことはそんなに大事なのか?
恩返しって…子供を育てて一人前の大人にすることは、親の義務だろう。そのために働いて、子供を飢えさせないように、十分な教養を身につけさせる。それだけで親の自己満足は満たしてやれるはずじゃないのか?
俺はミナとの価値観の違いにしばしば面食らう事がある。
だとしても、それが原因で俺たちの間になにがしかの不信感が宿るわけでもなく、恋人としてのミナに何も不足はなかった。
ミナは毎週末必ず俺の家へ泊まりに来るわけではなかったが、お互いの性欲は十分満ち足りたものになっていた。ミナに今まで一度も性体験がなかったのは、全く以って俺には好都合だった。
他の奴が知る前に、俺の好みに調教できる。
ミナは結構欲しがる方だ。
する前は、必ず恥らったり躊躇ったりはするが、いざやり始めると、没頭してしまう。
勉強と同じなのか、一度学んだらとことん突き詰めていくのも性格だろう。
陶磁器のように白い肌は滑らかだし、関節は柔らかいし、中の感触も感度も上質だ。
唇を噛みながら喘ぐのも、声を張り上げて乱れるのもいい。
ミナの身体は色々と官能的。
一通りやり終えたら、シチュエーションを変える。
ラブホテルへ行ったり、夜空の下でやったりと…ミナは嫌がりながらも最終的には逆らわない。
が、さすがに温室でのセックスはこっぴどく拒絶された。
「マンションの屋上でやることはOKなのに、温室でやるのはNGなのか?なんの違いがある?」
「リンはバカだ!人目があるとないの違いだろう!しかも…ここは学校の敷地内だ。誰が来るかわからない」
「別に見られてもいいけどね」
「リンは非常識だ。おまえは節度を知った方がいい」
「なんだよ。やり始めりゃあ自分から擦り寄ってくるくせにさあ~」
「で!…デリカシーのないリンはき…」
「嫌い?」
首を傾げながら上目遣いに見ると、ミナは何度も瞬き顔を赤らめる。
「き、らいじゃないけど…」
素直な反応に俺は十分満足。
「ゴメン、ミナの嫌がることはしないよ。約束したろ?ミナが嫌ならしない」
俺は、微笑んでミナに腕を広げる。
ミナは俺を見て少しむくれて俯く。
少ししておずおずと俺の腕の中に納まり、肩に頭を載せて、ミナは囁く。
「…別に…リンがどうしても…って、言うのなら…してもいい…けど…」と、呟くのだ。
俺はほくそ笑む。二重の意味で、ミナはかわいい。
そっとシャツの下に手を滑らせると、ミナは甘い息を吐いた。
結局、ミナは俺に甘い。
勿論、俺もミナを十二分に甘やかすけれど…
筆者のBLブログ「auqa green noon」はこちら。
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イラストも多数ございます。