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以下の物語と連動しております。
「GLORIA」
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「愛しき者へ…」
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「早春散歩」
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9、
俺の胸に頭をもたげて眠りにつくミナを、俺はしっかりと抱きしめていた。
ミナの規則正しい呼吸音と、上下する胸の動きが俺の肌を通してはっきりと感じる。
この愛しき者。
愛するという事はこれ程までに、優しくいたわり、守りたいと感じるものなのだろうか。
俺はミナを悩ませるすべてのものから庇ってやりたいと強く願っている。
今まで関わってきた多くの大人たちも、こんな思いで俺を見つめていたのだろうか。
俺がこれまで貰ってきた数々の愛情とは、ここまで深く熱いものだったのだろうか。
慧や梓が俺に与えてきた愛情と、俺がミナに感じる愛情は何が同じでどこが違うのだろうか…
慧は…こんな風に眠る俺を抱きながら見つめたことがあるのだろうか…
…変だ。慧は兄貴なのに。
俺がミナを思う気持ちと慧一の俺への愛が同じではないはずだ。だが、少なくとも俺がミナを幸せにしたいと願う気持ちと、慧の俺を思う気持ちは似かよってはいるはずだ。
俺はミナの前では誠実であり続けよう。
もし、ミナが俺を嫌いになっても…もし、いつか別れが来るとしても、俺の中に生まれたミナへの愛情は消えることはない。
決して無いと誓える…
ミナの頬に翳る睫毛の影を見つめ、そして、俺はゆっくりと目を閉じた。
翌日、昼近くになって起きたミナと一緒に食事を取る。
「なんだか…恥ずかしいよ。リンったらひとりで起きてこんなにちゃんとした朝食を用意しているんだもん。おれの立場がない」
「朝食じゃなくて、昼食だろ?いいんだよ。ミナは初心者で色々と疲れているんだから」
「…や~らしい言い方…」
「ミナのアノ時の声ってさあ、すげえそそるし、たまんねえもんがあるよ」
「リ、リンっ!」
「まあ、いいから食べなさい。どうせ、今日も明日も休みなんだから」
眼鏡を上げながら慌てるミナを押さえ、俺は出来たてのオムライスを目の前に差し出した。
「ミナ、これから何する?折角の晴天だし、どっか出かける?」
食後のコーヒーを飲んでいるミナに問うと、ミナは黙ったまま下を向く。
「…」
「なんだよ」
「リンと、ここに一緒に居たい…」
「…」
Tシャツから出た色白の首がピンク染まっている。こいつは、天然の色仕掛けをしてくる。全く…
「じゃあ、俺の自宅は二人だけの秘密の花園ってことで、毎週末泊まりに来いよ。めちゃめちゃかわいがってやるからさ」
「…そ、そういう意味じゃない」
「嘘」
俺は白けた視線でミナを睨んだ。するとミナは慌てて釈明する。
「…う、そだけど…じゃなくて…月曜に校内模擬があるから、三上に言われているんだよ。宿禰にしっかり勉強させるように」
「…あ?…嘘」
「…嘘じゃないし」
そっぽを向くミナの口唇が心なしか尖っている。
三上の件は絶対嘘だなあと思い、まあかわいいからいいやと納得して、拗ねるミナの指を自分の指と絡めると、こっちを向いたミナが綺麗な顔で笑った。
「愛してるよ」と、囁く。
ミナは頬を染めて「お、おれも…あ、いし、てる」と途切れ途切れに言うから堪らなくなる。
立ち上がってミナに近づき、椅子から立ち上がらせたミナを抱きしめる。
「腹も満たしたことだし、ね、セックスしよう」と、提案。
ミナは戸惑いながらもゆっくりと頷く。それを確かめると、リビングのソファに導き、ミナを寝かせた。
Tシャツの裾を捲くって、撫で回す。ミナは頭を擡げたまま、すこしだけ憂いを帯びた目で俺を見る。
「ミナはここ、結構感じるよね」撫でた臍の上辺りを舐めた途端、スンと鼻に抜けた声を出す。
嫌がられない事に気分良く、そのままジャージとパンツを下ろすと、慌てたミナが「リ、ン…頼むから、その前に、キスさせて」と、請う。
早速のおねだりに、俺は何度も甘い応えを返した。
ミナは自分で眼鏡を外し、両腕を俺の首に回すと、もう一度じっと見つめる。
「もうひとつお願い」
「なに?」
「お、わったら…」
「ら?」
「…勉強しようよ」
「…は?」
「おれ、リンと付きあって成績落ちたと思われたくないし、リンにもそうであって欲しいんだ。ね、いいだろう?」
「…了解、しました」
成績と俺たちが付き合うことの関連性に疑問を持たないではないが、まあ、ここはミナの論法に譲歩しよう。
こういうミナも堪らなく好きになってしまっているのは事実だ。
受験勉強に精を出すべき高2の俺達が、勉学に励むのは至極当然。
そして、頭を使ったら、身体もね。
休日の二日間、俺とミナは、セックスをしたら勉強。勉強に飽きたらセックスの繰り返しだった。
セックスの指南は俺。そして勉学の教師はミナ。
お互いの役割は大いに役立ち、お互いの人生を豊かにした…と、思えるんだが…
校内模試の結果は…勿論ミナは断トツでトップ。俺は…文理合わせてトップ10入りを果たした。
真に恋の力とは恐ろしい…