表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/101

2

2.

 ミナが寮に戻ったら、ふたりで初詣をしようと約束して電話を切る。

 慧一はいつの間にか、浴室から戻っていて、冷蔵庫から出したミネラルウォーターを飲んでいる。


「例の…恋人?」

「そうだよ。水川青弥って言うの」

 慧の声の響きが優しかったので、安心して答えた。

「付き合うようになったんだね」

「うん、まあ…色々とハードルは高そうだけど」

 バスローブのままでカウチに座り込んだ慧に近づき、手を伸ばすと、慧は飲んでいたミネラルウォーターのボトルを差し出した。

「なんの?」

「向こうは優等生のノンケで、何もかもが全くの初心者なんだよ。だから気を使うことしきり…」

「それをわかって付き合うって決めたんだろ?」

「ミナは…水川の事をそう呼んでいるんだけど…他の奴とは違うんだよ。あいつはなにも知らないイノセントだから、間違った道に進ませちゃいけないっていうか…そういう責任を感じてる。これから先…先なんて何もわかんないけどさ、ミナと付き合っていくと決めた以上、あいつを幸せにしたいって思っているんだ。付き合ったばかりでセックスもしていないのに、こんな風に考えるのは、俺の思い上がりかね?」

「…いいんじゃないか、それくらいの気負いがあっても。向こうも凛のことを、好きなのだろう?」

「好きじゃなきゃ付き合わないだろうけど…色々と躊躇うものがあるみたいだね、俺と違ってさ。どっちにしても俺はミナとセックスするとは思うけれどね」

 空になったボトルをテーブルに置くと、慧の膝に跨って抱きつき、首に腕を絡ませた。


「…凛、重い」

 顔を見なくてもわかるぐらいウザそうに言う。

「うん、わかってる。それよりベッドはひとつだし、やることもひとつだよね」

「…」

「セックスでもする?」

  慧の顔に近づいて、囁くように言ってみた。

「おまえは…去年のクリスマスにも同じようなことを言ってたな。なにかのまじないか?」

「だって、このシチュエーションで何もないっていうのも変じゃないか?」

「それこそ、おまえの大事な水川くんに悪いとは思わないのか?冗談にしても」

「だって、俺は慧の事好きだもん。慧とならいつだってセックスしていいと思ってる」

「兄弟でセックスはしないものだ。一般的な当然のモラルとして…」

「愛情にモラルは関係ない。そしてセックスは素晴らしきコミュニケーションだって言ってた」

「誰が?」

嶌谷とうやさん」

「呆れた…なんて事を教える人だ」

 慧は肩を落として頭を抱えた。別に嶌谷さんを悪者にするつもりはなかったんだけど…印象を悪くしたかな?

「嶌谷さんが言わなくても、俺は慧が兄弟であってもなくてもセックスしたいって思うし、梓が生きてりゃ、梓ともしていたね」

「凛っ!」

 慧は本気で俺を嗜めた。

 まあ、当たり前だろうが、俺はそういう道徳心は生まれつきと言おうか、事の他少ない。

「わかってるよ。兄貴が望まない事を俺は無理に頼んだりしない。慧だって選ぶ権利はあるからね。でもまあ、セックスはしなくても、抱き合って寝るぐらいはいいんじゃない?折角立派なベッドがあるんだからさ」

「もう…わかったから…先に寝なさい。クリスマスもお開きだろう。サンタクロースも閉店だよ。待っててもプレゼントは来ない」

「もう十分…プレゼントは貰っているよ。今宵慧がいりゃ何もいらない」

 お休みのキスを催促し、与えてもらった後、俺はひとりででけぇベッドに潜り込んだ。

 夜の向こうを眺めている慧の横顔を眺めながら、独りじゃないことに満足している俺は、ゆっくりと眠りにつくのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ