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パーティもお開きになり、挨拶を交わして帰ろうと玄関を出ると、コートとマフラーを纏いながら、ミナが後ろから付いてくる。

「どした?」

「今日はおれが誘ったんだから、リンを家まで送る」

「…そりゃ…光栄ですが、おまえの帰り道が心配になる」

「大丈夫だって」笑いながら、俺の隣に並んで嬉しそうにするミナを無理に戻す気にはならなくなった。

もう一刻一緒にいよう。


ホワイトクリスマスにはならなかったけれど、息を吐くたびに白くなる。

お酒は飲んでいないけど、折角いい感じに余韻に浸っていたのに、冷たい空気に意識がだんだんと覚めていく。

思わずぶるっと首を竦めると、それを見ていたミナが口を開く。

「手袋しないの?」

「え?」

「せっかくあげたんだからさ。使ってよ」

「うん、でも今はいい。特別な手袋があるから」と、ミナの左手を掴み取った。

そのまま指を絡ませてぎゅっと握り締める。

ミナは暫く掴まれた手を見ていたが、同じように握り返すと「あったかいね」と、笑い返した。


俺の自宅までゆっくり歩いても15分。

短い距離だけど、冬の空気はしんしんと凍らせるけれど、とても幸せ。あったかい。

「楽しかったね、宴会」

ミナが夢心地で言うから、なんだかこちらまで地を踏んでいない感じ。

「まさに宴会。あれじゃキリストも浮かばれない気はする」

「リンと美間坂さんのタンゴ良かったよ」

即興で美間坂さんとアルゼンチンタンゴを踊ることになったわけだが、足は踏むわ、よろけて転ぶわで大いに盛り上がったんだ。

「リン、薔薇なんか口に銜えて踊るんだから…美間坂さん、本気で嫌がってた」

「あれだけコールされたら元生徒会長としてはやらなきゃならないしね。案外リードは巧かったよ。あの人はいざとなりゃ本気で頼れる人だな」

「美間坂さんには良く勉強を教えてもらったんだ。的確に要点だけをまとめて教えるのには驚いた。でもあの人って自分にも他人にも厳しい人だけど、桐生さんにだけは特別でね。呆気にとられるほど、桐生さんには甘えてるんだから、笑ってしまうよ」


桐生さんとは少し話しをした。

美間坂さんは京都大学が本命らしく、もし決まったら、都内の大学に行く桐生さんとは離れてしまう。「遠距離恋愛なんて俺には自信がないんだけどね」と、桐生さんは苦い顔をしていた。


「あのふたりを見てると男同士の恋愛って成立するんだなあって…なんだか、信じたくなる」

「ミナは俺と恋愛してるって思ってないの?」

「…リンの事好きだけど…やっぱり、本当にこのまま…行ってもいいのかなって…」

ミナの思う不安はこの先のすべてを指している。俺とセックスする事や、その先、俺達に祝福を受ける権利のある未来が見えるのか、どうか…

そんな先の事を今とやかく思案しても仕方が無いと思うけど、ミナがそう思う性分なら別にそれはそれで構わない。ひとつずつ不安を消してやればいい。


俺のマンションに辿り着いた時には、なんだかこのままミナを離し難くなって、思わず部屋に誘ったが、ミナは断った。

「外泊許可は貰ってないし…明日は…家に帰らなきゃならない…ごめん」

「うん…仕方ないね」

予想は付いていたけど、やっぱりミナはこれ以上深みに入ることに躊躇していると感じた。

…ま、しょうがない、持久戦だよな。と、溜息を吐きながら、ミナを見ると、なんだか様子がおかしい。俯いたまま、指で眼鏡の奥を押さえている。

「ミナ?」

「でも…なんか…」

「え?」

「ううん。来年までおまえと会えないなあって思ったら、なんか、すごく…泣きたくなってきた」

「…」

「馬鹿みたいだ」

「そんなことない。俺も泣きそうだ」

「…宿禰はこんなことで泣かないよ。おれは弱いからすぐ涙が出るんだ」

「俺だって…弱いよ」

ミナは思いもよらない言葉を聞いたような顔で俺を見つめた。

「俺は弱いよ。でもミナの為になら強くなれる気がするから」

「…」

「来年の予定!ミナをもっと好きになって、ミナと気持ちいいセックスをする。どう?」

「…あ…ショックで涙が止まった…」

「そりゃ良かった。では肯定と受け止めて、今夜はキスだけで解放してやるよ」

「おれ、捕まってたの?」

「勿論、ずっと俺の鎖に繋がれてたの」

「…リンの鎖は少しも重くない」

「紅い糸という鎖だからね」

今年最後のキスをして、ミナを見送る。

来年までいい子で。

そして、君の中の「愛」を精一杯育ててくれ。




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