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「これで相思相愛だな」

「リン…」

「おいで。まず初めにハグからだ」

両腕を広げると、ミナは真っ赤にした顔を伏せながらも、俺の胸に寄りかかるように身体を寄せた。

そのまま俺の肩にミナの頭を乗せると、ミナはひとつ溜息を吐いた。

「どう?落ち着いた?」

「まだ心臓がバクバクしてる」

「わかる。振動が伝わってくるもん。な?こんな風に近づかないと判らないもんが一杯あるだろ?きっとミナは今から沢山の俺を知ることになるよ。嫌なところもいいところも」

「そう…かもな」

「俺もミナの事沢山知りたい。教えてくれるよね」

「うん。俺でいいなら…」

「おまえがいいんだよ」そう言ってミナの頭を撫でてやる。

ミナはまたひとつ大きく深呼吸をして俺に身体を押し付けた。


「じゃあ、キスをしてもいいですか?」おどけながら囁くと、ミナが顔を上げて不満そうに言う。

「この状態で断るわけないだろう?聞くなよ」

「ご都合を聞かないとね。またなんで機嫌を損なうかわかったもんじゃないから、ミナは」

「…キスしてください。…これでいい?」

「やっぱり俺のミナはいい子だね」

そう言って、俺は少し背の低いミナの顎に手を沿える。


まずは啄ばむ様に何回かキスを試すと、ミナはパチパチと目を瞬かせる。

「これは挨拶。これからお世話になるから、よろしくっておまえの口唇にゆってんの」

「…リンは変わってる」

「また好きになった?」

「そういうバカなところが…好きなのかも」

ミナはクスっと鮮やかな笑顔を向けた。

それを合図に今度は本格的に試みる。

「眼鏡はちょっと邪魔かな」そう言ってブリッジを引き上げて、ミナの顔から眼鏡を外した。

近くで見るミナの本当の瞳の虹彩が少しだけ大きく見開いた。

長い睫毛、でかいまなこ、くっきりとした二重まぶた、整った鼻梁…よく誰のもんにもならなかったなあ〜。変に感心をしてしまった。

俺に引っかかったのは…こいつにとってラッキーなのかはわからないが、俺にはかなりの当たりくじだろうね。


口唇を舐めるだけでミナの身体が震えた。

ミナが何もかもに慣れてないのはすぐわかった。

だけど、俺も本気でミナには挑みたいからさ。手を抜くわけにもいかない。

慧一や紫乃たちとは全く違うキスだよ、おまえとするのは。


歯列をなぞって舌を深く入れた途端、ミナは驚いたように顔を引く。

顎を押さえて、ミナの舌と絡ませると「うう」と微かに唸るから、落ち着くようにミナの背中をさすった。

僅かな抵抗を止めて、ミナの腕が俺の背中に回り、しっかりと力を込め俺を抱きしめる。

うっすらと目を開けてミナを見ると、目を閉じて真っ赤な顔のミナ。

呼吸をするのも上手く出来なさそうで、肩の力は一向に抜けない。

それでも懸命に応えようとする様が本当に愛しくなってしまい、益々口唇を離せなくなってしまう。


ミナの目が少しだけ開いて俺を見る。

今にも泣いてしまいそうな潤んだ目が俺を見る。

キスを続けたまま、俺は目で笑ってみせた。

ミナの目が嬉しそうに応えた。


初めてのキスは随分と長く、熱に浮かれたみたいに熱く、今まで足りなかったお互いを必死に拾い集めるみたいに夢中になって味わっていた。


今はなにも要らない。だけど「時よ、止まれ」なんてさもしい事は言わないよ。

俺たちはこれから、「恋」という時間を一緒に歩いていくんだ。


遥かな遥かな長い道のりを…




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