第90話 札幌コミュニティ定例会①
「はっはっは、それは災難だったね、木下君」
「笑い事ではないですよ、山田さん」
ここは例の会議室。
また例によって1週間に一度の定例会にて、いつもの10人と5匹プラス1匹が集まっていた。
先ほどの会話は、代表総括の山田と、札幌医師会代表の木下……通称ガリ先生との間で交わされたものだ。
「確かに、わ、笑い事じゃ、ない。ぷぷぷっ」
次いで、児童管理担当の立花まりもが、相変わらず笑ってはいけないところで笑えるスキルを発揮していた。
「ま、手放しで褒めれはしねえけどよ。美しい友情ってヤツじゃねえの。元気で宜しい!」
「斎藤防衛大臣まで……」
木下とザマスがジト目で斎藤を無言で責めた。
しかし、斎藤はノーダメージである。
更に悪いこと(?)に、今日の斎藤は超ご機嫌であった。お気に入りの黒猫の黒之介が可愛らしいスコティッシュのガールフレンドを連れてきていたからだ。
最近は温かくなってきたからか、コミュニティ内外のあちこちで盛り声がよく聞こえてくるようになった。そんな感じで、黒之介もオンナができたようである。
「やりおるのう、黒之介」
……にぎゃっ
斎藤は脇をそーっとすり抜けようと前だけ向いて忍び足をしていた黒之介をおもむろに抱き上げる。そして、いつもの必殺の髭ジョリ攻撃を始めたぞ!
そして物陰では、その隙に黒之介のオンナと気まぐれ猫のシロが交尾を始めたようだ。
それに気付いた黒之介が、斎藤に拘束されたまま絶望の表情で寝取られの現場を見つめていた。オンナが出来ても友人には会わさないほうが無難なのは、人間も猫も同じようである。
「ぷ……ぷぷっ、え、NTR……」
立花まりもが一人だけウケている。これは本当に面白いから笑ってるのか、笑ってはいけないと考えて笑えてしまったのかは本人もよくわからなかった。
「確かに笑い事ではないんだナッ」
スキンヘッドのマッチョな中年男……剛力警備担当代表が不機嫌そうにそう言った。
「たるんでるんだナッ。鍛えなおしなんだナッ」
今回は警備部を二人着けていたにも関わらず、同時に無力化されたのだ。これではペアで行動させてる意味が無い。
しかも、罠や催涙ガスを使用されたとは言え、まだ子供にだ。これは警備担当代表としては面白くはないだろう。
「まあ、二人目の子は助かったんだよね? じゃあ、目出度いってことでいいじゃないかな」
山田のその言葉に、「まあナッ」とやれやれポーズしながら返す剛力。
ゾンビに噛まれても発症しなかった不顕性患者である正は、警備部にとっては期待の戦力なのだ。まだ事例が少なくて100%とは言えないが、不顕性の性質を持つ者は再び噛まれたとしても発症しないというのが今の所の共通認識である。しかしながら、噛まれて肉を持っていかれて失血死とかショック死とかの心配はあるので無敵という訳ではないのだが。何にせよ、この性質はゾンビと相対する者にとっては大きなアドバンテージであるからである。
……まあ、正が卒業後にスカウトしてみたのだが、「ゾンビ、怖い! もう、いやあぁぁぁぁぁ!」と逃げ回られたのはまた別のお話ではあるのだが、いま剛力がそれを知る由も無かった。
「あと、服部将吾とかいうリーダー格のガキんちょでアリマスが、見所あるのでアリマス!」
斎藤の護衛で同行している成瀬が言った。
なんと将吾は自衛隊入隊を希望しているらしい。
「守る力が欲しいんだ!(バアァァァァァァン!!)」とか何とかで、成瀬や佐々木陸尉に土下座して入隊を請うてきたらしい。
こんなご時世なので正式な入隊手続きとかはできないのだが、将吾は中学課程を卒業後、旭川駐屯地に集まっている北海道方面自衛隊基地に送られて鍛え上げられることが決まっているのだ。
「ああ、あの主犯の坊主ですね」
木下ガリ先生は複雑な表情をする。
まあ、あれだけの粗相をされた本人であるから、それは仕方がないのかもしれないが。




