第80話 自衛隊員の話⑤
軍隊式格闘術どうしの実戦は、普通は一瞬で片が着く。
体重によるクラス分けや反則等のルールが無いならば、人を壊す方法などいくらでもあるからだ。
例えば、組み着いて関節を決めたられたとしても、一本でも腕が自由であれば目潰しとか睾丸を握り潰すなりすれば戦闘不能にすることができるだろう。
例えばもっと単純に、ナイフで腕等末端を切られただけでも大きく戦闘力は落ちる。痛みで思考力、判断力が鈍るからだ。こうなったら、殺し合いで勝利することはもう難しい。
今ゾンビたちとの攻防が数分に及んでいる理由は、彼らがゾンビだから痛覚がない故に致命的なダメージを与えない限りは戦闘力が落ちないということと、佐々木や成瀬は武器を使用してる故に間合い的に有利であるということがある。
言い方を変えれば、双方ともに決め手に欠ける状態なのだ。
こうなってくると疲れを知らないゾンビたちの方が有利かと思うかもしれないが、この戦いに限ってはそうではない。余程の油断と判断を間違えないい限り、100%佐々木と成瀬の自衛官コンビの勝利は揺るがない。最悪は、その89式小銃で蜂の巣にすればいいだけだからだ。特戦ゾンビは防弾・防刃装備をしているだろうが、この至近距離ならば避けきることは不可能だし、また貫通しないとしても骨はグシャグシャだ。動けなくなったところでトドメを刺せばいい。
しかし、それは最後の手段である。銃声はかなり遠くまで音が広がる故に、周囲のゾンビ達を呼び寄せてしまう恐れがあるからだ。特戦ゾンビのような例外が他にいないとも限らない。そんなのに囲まれたら絶望的と言えよう。
特に、怪我をしている子供たちを庇いながらとなれば逃げきれない可能性も高くなる。
佐々木は成瀬には発砲の許可を出したのではあるが、それでもできることならば銃は使用することなく対処をしたいと考えていた。生き残ることが我々の勝利であるとするならば、ここで銃を使用することになった場合、「戦には勝ったが勝負に負けた」という、笑えない結果になるということである。
「難攻不落ってヤツだな」
「固いでアリマス!」
特戦ゾンビ達は、佐々木たちの放つ銃剣による突きをことごとく弾き落としていた。
ヤツらの迷彩服の腕や脛は刃によりズタズタになりつつあるが、そこから顔を出す防弾・防刃プロテクターによるものだ。
かと言って、ゾンビ達はまともに受けたりすることはまずない。銃剣が当たる角度をなるべく浅くして突きのベクトルを変え、なるべくプロテクターや衝撃による肉体へのダメージを押さえる様な防御を行っているのだ。
実戦においてここまで完璧にできる者は少ない。現役の特戦でもいないかもしれない。おそらくは、ゾンビ故に恐怖という雑念が無い故の技であるのかもしれない。
更に恐ろしいのが、突きのベクトルをコントロールされるということは、その瞬間に攻撃側の体勢が一瞬崩れるということである。先ほどから、間合い内に入り込まれそうになってヒヤリとすることが何度かあった。
「チィッ!」
これは、いよいよ銃の使用に切り替えるべきか?
佐々木がそう思い始めた頃である。
……ん?
特戦ゾンビ達に、彼ららしからぬ不自然な隙が一瞬できるパターンに気付いたのだ。
特戦ゾンビたちは当初思っていたより更に厄介であった。フェイントにまで対応してきたからだ。知力が低いゾンビ故に簡単に引っかかってくれるのではと期待したのだが、経験とはフェイントの判断をも体に刷り込むのであろうか、ほとんど通用しなかった。
しかしながら、フェイントにも拘わらずマジになって防御するタイミングが何度か見受けられたのだ。
……もしかしたらっ!
佐々木はある事に気付き、また試してみる価値アリと判断し、成瀬に支持を出す。
「陸士長、左胸を狙え!」
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