第79話 自衛隊員の話④
成瀬は身震いした。
特戦とは、特殊作戦群という自衛隊の特殊部隊のことである。
自衛官なら誰もが憧れる精鋭部隊の中でも更に選りすぐりの部隊であり、その戦闘力はもちろんのこと、知力も応用力も並外れたエリート中のエリートたちのことである。
マジでアリマス、な……。
成瀬は彼らの迷彩服の左ポケットにある記章を確認し、佐々木の言葉が正しいことを確認した。きっと佐々木もこれに気付いてそう判断したのであろう。
国旗日の丸、力の剣、急襲の鳶、陸上自衛隊の徽章である桜星、聖なる榊からなるそのデザインは、軍事マニアを拗らせて入隊した成瀬にとっては眩しすぎるモノであった。
特殊作戦群記章!!
佐々木陸佐が先に気付くとは、なんか悔しいでアリマス!
……が、
「うおぉぉぉぉ!! 初めて見たのでアリマス! 光栄でアリマス!」
敬礼しながらドバーッっと涙する成瀬。
心成しか、感情が無いはずのゾンビたちがドン引きしてる気がするぞ!
「頼もしいことで」
佐々木は余裕だな、と皮肉を思ったところで頭を切り替える。
「集中!」
オレは歳だし、成瀬は若造。
もし特戦のヤロウどもが人間のときであったなら、100回戦っても100回とも負けることになるのは道理だろう。
ただ、奴らは今やゾンビなのだ。体力はもとより、特に知能の低下による戦闘力低下があることは間違いあるまい。そうでなければ、今頃ガキどもはもとより、オレもここに立ってはいなかっただろう。
「逆に言えば、ほとんど本能と体に叩き込まれた技術だけでコレってことか……」
やはり、とんでもねえな。
そう思い至ると、佐々木は身震いした。恐怖三割、高揚七割で。
オレも陸士長のこと言えねえな!
「「うおぉぉぉぉ!」」
ただの自衛官二人と特戦ゾンビ二体による、第二ラウンドが始まった。
――――――—――――――—――――――—――――――—――――――—
「将吾君、大丈夫でヤンスか?」
中島が将吾の前まで小走りで近寄ってきて、半身になって顔を近づけてきた。
「うへぇ、こりゃ、酷いでヤンスねぇ」
中島が顔を大げさに顰めながらそう言った。
「……うるせえよ」
「肩貸すでヤンス」
将吾は手を伸ばす中島を遮り、周囲を見渡した。
「いや、俺より勝やんは?」
「勝やんと正は、美鈴ちゃんが着いてるでヤンス」
「……そうか」
将吾は中島の肩を借り、ガクガクといまだに震える足に喝を入れながら立ち上がった。
「しかし、凄いでヤンスねぇ」
「ああ」
そして、自衛官二人とゾンビ二体の戦いに魅入っていた。
将吾は腕っぷしだけが自慢の男だった。
タイマンなら誰にも負けない。そんな自信だけはあった。
それがどうだ。あのゾンビもそうだが、自衛官二人にもまるで勝てる気がしない。
以前なら持ち前の負けん気から嫉妬の炎を燃やすところであったが、今日は何かストンと腑に落ちるモノがあった。
「井の中のカエルってところか」
「……カワズでヤンス」
「そ、そう、それ」
「お山の大将とも言うでヤンスよ」
「うるせぇ」
将吾は空いた左手で中島を小突こうとして、やめた。
「……まあ、思い知ったわ」
そして中島と目を合わせて互いに「へへっ」と笑いあった。
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