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第7話 違和感

結局、出社停止の謹慎開始から3日間はほぼ布団の中であった。

1日目の夜のピークを境に劇的に回復したとは言え、普段と比べればやはり体調は優れなかったのだ。


布団の中以外ではトイレと水分補給。

茶々丸のご飯とトイレ掃除は、病んでいてもやるしかない。

そしてあまり食欲無いけどカップ麺を日に2度ほどすする生活だった。


あとは、携帯で課金してるゲームにログインし、もったいないのでログインボーナスを受け取り、そしてデイリークエストを無理矢理消化する。

それ以外は寝てる感じ。


普段なら、暇なときにしているネットサーフィンとか月額のアニメ見放題サイトでアニメサーフィン(?)とかもまったくやる気にならなかった。

やはりまだまだインフルエンザのダメージは回復していないのだ。



4日目。


体調は落ち着いてきたと思うし食欲も出てきたが、昨日までの流れでダラダラと過ごす。

ベッドで携帯ゲームくらいやる気力は出てきたので、一日中していた。

目が霞む。

目が、目があ~!! とムスカってみて独りへへっと笑ったのを覚えてる。

……我ながら気持ちが悪い。

茶々丸がビックリしたのか変な人を見るような顔で僕を凝視してた。

その目はやめろ。



5日目。


快晴。

カーテンを開放したときに優しく降り注ぐ日光が清々しい。

復調を実感する。


洗濯物が溜まっているので久々に洗濯機を回す。

流石に履くパンツが無くなってきたし、寝込んだときに着ていたシャツも汗で汚れているからな。


洗濯機が終了のブザーを鳴らす。

ベランダに洗濯物を干しに出るのはちょっと面倒臭い気もしたが、いざベランダに出て日光に自身が洗われるような感覚を受けながら洗いたての洗濯物を干すのは、いつもながら思いのほか気持ちの良いものだ。


しかしながら、この時、何やら違和感の様なものを感じていた。

何って言われると困るが、何かが引っかかっていたのだ。

まあ、後になってこの「違和感」の正体は判るんだけど、この時は「うーん、5日も引き籠りした経験なんて殆ど無いからその辺りかなー?」くらいに考えていたと思う。


結局深く考えることもせず洗濯物を干す作業を進めていたところで、そんな違和感とかは意識の外に飛んでいく事件が起きる。


「うわっ!?」


「にゃ!?」


いつの間にかベランダに出ていた茶々丸を踏んづけそうになってビックリし、転びかけたのだ。ベランダの手すりに助けられて大事には至らなかったが。


僕は、「……危ないなあ」と、茶々丸の無事、自分の無事、どちらのことを指したのか自分でも分からないまま口に出した。


まったく、ロクなことしないヤツだが、ゴロンゴロンアピールで一気に許せてしまう。

あざといヤツめ。多分、わざとやってるな。


そう言えば、今まで何度も茶々丸を踏みそうになったことはあるが、不思議なことに「踏み切った」ことは無いのだ。

何だろうね、足の裏に茶々丸の毛並みとかを少しでも感じた瞬間に、一瞬でソレを理解して回避できる能力が僕にはあるらしい。

これは猫飼いなら誰もが有する能力なのだろうか、今度誰かに聞いてみよう。こんなことがある都度そう思うのだが、普段は思い出すことも無いので結局聞けず仕舞いになっている。

それどころか、洗濯物を干し終える頃には、この事件(?)のことなどすっかり頭から消えていたのだが。


何はともあれ、明日からの社会復帰を思うと少々滅入るぜ。

しかし、この5日間誰からも連絡が無かったな。

慣れっこだけど、ちょっとヘコむぜ。



6日目。


はっきりと異常を認識したのは、この日だった。


シャワーを浴び、鞄の中の財布を確認。そして充電ケーブルから形態を抜き取り、ポケットに突っ込み、久々の出社の準備は万端となった。

あー、気が乗らない。しかし、行くしかないよな。


ベッドの済にちょこんと香箱座りしている茶々丸に、「パパはお前のご飯代稼いでくるから良い子で留守番してろ」と撫でまわしながら話しかける。

理解してるかしてないかは分からないが、茶々丸はご満悦顔である。

……うん。理解してないな。

僕は最後に軽く乱暴にわしゃわしゃと喉元を撫でた後、玄関の扉を開く。

最後に茶々丸に手を振ったが、不愛想にじーっとこちらを見ているだけで反応は薄かった。暫しとはいえ久々の別れだというのに、ちょっとだけ寂しい。


マンションの玄関口を出る。

すぐ歩道があるのだが、構造上それは玄関から死角となっているので、無意識に顔をひょいと出して左右の確認をする。いきなり飛び出して自転車とかと衝突とか勘弁だし、実際に引っ越してきたばかりの頃にそうなりそうになったことが数回あるから、今では半分無意識に行っている行為だ。


今日は……誰もいないな。


「?」


いつもなら、僕の邪魔をするヤツは誰もいないとは本日は幸先の良い日である……とか思ったりするものだが、その時は何か「違和感」を覚えた。

しかしながら、他人とぶつかる様な状況ではないことは確かなので、深く考えずに歩道へと一歩を踏み出した。


実はここから地下鉄への入り口は目と鼻の先で、歩数で言えば15歩くらいの距離かな。あっと言う間に地下へと降りる入口まで辿り着く。


「?」


そこで、また違和感。

さっきから、何かが変だ。


そういえばこんな違和感を最近覚えた気がする。何だろう?……と気にはなるが、きょろきょろと辺りを見回しても特に変わらぬ見慣れた景色である。まあいいか、出社後に上司に「さーせんでしたー」からの「大丈夫か気い付けやー」のテンプレ的挨拶をしなければならないのが軽く面倒臭いなー、とか、現実の方に思考が戻る。


そして、地下鉄に潜る。

速攻で、再び違和感。ただ今度の違和感は、そう感じた理由がはっきりと判るものであった。


「……あれ? 人がいない」


通勤時間帯にも関わらず、改札口に続く開けた通路付近に、人っ子ひとり居なかったのだ。


「今日って祭日か何かだっけ?」


僕は過去にも何回か、祭日とかで会社休日なのにも関わらず出社してしまい、職場に来てから誰もいないことによりそこで初めて休日だったと気づき、損したのか得したのか分からない気持ちで帰路につくことをやっている。それを思い出したのだ。


でも、今日って普通の日だよな。

流石に、出社禁止命令明けの休日スケジュールくらいは間違えるはずはない。でも、もしかして日数のカウント間違えて、今日の日付を間違えてる可能性とかあるかも・・・とか考えながら、キツネにつままれた気分のまま改札口へと近づいた。


ここで、更なる違和感が僕を襲う。

……と言うより、普通に気付く。


「あれ、駅員がいない?」


いつもならいる改札横に詰めている駅員さんがいなかったのだ。

自動改札だし別にいなくても入場できるし、基本的にワンマンだ。トイレでも行ってるのかな?……などと考えつつ、いつもの習慣で何分発に間に合うか確認の為に、運行状況の電光掲示板を見上げた。


……あれ、何も表示されてないやんけ?

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