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第60話 ヘイ、レイディオ!

他者との連絡や交流。

サバイバルの生存率を大きく上げるのに必要な行動ではあるが、つい先日まではほとんどできていない状態だった。


何百キロと離れている距離を通信する無線機とか、どこで手に入れたらいいかわからない。また、手に入れたとしても無線の知識ゼロのド素人の僕が使いこなせるとは思えなかったし。


乾電池兼用タイプのソーラー電池式のラジオは手に入れている。

だが、誰がが発信しているのであろう、複数の音声のようなものが聞こえてはいるのだが、電波が悪いのか何を言っているのか非常に聞き取り辛いのだ。

名古屋は濃尾平野にあるので平野ではあるのだが、海側以外はぐるりと山脈に囲まれた地形なのも影響しているのかもしれない。きっと電波が山脈に遮られてしまうのだ。

逆に考えれば、濃尾平野内にはラジオ放送を発信できるレベルの生存者コミュニティは存在していないのかもしれない、と絶望したものである。


僕だっていつかは、他の生存者たちと合流したいのだ。だが、現状でその探索は絶望的と思われた。

現在の行動範囲を確保するのにも数カ月を要したのに、地道のゾンビを駆除しながら安全圏を確保しつつ他の生存者を探すとか、どれだけ時間と命があれば達成できるのか想像だにできない。


故に、僕はここに留まり続けるしかなかった。

唯一希望があるとすれば、不明瞭とは言え聞こえてくるラジオの人の声が、僕以外にも生存者はまだどこかに存在しているという事実があることだ。お互い生きていれば、いつか出会える日も来ると信じて生きてきた。



3月15日。


事態が好転したのは、突然であった。

ある日、何気にラジオを着けてみたところ、飛び込んできた音声は非常に明瞭な男性の声だったのだ。

久々に聞く明瞭な他人の声である。茶々丸なんて、「何処に他人がいるんにゃ?」という感じでラジオの裏に回り、誰もいないのを不思議に思っているのか小首をかしげて固まっていた。

僕は新たな発信源が近くにできたのかと興奮したものだが、よくよく見てみれば、周波数はいつも合わせていたもののひとつであった。

何故急に電波が良好になったのかは分からないけど、何せよ、それは僕が久々に覚えた「希望」という感覚で心が高揚したのを覚えてる。


僕はその周波数のラジオを、ゾンビ遭遇のリスクがある散策中以外で起きている間はずっと聞いていた。

もちろん、死体運搬中の車内でもだ。

”あの日”直後の札幌コミュニティの山田さんとの会話以来全く得れなかった情報をそこで多く得ることができた。


このラジオ放送の発信源は富山県の生存者コミュニティであることが、放送の節目節目で述べられることからわかった。

そして、現在の日本の状況、推測多分だが世界の状況、他の生存者コミュニティの場所と規模、臨時政府の存在と今後の方針等の大きな規模の話から、雨水や川の水から飲用等に利用可能な水を作る方法とか、ゾンビや昏睡状態の者の対策等の身近な問題対策まで幅広く案内してくれていた。


『この放送は録音でランダムに繰り返し放送しています』とのことで、放送の合間には歌謡曲やクラシック曲がかかっていたりした。

いま聞こえてくる歌謡曲は偶然、別れた元婚約者がたまに歌ってた曲だ。


……彼女は無事でいるのであろうか。


確かに彼女の心変わりにより終わった恋ではあるが、無事であるならば越したことないとは本気で思えるくらいには時間は過ぎている。

だけど、もしゾンビになっていたとしたら……。

万が一見つけたときは、元恋人のよしみでキッチリ終わりにしてやろうと思う。

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― 新着の感想 ―
[一言] >万が一見つけたときは、元恋人のよしみでキッチリ終わりにしてやろうと思う。 急にサスペンス風味が増したなwオイ
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