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第53話 働きたくないでござる

20××年1月15日。


年が明けてから早くも二週間が経過した。

僕にとって年月とは、時代背景に関わらず飛ぶように過ぎていくものらしい。

ガキの頃、楽しみにしていたゲームソフトの発売日が二週間後とかだった場合、それは絶望的に未来の話のような感覚だったのに。

しかしながら、「ああ、歳を取ったってやつかな」なんてセンチメンタルな気分になどなる心境・状況では、今はない。


重労働。

とにかく、この二週間は重労働をした。

僕の人生で、これほどまでの重労働の経験はない。

働いて、食べて、泥の様に寝る。

そのサイクルのどこに、センチメンタルに浸る暇があると言うのか。


しかも、だ。

その仕事内容とは、死体運びなのだ。

厳密に言えば、昏睡状態の感染者も二度手間にならないように移動させることはあるが。

何にせよ、こんな仕事に、センチメンタルになる要素がどこにあるだろうか。


……いや。

初めのうちは、赤子や幼児の死体とか、犬や猫等のペットの死体を発見する都度なんとも言えない気持ちになったものである。

中には発症しなかったのか、大人や飼い主が帰って来なかったから家に閉じ込められたまま餓死したような遺体や、《《帰ってきた故に》》最悪の惨状となっている家とかもあった。

とりあえず、その家の主人は頭をカチ割って対象荷物の仲間入りにして運び出す。

そんなことを繰り返すうちに、感傷という感情はどこかに消え失せてしまったようだ。


「……はあ、何でこんなことになってしまったんだろう」


僕は自分の部屋のベッドの上であぐらをかき、パンパンに張ったふくらはぎの筋肉を揉みながらつぶやいた。


世界が終末を迎えたと何となく気付いたとき、僕は何気に「あ、仕事行かなくていいかも、ラッキー……かな?」とか思った気がするが、その時の自分をブン殴りたい。

蓋を開けてみればどうだ。”あの日”以前の給料の10倍もらってもやりたくない、ブラック企業顔負けの待遇が待っていたってワケだ。


「いててて……」


足の裏の土踏まずをマッサージしてみたら、思わず声が出た。

まあ、これでもかなり体は慣れたほうではあるけどね。


初めの1週間は筋肉痛との壮絶な戦いだった。

薬局からありとあらゆる消炎剤・鎮痛剤・湿布等を拝借して対処したが、この筋肉痛はもはや怪我と言ってもいいくらい体中がブッ壊れている状態だと思う。その状態では、焼け石に水って感じだ。効きゃあしない。

クソッ、神様。ゾンビみたいにファンタジーなモノが出てくる世界である。ついでに一気に状態異常や疲労が回復するエリクサーみたいな薬でも落ちているくらい気を利かせてほしいモンだわ。


しかしながら、愚痴っても現状は改善しない。

やるしかないのだ。


何故かと言えば、死体を放置したままにしたとして、腐ってしまったら大惨事が予想されるからである。腐って回収が困難になる前に、できるだけ処分してしまわないといけない。

理由は、普通に臭いとかだけでも我慢できそうにないし、何よりも伝染病が怖い。

昔ネットか何かで見かけた昔のヨーロッパのペスト流行の記事によれば、死体に群がったネズミが病原菌の媒体であり、人が死ねばネズミの餌が増える→ネズミが増える→拡散される→人が死ぬの無限ループだったということが書いてあった気がする。

せめて生活圏だけでもなんとか綺麗にしておきたい。

もしかしたらこの程度では気休めなのかもしれないけど、やらなければ待っているのはおそらく最悪の結末であろうから。


こんなことなら、早い段階で人口密度が少ない人里離れた場所にでも退避すれば良かったのかもと何度も思ったし、また今からでもそうすべきかもと頭をよぎる。

しかしながら、どこに行ったらいいかも分からない。

”あの日”以前ならネットとかで調べられたから良かったのかもしれないが、いまは適切な場所なんて調べようがないし、第一ここの周辺すらどんな状況になっているかは把握できていないのだ。

この状況、いちかばちかに賭けた結果、良い方向に転がるとか楽観的にはどうしても思えない。

いま、できることをやるしかなかろう、と都度思い直し、死体運びを続けてきた。



さて。明日も日が昇ったら再開しなきゃ。


僕は布団に潜り込み、目を閉じた。

布団の中には既に、生体湯たんぽ(茶々丸)が潜り込んで寝ていた。


……はあ、本当に茶々丸は癒しだな。


心が温かくなるのを感じる。

感じるんだけど……


もうちょっと右にズレてくれないかな?

でも、起こすと悪いしな。。。

心とは裏腹に、僕の左半身は冷たいままであった。

作者メモ:1月15日

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