第19話 誰か来たにゃ!
僕は社会の不条理を忘れようと、現在猫缶に夢中な茶々丸の背中を身を屈めて撫でている。
ふう。
こうしてると心が落ち着いてくるぜ。
茶々丸の毛並みの手触りは、それだけでもう癒しなのである。
個体の性格によって色々あるのだが、茶々丸の場合はご飯中に触っても全く怒らないタイプだ。
よくニャンコの面白動画とかでは、横取りを懸念してるのか、普段温厚な子でも唸り声で威嚇する子が多いのだが。
以前飼ってた子もそうだったし。
そんなされるがまま猫缶を楽しむ茶々丸であるが、しばらくして急にピタリと動きを止めた。
そして顔を上げる。
その表情には緊張の色が浮かんでいた。
どうした? 僕の殺意の矛先はイケメンとその取り巻き女限定で、茶々丸は可愛い正義で対象じゃないから大丈夫だぞ?
僕は茶々丸の背中を再び撫でて気付いた。
長い付き合いだ。一瞬で体も緊張で硬直してるのが分かった。
よく見ると、固まった視線は僕ではなくて玄関の扉のほうを凝視していた。
これは、宅配や出前のにーちゃんが近づいてきたときにする行動だということも。
そのときである。
ギイイー……
玄関の扉の向こうからくぐもった音が響いた。
この音は……
間違いない。
このフロアのどこかの部屋の玄関の扉が開いた音だ……!
心臓が跳ね上がる。
扉の開く音がするということは、イコール開けた者がいるということだ。
そうであるならば、異変を認識して以来、初めて見つけた他者ということになる。
山田さんとの電話とか、インターネットで他者の形跡を見たので安心していたことは安心していたのだが、どうやらこの目で確認したい願望は僕の心に燻ぶっていたようだ。
僕は一気に玄関まで駆け寄り、扉を勢いよく押し開けた。
……ガアン!!
「え?」
これは開けきった音ではない。
まだ扉は半分も開いていないにも関わらず、衝撃とともに扉は停止したのだ。
あまりにも想定外すぎて混乱してはいるが、経験則からだろうか。何か障害物があったのだろうことはすぐに頭が理解した。
問題は、その障害物とは何なのかってことだ。
先程コンビニに出かけた際は普通に出かけれたので、帰ってきてからの数分の間に発生したってことだ。
わけがわからない。
僕は半開き状態の扉をそろそろと押してみる。
ギイイと音をさせながら、今度は何かに遮られることなくゆっくりと開いた。
「は?」
扉がほぼ開ききったところで僕の目に飛び込んできたのは、僕の部屋の向かい側にある303号室の玄関前あたりの床に倒れている、若い小柄の女性であった。
作者メモ:現在17:00頃




