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第13話 呑気なデビルズ

『よく解らないよね。ボクだってこの目で見てなきゃよく解らない説明だとは思うよ。

 とにかく、仕事をしていようが呑んでいようが遊んでようが、人々は次々と直前まで行っていたことを放棄してフラフラと歩き出したらしいんだ。

 ボクもちょうど夜勤でね。同僚たちが突然立ち上がって行先も告げずにフラフラ出てっちゃうものだから、面食らったよ』


「俄かには信じられませんが……。皆は何処に向かったんですか?」


『確実にとは言えないけど、無事だった人達の証言を総合すると、自分の家に帰宅したんだと思う。

 例えば居酒屋務めの夫が勤務中にも関わらず突然帰宅してきたパターンだと、話しかけても上の空のまま寝室に向かいベッドで倒れて……とか、これと似たようなケースがいくつか報告されている』


「帰ってきた人は現在どうなってるんですか? そのままひきこもってるから外に誰もいないって話ですかね?」


『ひきこもりと言うか、ベッドにバタンした後は昏睡状態だね。息はしてるんだけど、呼びかけや刺激に反応しないし、脈拍の低下とか瞳孔の拡大とか、あまり良い状態とは言い難い。

 あ、もちろんと言うか、予想はついてるかもしれないけど、外にいた人だけでなく家の中にいた人々も同様に昏睡してるよ。

 要するに、4日前の晩。日本中……いやもしかしたら世界中の大半の人が昏睡状態に陥ったって話だよ。わずか一夜にしてね』


僕は絶句した。

想定外どころか狐につままれたような話で、どう反応したらいいのか分からなくなってしまったのだ。



……なーお、なーお



『おや? そう言えば猫ちゃん飼ってるんだったね。そっちの猫ちゃんは元気みたいだね』


茶々丸が退屈過ぎたようで、抗議の声をあげたようだ。

それを聞いた山田さんは、電話越しでもわかるくらいに口調を柔らかくして言った。


『ボクの臨時連絡所生活も長くなる予感がしてるからさ、家からうちの()を連れてきてるんだよ』


電話口から遠くにゃーんと聞こえる。

膝でくつろいでるところで不意打ち気味に頭でも撫でたんだろうか。

猫飼いからすると、当たらずとも遠からず。見ていなくても一瞬で連想できてしまうものである。


『犬や猫などペットをはじめ、野鳥や家畜も同様に昏睡状態みたいだからね。お互いの猫ちゃんが無事で良かったね』


……そうだったんだ。

だから、外は全く生活音が無かったんだな。

普段なら、犬とかスズメ、カラスの鳴き声とか聞こえるはずが、今思えば今日は全く無かったからな。

僕は茶々丸のお腹に手を回し片手で抱き上げる。

6kgの体重が腹に全てかかり、茶々丸は「な゛ーっ」っとくぐもった抗議の声をあげた。


「……不幸中の幸いですね」


『そうだね』


山田さんの話によれば、どうやら世界は未曽有の大問題に直面してるらしいな。

しかしながら、猫たちは相変わらず呑気なようだ。

羨ましいぜ。


そんなことを思っているとき。

僕はハッとあることに気付き、嫌でも真剣な声になり山田さんに質問した。


「……僕はまだ確認してないのでアレですけど、そこら中で人達は倒れてるってことですよね? しかも数日間も。救助とか、どうすればいいんです?」


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