第12話 おうちに帰ろう
長らく連載をストップさせて申し訳ありませんでした。
これからは最低でも2日置きには更新していきます。
『まあ、メッセージでのやり取りは時間かかるからね。ちょっと待ってて』
PCの画面にそう出力された瞬間、携帯から聞きなれない呼び出し音(?)が流れ出した。
画面を見ると、これも見慣れない画面が出ている。
レイアウトとか文字等から判断するに、どうやらSNSの無料インターネット電話の呼び出し画面のようだ。
「もしもし?」
僕たちはありきたりな電話口での挨拶を交わした後、本題に入ることとした。
『君はどこに住んでたっけ? 北海道では無かったよね?』
「名古屋です」
『おお、そうか。都市部の無事な人とはほとんど連絡が取れないんだ。おそらく人口が密集しているからみんな感染してしまったんじゃないかな』
「……感染って何ですか? インフルエンザでも大流行したんですか?」
『え? 感染は感染だよ。自衛隊の人が言うには全国的に広まってバタバタ人が倒れてしまって国としての機能はほぼ停止してるって話だけど、名古屋は何か違うのかい?』
「今朝外に出てみたら、誰もいないんです。文字通り、人っ子ひとり見当たらないんです」
『そりゃ、みんな家とかでぶっ倒れてるか死んでるか潜んでるかしてるんだよ。ってか、からかってるのかい?』
「実は、今朝出勤で外に出るまでは5日間、インフルエンザで外出禁止くらってたんです。その間、テレビもインターネットも触ってなくて……本当に何が起きてるか知らないんです」
『……なるほどね。どおりで話が噛み合わないと思ったよ』
それから、山田さんは経緯を話してくれた。
『遡ること約2週間前。
全国的に、風邪に似た症状……微熱とかダルいとかでの通院が右肩上がりになってきたんだ。
インフルエンザも流行ってたしね、全国の病院は受け入れ体制の問題で軽いパニックだったよ。
……いま思えば、それは風邪なんかじゃなくて、現在の有り様の兆候だったのかもしれないけどね』
なるほど、どおりでインフルエンザ疑って医者に行った時、やたら混んでるなとは思ったんだけど。
あと、思い出した。
山田さんは医者だったんだ。
普通に生きているとお医者様なんて上級国民とお知り合いになることなんてないから、普通なら忘れてしまうレベルの間柄でも、僕は彼のことを覚えていたのかもな。
『1週間近く前。
大半の人が何かしらの体調不調を訴えていたみたいだからね。
高熱とかは出ないし重症化はしなかったから大騒ぎにはならなかったけど、居酒屋とか夜が稼ぎ時のお店なんてお客が来なくて閑古鳥。世間ではなんか景気がどうとか、暗いムードが漂っていた気がするね』
山田さんは一呼吸置いて続けた。
『決定的な問題が発生したのは知り得る限りで4日前の夜遅く。
だいたい23時くらいなんだけど、人々は次々と憑りつかれたように……何処かへ歩き出したんだ』