表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/151

第114話 絶望を知る男

あかーーーーーーーん!!!


茶々丸のエサ入れを空にするということはどういうことなのか。

それは、時に絶望を意味する。


僕が長時間不在だった時なんて散々なもので、よくてゴミ箱は荒らされてブチまけられ、最高に機嫌が悪いときはわざとトイレ以外でウ〇コをして抗議の意を示すのだ。買ったばかりの高級気味な絨毯でやられた時のショックとかはもう……。

同じ食いしん坊としてはひもじい思いをさせて申し訳なかったとは思うが、その報いがウ〇コとかはちょっとやり過ぎではなかろうか。

どちらにせよ、さっさと帰宅してエサ箱を満たし、ご機嫌取りせねばなるまい。

まさに、緊急事態である。


こんなことを一瞬で思ったのか思ってなかったのかは今となっては思い出せないが、僕はとにもかくにも「茶々丸にエサあげてない」と思った瞬間だけ超絶パワーを発揮し、大男ゾンビの左腕で押さえられていた右肩をその束縛から脱出させることに成功した……いや、後から思えば先に与えていたナイフでのダメージが功を奏し、大男ゾンビは力が入らなかったのか調子が狂っていたかしたから抜け出せたのであろうけど。

何はともあれ、右腕が一瞬とは言え自由になったというわけだ。


「クソが! これでも喰らえ!」


パアン!!


いくら右腕が自由になったとは言え、格闘戦では僕には万に一つも勝機は無かったであろう。ほんの数秒命が長らえただけの結果で終わっていたに違いない。

しかしながら、まだ僕にはコレが残っていた。

それは、先ほど手に入れたばかりの拳銃であった。


忘れていたわけではない。

大男ゾンビと遭遇時、まだ実戦で使用したことがなくて信頼性が無かったこととか、大きな音がするからとかで使用を躊躇したからだ。

その結果が今のピンチに繋がっているのかもしれないが、大男ゾンビの戦闘力が想定外だったこともあるから、自経験上の判断ミスとは言えまい。


パアン!!


この拳銃は、腰の右側に吊るした丈夫な革製ポーチにホルスターの要領で突っ込んでいたのが功を奏した様だ。

このポーチは特に決まった荷物を入れてる訳ではなく、”あの日”以前なら財布とか部屋の鍵、ウォーキングや”あの日”以降の物資散策では500mlクラスのペットボトルの水とかを徐に突っ込んで持ち歩くのに使用していたものだ。要するに、ジッパーやボタン等で封をするタイプのカバン類ではなく、放り込みっぱなしのタイプのものである。

下手にジッパーとかで封印して厳重に収納するタイプのものであったなら、とてもこんなにスムーズに拳銃を抜き、そして発砲することはできなかったであろう。

また、安全装置が着いているタイプの拳銃であった場合もこの状況で片手でソレを外せたかどうかは怪しいところだった。

拳銃を打てたのは、相当に運が良かったということだ。


パアン!!


かと言って、この無理な体制かつ緊急を要するこの事態において急所等を狙って発砲とかまでの余裕は無かった。

僕は拳銃を抜いて引き金に指をかけた瞬間、大男ゾンビのおそらくは腹部か脇腹あたりに拳銃を押し当て、そして引き金を数回引いたのだった。


しかしながら、おそらくは普通の人間相手ならばこれで勝負ありだったろうが、相手はゾンビである。痛覚も無ければ体の損傷なんてお構いなし。死ぬまで元気に(?)動き続ける働き者なのだ。怯みもしやしない。


パアン!!


僕はそれでもかまわず撃鉄を起こし、そして引き金を引き続ける。相手の反応がどうあれ、今の僕にはこれしか対抗手段が無いのだから。


パアン!!


……ガチン! ガチン!


そしてとうとう、無慈悲にも銃弾は発射されなくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ