第100話 次元攻撃とロマン武器
100話まで辿り着きました!
薄暗い部屋。
隣の部屋には、寝間着姿の無防備な美女が寝ているはずだ。
でゅふふふ。
ここまで来たら、「そんな気は無かった」では済ませないぞ
年単位で女性経験が無い僕にとって、これは千載一遇のチャンスであった。
……にも拘わらず、僕は金縛りのように体が動かなかった。
これでは手を出しようがないではないか。
ぐぬぬ、クソが。どうなっているんだ?
動け! 動いてくれ!!
ぬおぉぉぉぉ!?
「……ぉぉぉ。。。って、やっぱりオマエか。オマエなのか!?」
「にゃ?」
ちゅんちゅん。雀の声。
カーテンの隙間から零れる陽の光。
そして、ベッドで横になっている僕の胸の上には茶々丸(体重6㎏)が鎮座していた。
馬鹿にするように、お尻を僕の顔に向ける形で。
おのれ茶々丸。
確かにオマエの特技は「いま一番して欲しくない事をする」ことではあるが、まさか夢の世界ですら邪魔をする性能を有していたとは。
おのれぇ~。
僕は茶々丸の頭を両手で包み込むと、うりうりと揉みくちゃの刑に処してやった。
いくら次元の壁をも超える攻撃手段を持っていようが、ここは現実世界である。物理攻撃では人間様に適うまい。うりうりうり!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……と、思ってる時期が僕にもありました。」
僕は、つい今しがたボウガンで頭を撃ち抜いたゾンビの頭を、生死確認の為に軽くつま先で蹴り飛ばしながらそう呟いた。
痛い。
僕は血の滲む絆創膏が貼られた右手の人差し指を見つめながらそう心で呟いた。
茶々丸のDVの痕跡である。
今朝がたの茶々丸との攻防は既に頭の中には無かったのだが、ボウガンの引き金を引いた際に疼いた人差し指でふと思い出したのだ。
そう。
結局僕は、物理攻撃でも茶々丸に勝てないと再度思い知らされたのである。
飼い主が心得がひとつ。
「ねこ様のご機嫌を損ねる行動はご法度である」
その心得を無視した結果がコレである。
ウム。因果応報と言えなくもないな。以後気を付けることとしよう。
僕はそんなことを思いながら、死んだゾンビの右目下あたりから斜めに脳まで達している矢を引き抜いく。
「よし、まだ使えるな」
この矢は正規品のソレではなく、自分でアルミ棒や真鍮の棒をを切り出して先を尖らせただけというシンプルなものである。
どうでもいい情報かもしれないが、これを僕は「パイルバンカー」と呼んでいた。本来その名称はアニメとかでたまに出てくるロマン兵器のことで、火薬等で鉄製の杭を射出することによって至近距離の敵や障害物を串刺し又は破壊するものである。見た目も動力も異なりはするが、この矢の使い道と言うかコンセプトも正にそれであるからそう呼んでいた。
重量やバランスから遠距離・中距離からの狙撃には全くもって不向きではあるが、外しようがないくらいの至近距離からブチ込むにはゾンビに対して大きな威力を発揮するのだ。
元々ゾンビはノロマで馬鹿だから弱点丸出しで無警戒で突っ込んでくるだけだし、至近距離と言っても近接武器と比較すればリーチは数メートルの優位があり危険度は段違いだ。滅多にないが、外したら外したで近接武器で対応する余裕も十分ある。
そして何より、近接武器……例えばバットや鉄パイプでゾンビをブン殴った時に手の平に伝わる「グシャリ」とした嫌な感触を体感することが無いし、打ち込む角度が悪かったりして手首を痛めることもない。いいこと尽くめである。
こんな感じで、パイルバンカーは僕が試行錯誤の末に辿り着いた、対ゾンビ用の理想的な武器であった。
まあ、複数体に近距離で囲まれたらこの限りではないだろうけど、その場合は無理せず逃げて距離を置いてから対処を考えればいいだろう。柔軟性は大事だな、うん。
”あの日”以来、ゾンビと向き合ってはや半年。
僕のゾンビスレイヤーとしてのスキルは結構なモノとなっているのだ。
そんな僕ではあるが、この8年間、やられっぱなしなんだけど。
茶々丸には。
……指、痛い。
昨年のGWあたりより、始めて書いた小説が本作品「ねことあぽかりぷす!」です。
こんなに続けれるとは思いませんでした。
今後も宜しくお願いします。




