第1話 悪魔は僕を殺す気なのか
「オマエは僕を殺す気か!」
「……マウ!?」
深夜3時。
飼い猫の茶々丸(♀)に、僕は軽い怒声を浴びせた。
それに対する茶々丸の返事はいつもの可愛い「にゃあ」ではなく、何故自分の要求を分かってもらえないのか、それどころか何故怒られなければならないのかとでも言いたげな、抗議の意を込めたものであった。
だいたい毎晩これだ。
ただでさえ睡眠の質が悪い僕だというのに、茶々丸ときたらやっと眠れたタイミングで嫌がらせのように僕を起こしにかかるのだ。
エサが切れたとかトイレが汚いからということならこちらが悪いから仕方がないとは思えるが、だいたいは「目が覚めたにゃ。暇にゃ。オマエも起きてあたいをかまえにゃ」ってノリだから腹が立つ。
まったく、自己中心的にも程があるぞ!
お陰様で規則正しい生活を強いられたサラリーマン時代は睡眠不足に悩まされたものだ。
茶々丸は、昼間は天使だが、夜は悪魔なのである。
散歩が必要なく、トイレもすぐ覚える。
そして賃貸マンションやアパート等の一室レベルの狭さでもストレスを感じないと言われており、お留守番も2日空ける程度なら大丈夫。
そんな感じで独り暮らしで飼うには最適と言われていた猫様。
しかしながら、将来老衰とかして世話がかかるようになり長時間部屋を空けるわけにはいかない状況が発生することも想定できるし、やはりペットとは独り身が一緒に暮らすとなれば大変なことであるのだ。
実際、茶々丸を飼い始めたのは(元)婚約者と同棲を始めたタイミングであり、自分ひとりで面倒を全て見ることが前提ではなかったんだよね。
彼女と別れ話になった際、茶々丸の親権(ニャン権?)を巡り骨肉の争いが発生するかと思ったが、あっさりと手放した彼女。
当時は冷たい女だ、見る目無かったな……とか思ってガッカリしたものだが、今思えば彼女のほうが先見の明があっただけとも言えるかもしれない。責任を負いきれない可能性があるからだ。
……今まで何度も思い出しては巡らせてきた茶々丸と彼女のエピソードに思考を軽くもって行かれていたときである。
ドンドンドン!
玄関のドアに、拳を叩きつけるような音が響く。
この辺りの輩が騒ぎを聞きつけて抗議しにきたのであろう。
茶々丸は音にビビったのかドア越しの気配にビビったのかは知らないが、一目散に部屋ソファーの陰へと走り去った。
僕は「面倒臭ぇなあ~」と悪態をついて立ち上がると、明かりを着けて玄関へと向かう。
来訪者を確認しようと覗き窓の蓋を跳ね上げた。
その瞬間、覗き窓に来訪者のものと思しき指が勢いよく差し込まれてきた。
ちょっと何すんの!
「うおっ! 危ないなあ。どちらさまですか……っと!」
ズブリ!!
んー、好感触。
僕が気合を入れて行ったのはドアを開けることではなく、除き窓の隙間に刃渡り30cmはあるサバイバルナイフを勢いよく突き立てることであった。
初めて作品を投稿しました。
小説的なものを書くのは初めてです。
とりあえず試験的にのんびり書いていってみます。