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第十話 ブラック企業のおかしい社長 ②

 時計は30分ギリギリ。戻る。女の隣に座る。緊張しているのかハンカチで顔を拭っている。

「頑張りましょうね」声をかける。

「はい、ありがとうございます。頑張ります」


懸命に笑顔を作りながら、気弱い返事が返ってくる。受けても受けなくても結果は一緒なのに頑張ろうとする彼女に哀れさを感じた――


予定の時間を5分ほどオーバーすると戸根がやっと来る。戸根についていくと二人揃って個室に案内される。


「これから面接となりますので、緊張なされずに素のままで、よろしくお願いします」と戸根がノックをして扉を開けると江川が上等な机を前にし、座っている。 


 その前に椅子が2つ。転職の面接で複数は論外、プライバシーの概念とかはないのだろうか――「お座りください」戸根の声が響き、江川の近くに座る。バッグを椅子の横に置き、一礼をして着席する。江川がまたしてもいきなり言う。


「君らは転職しようとしている。それはどういう理由であれ失敗しているということだ。もし順風満帆だったら普通は転職ということを考えない。それはわかっている?」仕方なしに頷く。


「だが、失敗しても取り返せる。黒川さんは参田さんだ大学と随分いい大学を出ているね、勤めていた企業も大手ばかりだ。どうして弊社を志望したんだ?」


「私は前職を含め営業とマーケティングと2つの軸で仕事に携わって参りました。大手ですと完全に分業状態になっており、お客様を見るより、社内での根回しの方が重要となっていることに嫌気を覚えました。それが理由です。」在りきたりな回答。


「清水さんはハーフみたいな顔立ちだけど、ハーフ? どういった理由で志望したの?」清水がか細い声で答える。


「申し訳ございません。よく間違われますが、日本人です。志望理由は中小企業を応援したいと思ったからです。御社のようなコンサルティング業務が最も役に立つと感じています」清水が想いを語っている。江川の強い質問が来ると声が小さくなる。


「ところで、彼氏はいるの? 25歳と年齢的にも結婚を考える年だろう?」

「いません」清水は静かに答える。


「俺は彼氏を作って上げるのが上手なんだ。ここの戸根さんも俺が紹介した社員と結婚した。受付にいた子も別の部署の社員と付き合っているんだぞ」笑いながらセクハラ質問。


清水は美人。江川の性格や会社の雰囲気を考えると、清水は面接さえ受ければ受かる=出来レース。本人は気づいてない。過去の経歴よりやる気があるかどうかを試す質問が続く。

   

 開始から40分ほど過ぎたところで江川が一言放つ。「二人とも内定を出す。ただし考えるのはなし。ここで結論を出して欲しい」清水はやっと笑顔になり、「よろしくお願い致します」と答える。俺も了承した。


「二人とも夜は時間があるだろ? 軽い親睦会を開くから参加。戸根さん、上のロナウドを19時から予約取っておいて」戸根は頷く。オープンスペースに戻り内定受諾書にサインをさせられる。


社内見学を軽くし、挨拶を交わす。18時50分にこのビルのエレベーターホールに集合ということで一旦解散。事務所から出るときはまた社員全員立ち上がって大声で「ありがとうございました」徹底した教育ぶりに言葉が出ない。

 

清水と一緒にエレベーターに乗っている。「いきなり受かってしまってびっくりです。面接はもう7連敗くらいしてましたからね。やっと決まって嬉しいです」心底嬉しそうな声。


「本当にそうですよね。僕もこんな簡単に決まるなんて思っていなくてびっくりして驚いてます。年齢も年齢だしありがたいことです」エレベーターがエントランスに着く。


「時間まで中途半端に空いてますね。黒川さんは時間までどうしてます?」親睦会の時間まで90分ほどある。


「友達のカフェで時間潰しているよ、清水さんは?」

「私は適当にぶらぶらしてます。心配なので連絡先交換しておきません?」

「構わないよ。じゃあ、またここでね」軽く見送り分かれる。


今日、三浦彩花にお願いすることをメモ帳にまとめて連絡する。すぐに繋がる。

「もしもし、新宿に19時半くらいに来てくれない? 遅刻厳禁ね」

「わかりました。そろそろ新宿に着くので大丈夫です」お願いは電話で話そうと思ったが、会った方が早い。


「新宿に着きそうなら、会ったほうがいいわ。着いたら連絡してちょうだい。よろしく」15分ほどすると三浦彩花から電話がかかってくる。音が漏れないカラオケで待ち合わせる。顔には殴ったときの跡はない。


「どういった用事なんでしょうか?」三浦彩花が怯えながら話す。手を振るジェスチャーをする。


「頼み事があるんだけど、今日、飲み会しているんだよね。それでお願い。ある人に電話してくれない? 番号とか設定はメモに書いておいたからその通りに頼むね。終わったら、ロナウドって店に念のために来て、健闘祈っているから」3万円を渡し、部屋から出る。

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